第二話 天敵
聖奈──
~入学から2か月後~
今日の真理愛は体調が優れずに自主休校。試験勉強しようと1人でホールにいたところで嫌な奴に見つかってしまった……。
「ちょっとお話良いかしら」
北条時子。
真理愛の恋敵兼、南雲学の恋人である彼女。つまり天敵だ。
入学から……何回目だ?そろそろ二桁目突入のお話良いかしらに遭遇した。彼女からは、よく睨まれていた。最初は高校の頃か?2年に上がった後から視線を感じるようになっていたし、その頃から話しかけられていた。よく諦めないね……。
私はともかく、真理愛に話しかけると「寝取り女!」と叫ばれるので、彼女も真理愛には話しかけられなくなっていた。
そこでターゲットが私に固定されてきた、ってわけ。
のらりくらりと真理愛を盾にしたりして避けていたけど、あ~~~今日はなんか避けられそうに無さそうだ。だって勝手に椅子に座ってるんだもの。
「はいはい、お話はなんですか」
早々に白旗を上げる。こうなったら好きなだけ喋らせてさっさと退散して頂こう。
結論から言えば、もっと早くに会話のタイミングを作るべきだったと考えを改めさせられた。
北条は私や真理愛を睨んでたのではなく、どうにか接触したかっただけのようだ。西片や中田から助けられなかった負目がある、と。
ただ警戒されてるのはわかってたから、大学に入ってからも様子を見るために私達を見ていたと言う事だ。
真理愛については、なるべくはやくカウンセリングを受けてほしかったと言われ、最初の連絡先交換を断ってしまったことを後悔した。
また連絡先の交換をお願いされたので、今回は受けておく。ただ北条も知っている通り、今の真理愛はアレルギーの如く北条を避けている。だから接触は私を通してと厳命した。
その夜、早速カウンセリングについての連絡が来た。真理愛には北条のことは内緒にして、カウンセリングを受診しようと誘って行くことにした。
とある日、また北条に捕まった。見つからないようにキャンパスの端っこに居たのになぁ……。
「あのさ、あんたのことずっと敵だと思ってたんだ。違うな、何者なのかわからないから怖かったんだよ。だからこの前話せてよかったよ」
「ありがとう。それと、カウンセリングを2人とも受けてくれたことも、ありがとう」
「1つだけ聞いていい?なんでここまでするんだ?西片の被害者とは言え、あんたには私達のことは関係ないんじゃないか?」
「そうね、私は言ってみれば……間接的な加害者だった、と思っているの」
「間接的な?」
「学……南雲にも否定された話なんだけどね。私が西片の許嫁として、彼の横暴を止めていたら被害者は生まれなかったと、どうしても考えてしまうの……」
「それは……傲慢すぎないか?」
「ふふふ、そうね。でも、どうしてもその答えに何度もぶつかってしまうの。だからこれは自己満足的な贖罪なんだと思っているわ……」
「なるほど……ねぇ。まぁこっちは助かったから何でもいいけど」
「ええ、そうね」
その後、北条は時間だわと足早に去っていった。「また連絡する」という言葉を残して。
真理愛がいないタイミングで北条が良く来るようになっていた。
「ねぇ、私か真理愛にGPSかなんかつけてる?」
「つけてないわ、つける必要もないもの」
「あのさぁ、たまに視線を感じるんだけど、それってあんたの仕業?」
「……」
はい、ダウト。金持ちはこれだからああああああああああ。南雲くんがたまに私の事見てるのも、そういうことかぁ!
その日は、静かな場所が欲しくて小会議室で勉強していたら、北条がするっと入ってきた。
「も~なに~~~~。今日は勉強に集中したかったのに~~~」
嘘である。スマホゲーの周回を行っていたところである。
「1つだけ内密なお話をしておきたくて」
「何の話?」
「アクセス記録は全部消したという話」
空気が一瞬でバチバチと放電を始める。こいつは何かを知っている。
「……なんのこと」
「クラスのグループ、って言えばわかる?」
こいつはあの動画の出元に確信を持っている。
「脅す気?」
「ちがうわ。言ったでしょう、これは贖罪。事前にあいつらを潰せなかった私の勝手な贖罪」
「もう一度聞く。私達を脅して……操ろうって考えてる?」
「学に誓ってそれは無いわ」
ニッコリと北条は否定する。
ようやく緊張を解いて、はぁと溜息を吐く。
「なるほどね~。がっくんに誓われたら嘘も吐けないか」
「……そのがっくんというのは東雲さんの真似?」
「嫌だった?」
ニヤニヤと笑ってやる。
「それを言ったら、いつもより興奮して回数も多かったからやめてほしいわ……」
「本当にすまんかった」
「ねぇところで、アクセス履歴のことを伝えた意味は?なぜ今のタイミングで?」
「私達の間にある、いつ爆発するかわからないファクターは排除しておきたかった、ただそれだけ」
少しの間、北条の目を睨む。……嘘はない、そう見えた。
「もしかしてだけど、それ以外の爆発物。例えば動画・写真・音声なんかも何か行ってくれた?」
「西片と中田の部屋は空っぽにして、通信ログは全部調べたと言えば良いかしら」
「……ハハッ、あんたは敵に回さない方が良さそうだ」
「日外さんも大概ヤンチャなされたようですけどね……」
「真理愛への愛……かなぁ」
「それは同性愛……的な?」
「どっちだと思う?」
表情は変えないけれど、珍しく北条が冷や汗を垂らす。
「あ、影さんが知ってるじゃんねぇ」
北条によると、スマホ・パソコン・その他諸々は全て女性スタッフに調べさせて削除の上、物理的にも復元不可能にした。
またクラウド含め、ネットやクラスメイトへの流出は行われなかったことを確認済みと報告を受けた。真理愛についてのそういうのが無くて安心できた。
特殊な方法で奴らの記憶にも朧気にしか残らないだろう、と。……それは下手なホラーよりも怖かった。
「あいつらを吊るした件、なんのお咎めも無かったのはあんたのおかげってことだよね?」
「そうとも言える。あれが本当に致命の一手だったわ。あれだけは……傑作すぎて私も笑っちゃった」
「どーも(ニヤリ」
「最初に言ったけど、あれの流出関連のアクセス記録、端末情報、その他全部削除済みよ。あとは何者かによって拡散されただけ」
「おーこわ……」
「西片・中田家は私の力を使って潰した、何も残ってない。親は傀儡状態にして、全部私のコントロール下。もう絶対に何もさせないわ」
「……ちょっと待って。それ聞いて平気なやつ?」
「録音も盗聴も……この部屋は何もされてないから平気よ(ニッコリ」




