第二十六話 もう大丈夫
聖奈──
結局、1か月半もお世話になっちゃった。
体はもう大丈夫。真理愛も、学くんと時子が居れば大丈夫。だから正も大丈夫。
私が居なくても、もう大丈夫。
私はこの家を離れることにした。
そもそもが時子と学くんのハーレムハウスなんだ。私は邪魔だ。
混ざるのも良いかなってちょっと考えちゃったけど。
恋愛的な好きというものを私は持っていない。
だから、いずれ破綻しちゃうし、その時に真理愛にまで伝播しちゃったらおしまいだ。
3人だったらうまく行く。この1か月半を見て、それはわかった。
あとはお邪魔虫がいなくなれば完璧だ。
また、あのアパートに戻って、再就職から頑張ろう。
真理愛が居なくなるし、彼氏か彼女でも作って、適当にやろう。
そうすれば皆幸せになれるから。
早朝の4時。荷物を担いで、廊下を歩く。
たった1ヶ月なのに……いろいろあったな。
真理愛はすぐに馴染んだし、この環境を受け入れられた。たまに時子と喧嘩してるけど。
時子は仕事に復帰して、忙しそうにはしてるけど、でも帰ってくるといつも笑顔になっていた。正が大好きのようだ。
学くんは、よくわかんない。いつも皆に揶揄われて仏頂面してて、でもそうだね。大学の頃よりも笑顔が増えたよ。
楽しかったんだな、私も。
玄関に着く。
振り向いて、一礼。ありがとうございました。
まだ冬の空気が残ってる。
ドアを開けた瞬間に、冷たい空気が流れ込んできた。
アパート掃除しなきゃなぁ……ここが便利すぎて全然行かなかった。
「逃がさないけど」
建物の壁伝いに時子が居た。
「なんでよ。別に私は要らないじゃない」
なんとなくだけど、居る気はしてた。
「駄目。あなたも私が幸せにする対象に入っているから」
相変わらず無茶苦茶だ。
「もう十分だよ」
私はもう恩だと感じてる。
自分を助けてくれた。親友を助けてくれた。
だからもう十分だと。
これ以上は、施しになっちゃうから、受け取れないよ。
「彼女を……真理愛さんをずっと守ってくれたのはあなたじゃない」
あれは私が勝手にやったこと。可愛い真理愛を守るために勝手にやったこと。
だからいいの。納得してる。
「そういうのもういらないから……」
「だめ!」
玄関側から声がする。咄嗟に振り向くとそこに……。
「真理愛」
「やだ、行っちゃやだ。聖奈ちゃん!」
後ろには正を抱いた学くんも居た。
「私がいたらさ、破綻しちゃうんだよ。この生活は。だから出ていくんだ」
ボロボロと泣き始めちゃう真理愛に……少しでも綺麗に別れられるようにそう言った。
「だめ!……だって」
「聖奈ちゃんも傷ついてるもん!私を守るためにずっと気を張って!自分も裏切られたのに絶対泣かないで!私の事だけずっと気にして守ってくれた!私まだ恩をかえしてないもん!だから……やだ、行かないで」
泣き始めちゃう真理愛を見て……自分の頬を何かが伝うのを感じた。
暖かい何かが。
「奢りはだめなんでしょ!私、返せてない!聖奈ちゃんに返せてないよ!だからだめ、私も逃がさない!」
親友が抱きついてくる。私以上にボロボロ泣いて……。
涙なんて流したのいつ振りだろう。
そっか、私も辛かったんだ……。
でもね、真理愛。1つだけ勘違い。
辛いのを考えるよりも、真理愛の隣に居る方が楽しかったんだ。それだけは嘘じゃないよ。
「一緒に、居ても……良いかな?」
「あ゛た゛り゛ま゛え゛た゛よ゛」
だから、今度は私が甘える番か……。
「じゃ、さっさと学に抱いてもらっちゃいましょうか」
「「「ん゛ん゛!?」」」




