第12話 サンザシ
下川原は、心菜と共に冬美のアリバイを証言した。
「そうすっと……犯人、1人でねがっだんだ! 他にも疑う理由あっがら、ネットのは冬美で間違いね! おんつぁん達殺すだのは、別の奴だ」
「そう、かもね。澄那の親殺してなくても、狐塚はどっかで絡んでると思う……SNS特定すんの、誰か出来ないもんかな」
玲華がグループチャットで仲間達に呼び掛けているところに、4組の実行委員が割り込んだ。
「師T来てる、逃げるぞ!」
下川原達と実行委員は2年3組の教室から脱出した。
その後も腰を据えて話そうとする度に冬美らや2組の噂好きな女子達、理依とその彼氏に鉢合わせたり、生徒会からの急用が入るなどし、犯人の件がうやむやになったまま一般公開は終了した。
後夜祭準備の為外に出た下川原は、澄那から体育館の裏へ誘い込まれた。
「呼んできたよ……伸葉ちゃん、この子、4組の人の事聞きたいんだって」
この子、というのは冬美の友達だった。
「4組の奴の事ねぇ……冬美達には言いづらがったか? なんでも聞いで……っ!!」
冬美の友達から、鳩尾に一撃食らった。
「伸葉ちゃん!? 大丈夫!? ……伸葉ちゃんにはなにもしないって言ったじゃない!」
「ウザいんだもん……後夜祭まで黙ってくれそうだし、いいじゃん」
(澄那、お前ら……)
声を失い、意識が遠のく。
下川原は保健室で目を覚ました。養護教諭いわく、澄那が下川原をここまで運んでくれたそうだ。
「——で、後夜祭始まるとこだったんだけど、下川原運んできた子が前に出されて……」
養護教諭が指で示した先には澄那の姿があった。彼女の前で浦小路と京穂、学年主任が口論になっているようで、生徒達もどよめいていた。
「うらっちも、葛岡も……師Tも、どいてくれませんかねぇ?」
「夏芽!? ……冬美もか? そうだ」
下川原は、放送室から言ってんな、と思いながらスマートフォンを一瞥し、ぬかづいた。
「繋がったな……失礼しましだ!」
上履きのまま保健室を飛び出し、浦小路と京穂に加勢した。
「下川原さん!? 貴方、また……」
「伸葉ちゃん! ……お腹ぶたれたのに、大丈夫?」
「えっ? お腹、ぶたれたって? 祖志……澄那さん、どういう事?」
学年主任がターゲットを変えた。そこに、教頭が乱入する。
「先生も、電話対応行って下さい……ここは名探偵に任せましょう。彼女達も間違いはあったけど、大丈夫! ほら!」
「はっ! はい……」
教頭が学年主任を連れていく。
「電話って、心菜ちゃんと恋音ちゃん、祀陵の人達なんだけどね」
「親御さんやご近所さんって事にして、電話掛けてもらってるの」
浦小路と京穂が種を明かした。
「教頭先生、更進に電話してくれたみなさん、ありがとうございます! 放送室開けるんで、冬……狐塚さんの確保も、お願いします! ……バラしたきゃバラせば? あっ、失礼! 後は部長、任せた!」
夏芽の放送はここまでだった。
「……よし。みなさん! 聞いでけさい!」
下川原は咆哮した。
下川原と浦小路、京穂、南谷地と彼女に引き込まれた夏芽は、自身や祀陵高校生からの情報や証拠を基に、冬美とその友達の罪、澄那との関連を真率に語った。
「——これが、こごで起ぎた事件の全てです。これさたどり着ぐまで、犯人間違えで、更進祭潰すとごでした。その事は……」
「謝らなくていいよ! 私達が、全部悪いんだから! 私達……祖志継家に友達や家族を殺された人、その復讐に巻き込まれたみなさん、本当に、ごめんなさい!」
下川原ではなく、澄那が深く頭を下げ、校庭から去っていった。
「……き、聞いでぐれて、ありがどうございました!!」
周辺の歩道や土手に佇む地域住民、全校生徒は混乱したままだ。
「の、伸葉探偵団のみなさん。ありがとうございました〜」
「なんていうか、その、名推理、でしたねぇ……せっかくなので、他にも誰か、なんかぶっちゃけたい人居ませんかー!?」
実行委員〝有志〟が告白大会を開いた。驚きと笑い、涙ありの一時を経て、大崎更進高校上空へ〝古川の秋花火〟が打ち上げられた。




