第二十五話
午前中を買い物を終え、昼食も取らずにものづくりに没頭していた。
気付けば寮にある窓から夕陽が差し込んでいる。
集中しているせいか、万里雄は口もきかずにただ作り続けていた。レントもその光景を眺めるだけだ。彼が未解決問題を解いたことがあるということが、今なら素直に信じられた。
万里雄は額につたる汗をぬぐい、ようやく口を開いた。
「完成だ。」
彼はレントに完成した武器を見せる。
「題名は…そうだなぁ…自装式魔導リボルバークロスボウとでも名付けようか。」
「な、長いな。」
「縮めてポケ○ン的な略が欲しいってこと?」
「あれば助かる。」
「…クロスガン、そう名付けることにしたよ。」
「クロスガン?」
「あぁ…機能的にはそれが一番表している気がする。」
レントは万里雄の手元にあるそれを観察する。その名前の通り、やはりどこにでもあるクロスボウといった感じではない。クロスボウらしく、まるで弓を横向きにしたかのような仕組みは保持しつつ、大きな銃身とリボルバー部位がある。
全体が金属製という訳ではなく、持ち手にあたる部分はショットガンや、ライフル銃のように大きな木が使われており、重心を安定させている。逆に発射に関わる装置や、リボルバー部分など、持ち手以外の全ては金属が使われている。
レントは万里雄からクロスガンを渡され、それを実際に手に持った。かなりゴツイ見た目に反して、持って見るとそれなりに軽い。
「す、凄いな。」
「まぁ苦労したからね。パーツはモデリングできたけど、組み立ては自分、かなり苦労したよ。向こうでの趣味がプラモデルじゃなかったらもっと苦労していたと思うね。」
趣味が高じて…なんてレベルじゃないそれを、万里雄は作り上げてしまったのだ。
「こんな凄いのをくれるのか?」
「もちろんさ。」
「仕組みは?」
「自装式ってのはクロスガンが勝手にリロードする仕組みから来ているんだ。弓矢はこれね。」
万里雄に想像以上に小さな弓矢を渡される。丁度十五センチくらいだ。
「うお、意外にコンパクトだな。」
「そこから射出される威力を暗算したんだけど、その大きさで十分だったから。それに荷物は軽くて少ない方がいいだろう?」
まるで四桁の足し算引き算を暗算したかのように簡単に言うが、もちろん物理の知識が大量にないとそんなことは不可能だ。
レントにはそんな計算などできないが、今の万里雄の話の異常性だけはしっかりと理解していた。万里雄の表情は一切かわならないので、彼に取っては本当に当然のことなのだろう。やはり元引きこもりらしく常識が欠如している。
「本当に天才だったんだな。」
「ハハハ、普通だよ。あぁ~…これでいいかな。」
万里雄は余った木片の人つを手に取り、それを赤と黒の一般的な的にモデリングした。
「これを打って見て。」
「え?クロスボウって打つのに準備が必要じゃなかったか?」
「いや、そこら辺を魔法でどうにかできるのが、ファンタジー世界のいい所さ。武器屋でいろんな武器の仕組みを見たからね、だから自動でリロードもできるし、発射準備も自動なのさ。」
万里雄がレントが持ったままのクロスガンに触れ、何かを解除した。
「ただ流石に安全装置は付けた。このピンがそうだから、これを下に下げるだけ。ハンドガンのモデルガンは見たことあるだろ?あれと安全装置は同じだから。」
「本当に凄いな。」
レントはさっきから関心しかしていない。
「ほら、もう打てるから、狙いを付けて引き金を引いてみて。」
クロスガンにはスコープ搭載されおり、そこから覗き込み狙いを定める。
そしてレントは引き金を引いた。すると銃のようにズガンッというよな大きな音が鳴ることはなく、小さくパシュッという音だけが鳴った。ほとんど無音といっても過言ではないだろう。
まるで吸い込まれるように的の中心に矢が向かっていく。
ただ想定外だったのはその威力で、薄い的だった為に、貫通してその後ろにある机に刺さった。
「す…凄い威力だな。」
「う、うん。一応計算通りなんだけど、的の強度を計算していなかった。安全装置以外に持ち手の所に三段階操作できるピンがもう一つあるだろう?」
「…これか?」
「そう、それ。それは射程を変えるピンで、それぞれ100、200、300メートルまで操作可能だよ。」
「どこまで凄いんだ万里雄…。」
余りの技術力と応用力の高さにもはやレントは脱帽していた。
「名探偵コ○ンのア○サ博士かよ。優しさはアン○ンマンのジャ○おじさん並みだな。いや、スラム○ンクの安○先生でもいいかもしれない。」
「ハハハ…レント、わかりやすい例えを交えて褒めてくれるのは嬉しいけど心なしかキャラクターが全部太っている気がするんだけど…。」
そんな無駄話を交えつつ、レントは暫く万里雄からクロスガンの使い方を教わった。




