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第二十八話


「なぜこの崩壊が忌み嫌われているかと言いますと、このスキルは今見た通り周囲のものを無差別に破壊してしまうからです。魔界では数百年かに一度あたかも先祖返りかのようにこのスキルを持った子供が生まれます。」


 シオリは厚手での手袋の上から、自分の手を撫でた。


「その手袋は特別性ということですか?」


 万里雄が素直に気になったことを聞いた。話を聞くと制御が難しい能力のようだが、確かに手袋が破壊されていないのは不自然だった。


「その通りです。この手袋は崩壊に影響され辛い性質の素材が使われています。ある魔物の皮でできておりまして…ただそれでも完全ではありません。この手袋もやがては崩壊し、新しいものが必要になります。」


「ちなみにその魔物について聞いても?」


「…構いませんよ。鱗を持たない竜:クエロと言います。非常に珍しい竜ですから…ただ未界だけではなく人界、それに魔界にも生息しています。」


「なるほど。」


 珍しい竜だからこそ、常に手袋の素材が手に入るとは限らない。だから早急に解決手段を探さなくてはいけないということだろう。


 シオリがそんな万里雄に笑顔で答える。


「それでは話を本題に戻させていただきますね。といっても話はほとんど終盤でしたが、この崩壊のスキルを消す方法を、アルテマなら知りえるのではないかと思いまして。」


「…消す?」


 万里雄がなぜその消す、という部分に疑問を持ったかというと、本当に消す必要があるのかどうかという意味だった。今の話を聞くと、その皮があれば問題ないように思える。


「ええ、このスキルにはあるデメリットがありますので。」


「それは…一体?」


「発現者の死です。」


 一同は眼を見開く。スキルによる自壊、そんな現象は聞いたこともなかった。この中で最年長のサルバですら全く聞いたことがない事実だった。万里雄がサルバの方を見ると、彼は顎に手を当て何かを静かに考えている様子だった。


「このままいけば私も間もなく死んでしまうでしょう。ですからもしアルテマに会う術があるのなら、是非スキルの消し方について聞いていただきたいのです。」


「…わかりました。もしもそんな機会があれば、実際に聞いておきます。」


 ようやくこの世界に意識を取り戻し始めたレントは、今の万里雄の返事に疑問を感じた。命がかかっている状況の相手に対して、かなり冷たい態度だった。


 普段の彼は温厚で優しく、この場面で突き放すようなことをいうタイプではない。


「えぇ…是非、お願いします。」


 シオリは一国の姫だというのに、二人に対して深く御辞儀をした。


 ただその話の間、ドッドの表情はずっと優れないままだった。


「それでは本国をあまり長く離れるわけにはいきませんので、これで失礼させていただきます。」


 シオリは立ち上がる。


 ドッドも立ち上がると、二人にお辞儀をした。


 ただ二人が部屋を出ていく前に、再びレントが口を開いた。


「…御堂みどう しおり…この名前に覚えはありますか?」


 非常に直接的なそれは、レントの前世の恋人の名前だった。もしも彼女が転生後の姿であるのなら、この名前に反応しないはずはない。


「あなたは確か…レントと言いましたね。」


 シオリはもう一度二人の方へと振り返ると、レントの方を見た。


「また会える機会を、待ち望んでいます。」


 明確な答えは一切出さず、彼女は部屋を出ていった。


 レントはしばらく扉を見つめていた。


 ●


 二人はあの面会の後、寮へと戻ってきていた。


 というのもあの時のレントの不自然な態度に対して、万里雄が問い詰めるためだった。


「レント、あの時不自然だった件について、ちゃんと説明してくれるよね?おかげで受け答えはほぼ全部僕がしたんだ。」


「あぁ、ごめん。実は…俺の前世、つまり転生前の彼女に瓜二つだったんだ。シオリ姫がな。」


 万里雄はその話を聞いて目を見開く。


「だからレントは彼女の前世の名前を言い当てたんだね。」


「…それはどういうことだ?」


「彼女のスキルについて知りたくて、構造理解で調べたんだ。そしたら前世の名前までわかっちゃって、それをレントがドンピシャで言い当てるもんだから驚いちゃったよ。」


「待ってくれ!じゃぁ彼女が御堂みどう しおりであることは間違いないのか!?」


 レントは珍しく大きな声を出した。そして万里雄の方へと詰め寄る。


「ま、間違いないよ。だって流石にスキルは嘘をつかないでしょ?」


「そんな…じゃぁ。」


 レントはうつむいた。それはそうだろう。もしもそうなのであれば、彼女はまた死ぬことになる。スキル:崩壊の影響によって。


「でもなんであんな嘘をついたのかな。」


 万里雄が疑問気に口を開いた。


「嘘?」


「うん、彼女のスキルについてさ。」

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