第二十三話 一晩明けて
学──
一晩の説得のおかげか、真理愛は俺の気持ちを『死ぬほど』理解してくれた。
嫉妬は人を殺す。なんていう言葉も有るが、まさかそれが天国への反復横跳びだとは誰も思わなかっただろう。多分意味が違う。
一睡もしてないせいか、真理愛はいろいろ『収まらない』状態になっている。呼吸もフゥフゥと上がっていて戻らない。目もなんだか虚ろというか、一生懸命に俺と目を合わせようとしているのにうまく合わせられない。フラフラしているから腰を支えるとビクッと体が震えてしまう。
時子にがっくんと呼ばれた時も、こんな感じだったなぁ……。人は反省する生き物とは言うが、反省を活かせない時も、もちろんあるさ。
真理愛は足腰が立たなくなってしまったので、またお姫様抱っこをして、風呂場まで連れて行く。
階段の振動だけでもやばいのか、必死に俺にしがみついて、我慢している。
わざと揺らして階段を駆け下りて、洗面所の扉を開けたところで……。
「あら、学。昨夜は楽しめたみたいね」
婚約者が他の女抱えて風呂場に来たのにその反応はどうでしょう。
これから風呂に入るのか、素っ裸の時子がそこに居た。
「少し後にするよ」
「良いわよ、一緒でも」
婚約者が以下略。
風呂場が広い広いとは思っていたが、こういうことか。
3~4人は楽に入れそうな風呂場で、時子が真理愛を洗っている。
なんでそんなに楽しそうなんだ?
「ずっと友達とこういうこと、してみたかったの!」
確かに時子は孤高というか、高校でも大学でも同級生にどこか線を引かれていた。仕事もあったしな。
唯一と言っても良いのか、聖奈と真理愛だけが、対等に時子と会話していた。喧嘩腰、ではあったけど。
そうして見ていると、ようやく回復したのか、真理愛が時子への疑問を述べた。
「時子さん、は私の事、嫌いだったんじゃないの」
「そんなこと一度もないけど」
「私のこと睨んでたり、あと私が拒絶しちゃったこともあったよね」
「心配で見ていただけだし、拒絶される理由もわかっていたから……それに、ずっとお話したかったの」
「あの……時の。……もうそんなの、忘れちゃってたよ……」
「私は、覚えていたわ。だから、もっともっとお話しする機会を作りましょう。文句だっていくらでも聞くんだから!」
「とりあえず、真理愛さんは学の弱点を知りたいんじゃない」
やめろ、お前は婚約者が以下略。
今、俺の前には絶景が広がっている。
熱くなって風呂の縁に腰を掛けている女神が2人。
片方はスレンダーで、ツンと上を向いた究極の美女。
もう片方は程よい肉付きで、存在感がとても凄い至高の美女。
俺はもう、ここで死ぬのかもしれない。
「真理愛さん。そこの馬鹿はカッコいいけど、たまに馬鹿になるから気を付けてね」
「がっくん……おっぱい見過ぎだよぉ……」
昨日はとても楽しかったです。
「でも……確かにこれは……羨ましいわ」
時子がそう呟いて、マジマジと真理愛の胸に目を向けた。
「正を産んでから、また少し大きくなっちゃって……」
時子が真理愛の様子を伺っている。なるほど、わかるぞ。
「あの、真理愛さん……」
「いいよ、触って」
察した真理愛の一言にパアァっと時子の笑顔が輝いた。のに、持ち上げてその重さを感じた途端に虚無顔となってしまった。
「なに……これ」
「あはは、肩が凝るだけだから要らないんだけ「要るが?」
2人の冷たい目線が俺を刺すがこれだけは譲れない。
「絶対に、要る」
「そうなんだ、学」
調子に乗っていました。すみませんでしたああああああガボガボガボガボ。
チャプンと、真理愛がお風呂に入り、泳ぐように俺に抱き着いてくる。
「がっくん、ごめんなさい。ごめんなさい……。ごめんなさい……」
もう何度目だろう。ぎゅっと抱きしめて「もう大丈夫だよ」と囁いてやる。
「俺も、ごめんな。辛い思いさせた」
腕の中の幼馴染が、俺のことをより強く抱きしめたのがわかった。
そして、いつの間にか近づいてきた時子が、俺と真理愛を抱きしめる。
「一緒に……幸せになりましょうね」




