セレネイド女子修道院の異変
一方そのころ、天歌教団セレネイド女子修道院。
そこでは、『見習い聖女』のひとりが叱責を受けていた。
「聖水の製造ノルマがまったく達成できていない、ですって!?」
「はい……申し訳ございません、院長様」
「どういうことですか、シスター・ココナ!」
「ほっ、他のシスターたちが役立たずなんです! 私だって、こんなに生産性が落ちるなんて思っておりませんでしたっ!」
「……つまり、あなたのせいではなく、他の人のせいということですか?」
「そ、それは……!」
「見苦しいですよ、シスター・ココナ」
「うっ……!」
ココナはセレネイド女子修道院の『見習い聖女』たちのボス的な立ち位置にいる。
もうすぐやってくる『選定の朝』に確実に聖女に選んでもらえるように、表から裏から点数稼ぎに余念がない――はずだった。
それなのに、最近めっきりうまくいかない。
セレネイド女子修道院が信者向けに販売している聖水やポーションの作成は、『聖女見習い』たちの修行と労働の一環だ。
ココナはその進捗を管理する立場にある『監督生』だが、このところ製造が全然予定通りに進んでいない。
というか、とんでもなく遅れている。
あの目障りな『落ちこぼれ』、エミリア・メルクリオを追い出してからずっとだ。
ココナは唇を噛んだ。
「この遅れはいつまでに取り戻すのですか?」
「あっ、明日までには!」
「わかりました。その言葉に責任を持ちなさい。シスター・ココナ」
「はい……」
追われるようにして院長室から出て来たココナに、取り巻きの『聖女見習い』たちが詰め寄る。
「ココナ、どうするのよ」
「あなたがエミリアを追い出そうっていうから、私たち協力したのに……!」
「そうよ、『落ちこぼれ』がいなくなればセレネイド女子修道院の評判が上がるっていうから!」
「協力すれば、同期の見習全員が聖女になれるって言っていたわよね?」
「このままじゃ、聖女になるどころか……ノルマ未達成のおしかりよ……!」
「あの子に押しつけてた仕事がこんなに沢山あるなんて知らなかった!」
「そうだわ、シスター・エミリアがいなくなってからニワトリ小屋の掃除をする子がいなくて、なんだか臭いわ」
「エミリアを追い出したのは、失敗なんじゃないの!?」
「なによ! じゃあ、この状況は私があの『落ちこぼれ』を追い出したせいだってことかしら? そんなわけないじゃない!」
押し寄せる文句に、ココナが叫ぶ。
「……じゃあ、私たちの効率が悪いってコト?」
「そうとは言ってない。と、とにかく、なんとかするから黙っていてちょうだい!」
「……ココナがそこまでいうなら、いいわ」
「なんとかしてよね、絶対に」
うるさい取り巻き達を振り払って、ココナは自室に引き上げた。
「なんとかしなきゃ」なんて、言われなくてもわかっている。
エミリア・メルクリオ。
いつもお腹をすかせて、ウトウトしていて、どんくさい『落ちこぼれ』だった。
そのくせどんなに見習いの仕事を押しつけても、へらへら笑っていたのが気に食わなかった。
聖水やポーションに、いくら魔力を込める『祝福』をしても、全然へばらない。
ほかの見習いが1日3本程度でへこたれる『祝福』を、平気で10本も20本も担当していたし。
そんなにお腹がすくなら、食事係に賄賂を渡して横流しをさせればよかったのだ。
みんなやっていることなのに、そんなことも考えない。
――まるで、本当の『聖女』だ。
ココナは、そんなエミリアを見るたびにイライラしていた。
だから、色々と手を回して、修道院長にあることないこと告げ口をしてエミリアを追い出したのだ。
それは、ちょっとは彼女に押しつけた仕事を自分たちの手柄にしたりもしたけれど……!
「……エミリア・メルクリオ! あんなやつがいなくても、修道院は大丈夫なんだって見せてやる」
ガンッ! と派手な音を立てて、ココナはお祈り用の椅子を蹴飛ばした。
実際、『見習い聖女』たちがエミリアに押しつけていた仕事は膨大で、全体の業務の実に半分以上におよんでいたことを、ココナはまだ知らない。
下段に【評価欄:☆☆☆☆☆】がありますので、
★★★★★評価 →超面白いじゃん!
★★★★☆評価 →普通に続き読みたい~♪
★★★☆☆評価 →まぁまぁかなぁ~?
★★☆☆☆評価 →今後に期待かな?
★☆☆☆☆評価 →うーん、微妙……。
みたいな感じで、ぽちっとお願いします!
【ブックマーク】や【お気に入りユーザー登録】もぜひ!!




