ダンジョン最深部攻略、開始。
メリルリ古代迷宮最深部の攻略に出発する朝。
ジョンの背に揺られながらエミリアは溜息をついた。
「はぁ……寂しくなりますね」
「なに、すぐに帰ってくるんだ」
「採れたてのお野菜が食べられないのは……考えただけでお腹が空きますぅ……」
「我も同感だ……」
「犬のくせに野菜が好きだな、ジョンは」
「我は犬にあらず、氷狼フェンリルなり!」
軽口を叩きながらも、ダンジョンに到着する。
カバンいっぱいに弁当や保存食を詰め込んでいる。……といっても、今回の装備は巨大なリュックではなく、アビゲイルが空間圧縮と転移の魔法陣を応用して作ったミニバッグだ。倉庫3つ分くらいの容量がある。
「えへへ、おそろいですね!」
「まぁ、おそろいと言えばおそろいだな」
アビゲイルと同じ、可愛らしいミニバッグを肩から下げてエミリアはにっこりと笑った。
***
メリルリ古代迷宮。
古代魔法文明の魔導具の出土が多く、冒険者にとっては「オイシイ」クエストが多く発生する。
ただし、比較的安全かつ効率的に探索のできる第2層までとは異なり、第3層以降は危険度の高いダンジョンとなっている。
第3層にある希少種レッドドラゴンの繁殖地、第4層にあるハーピィの洞穴、第5層にある歌い人魚の泉――第6層以降は、エミリアとアビゲイル、そしてジョンだけが踏破できている。
今回は、事前の調査によると『最深部』であるとされる第10層への探索が、エミリアたちに依頼されたクエストだ。
「あとは、途中の階層に帰還魔法陣を設置する……というクエストも任されているな」
「セーブポイント1つ設置するごとに、えっと100万サキュルも貰えるんですね!?」
「あぁ、セーブポイントの設置はギルド運営の生命線だからな。より多くの冒険者が安全に探索できる状況を整えれば、メリルリ古代迷宮でのクエストが発注しやすくなるし、そうすればメリル市の冒険者組合にさらに冒険者が集まってくる……そうしたら、どうなると思う?」
「えっと……冒険者さんたちがバザールで買い物をして、ミセス・ソーセージバゲットやリンさんたちのお店も潤います!」
「正解。街全体が潤うわけだ」
「おおお……!」
「現状、王都に対抗できる規模を維持している街はメリル市くらいだからな。どんどん発展してもらおうじゃないか」
「はい!」
エミリアは力強くうなずく。
―――
◆クエスト概要 : メリルリ古代迷宮最深部攻略
◆クエスト実施地 : メリルリ古代迷宮第10層
◆依頼主 : メリル市冒険者組合
◆必要編成 : 2名
◆報奨金 : 成功報酬1000万サキュル。
――
◆クエスト概要 : ダンジョン内の帰還魔法陣設置
◆クエスト実施地 : メリルリ古代迷宮第5層~第10層
◆依頼主 : メリル市冒険者組合
◆必要編成 : 2名
◆報奨金 : 魔法陣設置1つにつき成功報酬100万サキュル。
――
メリルリ古代迷宮攻略、開始である。
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