第六話
スキル鑑定を行ってから十年が経過した。
俺も今年で十五歳。
自分の人生を選択する時が来た。
ベンさんのおかげで学校に通うこともできた。
学校の卒業式は丁度昨日のことだった。以前からベンさんに話していた通り俺は今日から自分で生きることになる。いつまでも孤児院の世話になるわけにはいかない。
ベンさんは俺以外にも数多くいる身寄りのない子供たちを救わなければならない。
それにやってみたいこともあった。
俺に迷いはない。
自室で出発に向けて最後の準備をしていると、扉がノックされた。
「はい?」
「俺だ。」
返事をするとベンさんが扉を開けて入ってきた。
「本当に行くのか?」
「うん。行くよ。自分の意思で選んだんだ。あの日ベンさんが俺に教えてくれた通り、自分の意思で生きてみようと思う。」
ベンさんは少し寂しそうな顔をしていたが、俺は笑顔だったと思う。
「そんな顔をしないでよ。今生の別れじゃないし。たまに帰ってきてもいいんでしょ?」
「馬鹿言うな。いつでも帰ってきていいに決まっているだろ?」
ベンさんはそういうと俺をあの日のように抱きしめた。俺もそれに応じる。
「どこにいてもお前は俺の息子だ。いつでも帰ってきなさい。」
「…ありがとう。」
ベンさんが俺から離れた。
「それにしてもお前も大きくなったな。十五歳…か。」
俺は十五歳にして身長が171センチある。同年代と比べてもかなり大きな方だと思う。
旅立つことを想定していたから体はそれなりに鍛えた。細マッチョくらいにはなっていると思う。髪型は相変わらずのボサボサ頭で、やや長めの目が隠れるかどうかくらいのボブ、軽くウェーブしている感じ。少しだけ天然パーマだったみたいだ。後ろは少しだけ刈り上げになってる。
「ベンさんのおかげだよ。」
「ふんっ…泣いちゃうからやめてくれ。」
ベンさんが元戦士らしくないことをいうと、自分の目頭をつまんだ。
俺はそんな様子をよそに準備ができたので少し大きめのリュックを背負う。
ベンさんとは目に見えない本当の絆みたいなものがあると信じているから、こうして安心して旅立てるのかもしれない。
「…それじゃ行くよ。今度会う時はもっと大きくなっているかも。」
「あぁ…楽しみにしているさ。」
最後にもう一度ベンさんと別れを惜しむように抱き合う。
彼には本当に大切なことをいくつも教わったと思う。もしかすると前世の両親よりも沢山のことを教わったかもしれない。
俺の心の内を溢れるほどの感謝が満たした。
そして俺は孤児院の扉を開け、新しい日常を歩みだした。
●
グラン・サトウでは15歳を迎え、学校を卒業した子供に二つの選択肢がある。
一つは引き続き学校に通うこと。18歳までは無料で学業に励むことができる。グラン・サトウ建国者である国王が決めたことで、今でもそれは守られ続けている。
全ての子供たちに平等な未来を、それが彼の掲げた公約だった。
しかしレントは学業の道には進まなかった。
彼はベンから教わった選択の自由を大事にしようと考えていたため、あえて学業は避けた。
彼が選択した道は就職する道。
その中でもギルドに所属する道を選んだ。
この世界には危険な魔物も数多い。だが人類は数千年前に完全に人類と魔物の住む領域をわけることに成功した。つまり魔物による危険が人の住む国に及ぶことはほとんどない。
しかし魔物が体内で生成する魔石や、その魔物のみが持つ特定の部位など、未だに魔物が持つ素材は資源として重宝されている。
魔物を狩り、資源を持ち帰るのもギルドの仕事の一つだ。
だがこれはギルドが受け持つ仕事のごく一部でしかない。
異世界リーンズは地球のおよそ十倍の面積を持ち、大きく三つの地域に分けられている。
一つが人々が生活を織りなす人界。
次に現状人界とのかかわりをほとんど持たなくなってしまった魔族の住む魔界。
最後に人類や魔族を含めたすべての知的生命体が解明しきれていない地域:未界。
これら三つの領域が現在のリーンズを構成している。
ギルドに所属する者達を人々は冒険者と呼ぶ。人界でも魔界でもギルドは存在し、魔物退治以外にも未界を探索する役割を担っている。
つまり未開の土地を探索、開拓する者達だからこそ人々は彼らを冒険者と呼ぶようになった。
もちろんギルドの仕事はそれだけではなく、傭兵に似たようなことや、イベント警備といったよろず屋的な側面も持っている。
多種多様な仕事を所属しているだけで自由に選択できるのがギルドの持つ特性だ。
レントもギルドに所属して自分の好きなことを突き詰めようとしている。
彼が現状もっとも興味がある仕事はたった一つだった。
それは未界を探索すること。
冒険者という名に最もふさわしい仕事だ。
米津になった
米津になってしまったみたいだ
髪の毛が
YouTube:須田景凪 「MOIL」MV
コメント欄より抜粋