第五百十四話
秀星は、鳥が一体どういう特性を持っているのか、隙あらば鑑定をし続けている。
宇宙からやってきた。という特殊性があるにしては、鳥の形は普通であり、特筆すべき点は少ない。
確かに大きい。
大きいが、鳥である。
あえて特徴を述べるならばカラスに近いだろうか。
(……妙だな)
攻防の中で秀星はそう思った。
神獣ではない。
ただし、神が使う魔力を構築して使うことはできるようだ。
こちらが神器で斬りかかっても面倒そうな表情を見せないので、使えるのは間違いない。
「……この場に至っても全く目的がわからんな」
何かを探していると考えていた。
遠路はるばる隕石になって飛んできたのだ。何もない単なる散歩だというのなら別にそれでもかまわないが、それはそれで普段の散歩ルートと、行動範囲の広さについて教えてほしいものである。
「おらっ!」
プレシャスを振って、三日月のような形の斬撃を飛ばす。
斬撃はそのままカラスの体をしっかりえぐっているのだが、カラスの体はすぐに修復されるうえに、そもそもひるんでいる様子すらない。
「痛覚ないのかこいつ。斬っても焼いてもけろっとしてるんだが……」
そんなことをつぶやく秀星だが、もしも誰かが聞いていたら、もしくはカラスに人間の言葉を話せる能力があるならば、『お前が言うな』といわれていたことだろう。
カラスの方も、斬撃や炎属性の攻撃は普通に行っているし、思考する余裕がある……要するに、完全に戦闘に集中していない秀星の隙をついて攻撃しているゆえに、命中している。
だが、秀星に効いている様子はない。
それゆえに『お前が言うなである。
まあ、それを言える人間が今はいない――
「お相手も『お前が言うな』と思っているようですよ」
「え、マジで?……あー、それもそうか」
いたわ。突っ込む人。
もちろん、それはセフィアである。
秀星からは下がっていろと言われたセフィアだが、秀星もカラスも本気を出さないので、状況が硬直している。
セフィアは『これは……お互いに、相手に負けるとは思ってないゆえに発生している硬直ですね』と思いながらも、全然ギアが入っていない秀星のつぶやきに対してしっかりと答える。
「なあセフィア。相手さんの目的がさっぱりわからないんだが?」
「一応言っておきますが、敵が正面にいるという状況の場合、鑑定の精度が高いのは秀星様の方です。秀星様が判断できないというのであれば、私が何を言ったとしても、情報不足だと分かる意見しか言えないでしょう」
「そういやそうだったな……」
セフィアと話している間にも遠距離攻撃を何度もしてくるわけだが、タブレットから出現する魔力を固めただけの弾丸に衝突して、すぐに消滅する。
「小手調べが通用しないことは向こうもわかりきってるはずなんだよな。一応、行動の全てをキーワード管理して頭の中で整理してるけど、俺の方の情報が足りないのか、全然目的の予測ができないんだよなぁ」
「少なくとも時間稼ぎをしているようには見えませんね」
「そうだなぁ……一瞬だけ本気出してみるかね」
「反応を見る。ということですか?」
「そういうこと」
それを聞いたセフィアは離れた。
秀星はマシニクルを出現させた。
トリガーを引くと、まるでプレシャスが納められそうな鞘のような形になる。
秀星は、その鞘にプレシャスを収める。
次に、タブレットが光った。
鞘に納められている剣の先に、膜のようなものが出現する。
再度、マシニクルのトリガーを引くと、先端からレーザーのようなものが出てきた。
その膜にあたって止まっている。
「……あれ、こっちが準備してても何もしてこないのか。随分とのんびりしてるんだな」
秀星は剣を振りかぶる。
そして、膜が剣から大きく離れることで、レーザーが延長された。
この瞬間、カラスは何かを感じ取ったようだ。
それに対して、秀星やにやりと笑う。
剣を振り下ろす。
それと同時にレーザーも振り下ろされた。
カラスはよけようとしたが、一瞬、間に合わない。
一撃で、カラスは真っ二つにされた。
「やっぱりレーザーは強いねぇ……」
炎属性無効にも融点がある。という話をしたことがあるが、それは要するに、どのように頑丈なものであったとしても、圧倒的な熱量にはかなわないということだ。
マシニクルから発せられたレーザーは、そのとんでもない熱量を発していた。
そして、プレシャスから延長されるようにレーザーを出すことで、プレシャスがもともと持っている『耐性破壊』と『再生機能破壊』を発生させる。
距離の調節のため、このレーザーに限って防ぎきることができる膜を魔法で作り、あとは振り下ろすだけだ。
「さてと……お、再生機能を破壊したはずなのに、一度バラバラになった後で再生したな」
「再生のためにそういう経路をたどる。ということでしょうか」
「わからんが……やっと目が本気になったな。さて、そろそろ楽しい感じになりそうだ」
プレシャスをマシニクルから引き抜いて構えなおす秀星。
切り札の一つを切ったことで見せてくれた敵の本気。
それを見て楽しそうな顔をするあたり、秀星もかなり戦闘狂である。




