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第二十三話


「現状を理解して頂けたなら何よりです。ところでまたギルド長がお呼びでしたよ。何でも話があるとか。今報酬をお持ちしますので、少々お待ちください。」


 アイシャは受付奥の扉へと下がっていった。


「昨日の今日で話って…本部への報告で何かあったのか?」


「分からないけど話を聞きに来る本部の人がいるとか、そんな感じじゃないかな。かなり重要な情報みたいだから、実際に聞き取りしたいっていうのも納得できるよ。」


「確かにそれが一番有力だな。それじゃ明日は依頼は休みかな。そっち系の処理が終わったら買い物にでも行くとするか。…前衛のいない弓矢じゃ集団戦は不利だ。今日ナイフで戦っている時に、他の武器ならもっと安全に立ち回れるのにと、少しだけ後悔した。」


「ハハハ、それはそうだね。僕もこの世界に何があるのか実際に把握したかったし、丁度いい機会だね。明日は買い物で決定だ!」


 万里雄が嬉しそうにしている。二人で稼いだ金はちゃんと二等分にしている。お互い命の危険にさらされているのが間違いな以上、報酬に上下を付けるべきではないというレントの提案だった。


 万里雄は流石に申し訳なさそうにしていたが、その提案を承諾した。


「お待たせしました。こちらが今回の報酬になります。初心者にしては多い方ですね。お疲れ様です。」


 二人は小包を見てにやける。この国の通貨は円で、物価も日本とそこまで変わらない。流石【グラン・サトウ】というだけある。


 そもそも命がけの商売ということもあり、冒険者自体がかなり割りのいい仕事でもある。二人が今回貰ったのは十万円だった。


「これなら少しは装備を新調できるかもな。」


「す、凄いな。たった一日でこんなに稼げるなんて…にやけちゃうよ。」


「…き、気持ち悪いですね。」


 にやける二人を見てアイシャの視線が軽蔑へと変わった。


「あ、アイシャさん、喜んでいるだけですから。そこは勘弁してください。綺麗な女性のそういう視線はかなり心に来ます。」


 レントが少しだけ悲壮感を表情に漂わせる。


「そ、そうかな。僕は悪くないと思うけど。」


 隣で万里雄がそういうと、レントにかかる疲労はさらに大きくなった。


 アイシャはアイシャでそこまで気分は悪くなさそうだ。


「まぁいいや。とりあえずギルド長室に向かおう。」


「そうだね。忘れるところだった。」


 二人はすぐにギルド長室に移動した。


 扉をノックするとすぐに中に通され、二人は再びサルバの前に座った。


 二人は席に着くと、サルバの表情が少しおかしいことに気付いた。大きく目を見開き、興奮を隠せない様子だった。なんというか、場所が場所なら掴まりそうなほど興奮している。


 我慢ならない様子と表現したほうがいいのかもしれない、二人が座るとすぐに口を開いた。


「歴史が動いた。いや、君らが動かした。」


「えっと…何があったんですか?」


「ほとんど鎖国状態だった魔界が動いた。君がもたらした究極生命体アルテマの情報でね。明後日、このグラン・サトウのギルド人狼の牙に国賓が来るらしい。」


 ギンギンに目を見開いているせいで、今のサルバは薬物常用者のようだった。レントはサルバのその表情と、そして報告内容に頬をピクピクとさせ、顔を引きつらせる。


「国賓?」


「あぁ…国賓だ。」


「…さては誰かまでは聞いてませんね?」


「あぁ…聞いてない。」


 サルバの頬に冷や汗が流れる。


「とりあえずわかりました。」


 レントはもはやその時が来るのを待つしかないことを悟った。冒険者という職業について未知をもとめて冒険に明け暮れる毎日、そんな毎日を志していたレントは、それからどんどん遠ざかっていくのを感じていた。


「魔界の国賓か…美人だといいなぁ~。」


 万里雄は能天気に天井を眺めている。


「まだ女性かすらさだかじゃないんだよ。男尊女卑じゃないけど、こういう時は男性が来るのが普通だよ。ほとんど鎖国状態でお互いに警戒中なんだ。無警戒に女性を送り込んだりはしないよ。」


「今思えば確かにこのボロギルドに来るなんておかしいよね。普通なら国賓なんてもっといい場所に招くはずだし。」


「万里雄君、今の発言は君の評価にしっかりとくわえておくよ。」


 サルバは多少不機嫌そうな顔で万里雄を見ている。


 万里雄は自分の発言を思い返して今更口をふさいだ。


「まぁでも国がこの場所に魔界の国賓を招くのに反対しなかったのは簡単な話だろう。サルバさんがいるから、この国でもっとも安全な場所はここなんだろ。」


「レント君、今の発言は君の評価にしっかりとくわえておくよ。」


 今度はかなり機嫌よくレントを見ている。


「ま、何はともあれ、今はその時を待つしかないですね。」


 嬉しそうに妄想を膨らませ天井を眺める万里雄の横で、レントは大きなため息をついた。

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