第1話:一撃
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■ 第1話の本文
魔法の優劣が、人間の価値をそのまま決める世界。
ここド・グランヴェル領の片隅にある小さな村にも、その残酷な理は当然のように存在していた。
「おい、魔力ゼロの落ちこぼれアレン! 今日も俺たちの的になれよ!」
数人の少年たちが、一人の少年を囲んでいる。
中心にいるのは、村の有力者の息子。手慣れた様子で指先を掲げると、小さな魔力の光が灯る。彼らにとって、魔力を持たないアレンを魔法の的として甚振(痛ぶ)ることは、格好の娯楽だった。
「アレン、逃げて……!」
アレンの前に立ちはだかり、両手を広げて必死に庇おうとする少女がいた。幼馴染のリナだ。恐怖で足がガタガタと震えている。
その健気な少女の肩を、後ろから大きな、しかし細い手が無造作に掴んだ。
「……下がってろ」
「えっ……?」
少年の体からは想像もつかない、低く、芯の通った声。
リナが驚いて振り返るより早く、アレン――その肉体に宿る元・新選組副長、土方歳三は、彼女の細い身体を自分の背後へと静かに引き寄せた。
土方の鋭い眼光が、いじめっ子たちを捉える。
(やれやれ、どこの世界に行っても、ガキのやることは変わらねぇな……)
「なんだよアレン、やる気か? なら、これで終わりだ! 【ストーン・バレット】!」
いじめっ子の少年が顔を真っ赤にし、指先から魔法を放った。
風を切り裂き、鋭い速度で迫る石の弾丸。
遠巻きに見物していた村人たちは、「おい、アレンの奴、死ぬぞ!」「魔法をまともに喰らったらタダじゃ済まない!」と悲鳴を上げ、誰もがアレンの無残な敗北を確信した。
だが、土方の目には、その弾丸は止まっているも同然だった。
実戦の銃弾は、音よりも速く命を奪いに来る。
硝煙の匂いもせず、直線的にしか飛んでこない「お遊び」の魔法など、ただの子供の飛礫に過ぎない。
土方は半歩だけ前に踏み出すと、無造作に右手を突き出した。
バシッ!!!
静かな、しかし乾いた衝撃音が響く。
「……なっ!?」
いじめっ子の口から、間抜けた声が漏れた。
土方の掌の中には、少年が全力で放ったはずの石の弾丸が、何事もなかったかのように収まっていた。
「ま、魔法を手で受け止めた……!?」
「強化魔術も使わずに、生身でか!?」
周囲の村人たちが、ひっくり返りそうな声を上げる。いじめっ子たちの顔から、一瞬で血の気が引いていく。
「魔法、か」
土方は手の中の石ころをぽいと地面に捨てると、冷たく言い放った。
「火薬の匂いもしねぇ石ころを投げて、戦ってるつもりか? ――片腹痛いわ」
土方は足元に落ちていた、折れた木の棒を拾い上げた。
ただの枯れ枝だ。だが、土方がそれを中段に構えた瞬間、場の空気の密度がガラリと変容した。圧倒的な殺気。数多の死線を潜り抜けた者だけが放つ、本物の「鬼」の気魄。
いじめっ子は恐怖を誤魔化すように叫び、大振りな拳で殴りかかってきた。
戦術も、覚悟もない、ただの子供の暴力。
土方は最小限の動きでそれをかわすと、すれ違いざまに木の棒の先端で相手の足首を小さく払った。天然理心流の無駄のない足捌き。
「ぐあ!?」
いじめっ子が、無様に地面へ這いつくばる。
土方は容赦しない。倒れ込んだ少年の顔面へ向け、手にした木の棒を躊躇なく一閃させた。
ドォォォン!!!
鼻先一寸。地面を叩いた衝撃音が、少年の鼓膜を激しく揺らす。
「ひっ……あ、ああ……」
いじめっ子の顔面すれすれ、地面に深く突き刺さった枯れ枝が、ミシミシと音を立ててひび割れている。もし数ミリずれていれば、その頭蓋は粉々に砕けていただろう。
土方は、腰を抜かして失禁しかけている少年を冷徹に見下ろし、静かに告げた。
「……次は、外さねぇぞ」
「ひ、ひぃぃぃっ!!」
いじめっ子たちは涙と鼻水を撒き散らしながら、互いを突き飛ばすようにして一目散に逃げ去っていった。
あとに残された村人たちは、開いた口が塞がらない。
「あ、あのアレンが……あの魔力ゼロのガキが、魔法を素手で止め、一歩も動かさずに上級生を叩きのめした……?」
恐怖と驚愕の混ざった視線が土方に突き刺さる。
リナだけが、呆然としながらも、その背中に畏怖以上の何かを感じて呟いた。
「アレン……あなた、本当に……アレンなの……?」
土方は彼女の問いには答えず、己の細い拳を見つめて、内心で苦く毒づいた。
(ちっ……この器、なまりすぎだ。まともに一撃入れただけで骨が軋みやがる。戦える体にするには、根本から鍛え直さねばならんな)
かつて京の都を震撼させた「新選組副長」の魂が、魔法に支配された異世界の地で、ついに牙を剥いた瞬間だった。




