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第十六話


「それで相談なんだけど、レントは魔法を使えないの?見してくれれば使えるらしいんだけど。」


「悪いけど、俺は魔法の才能が全くないらしい。どうも魔法自体使うのが難しいみたいだ。」


「え?でもホブゴブリンを爆発させてたよね。」


 万里雄がレントへと迫る。いくらおねだりしようともないものはない。


「それが俺のスキルなんだよ。俺の能力は…一つだ。干渉爆破って言って、触れたものを爆発させる能力なんだ。あの時は俺が触った石を爆発させたわけだな。」


「す、凄い。でもそれって、相手を直接爆発させられないの?」


「それはできないみたいだ。生き物にこの能力は使えないらしくて、他のものを爆発させて攻撃する感じになる。」


「なるほど…でも僕たちいい相性だね。」


「え?ゲイ?」


 レントはキョトンとしながら万里雄を見返す。


「ち、違うよ!!そうじゃなくてさ、僕はきっと色々な魔法が使えるようになるから、レントのサポートができるって話さ!」


 万里雄がすこぶる動揺しながら否定する、逆に怪しさを増していたが、レントはその可能性を頭の中から追い払った。


「でも魔法は他の方法で学ぶしかないか…。」


 万里雄は口をへの字にして天井を見上げている。


「お互い冒険者になったんだ。他の冒険者が使う魔法を見ることくらいできるさ。」


「そ、それだ!」


 万里雄は頭がいいが、かなり真面目な性格らしい。きっとカンニングをしたことがないのだろう。もちろんレントもそんなことをしたことはない。


「それじゃ早速明日から依頼を受けて稼ごう。俺も昨日冒険者になったばかりで、まだまだ財布が空腹で悶えている状況だ。現状の目標は生きられるだけの資金だな。」


「賛成!それにこの世界についてもっと知るためにお金がいるよね。」


「間違いなく俺も知らないものが沢山ある。孤児院で育ったから、まだまだ知りたいことも沢山あるし、そのためにもまずは財布をあっためようじゃないか。」


「…レントって、ところどころ言い回しがおっさん臭いけど、いくつで転生したの?」


「…秘密だ。」


 レントは万里雄に二つの隠し事ができた。一つは特殊能力のこと、もう一つは前世のこと。前世に関しては思い出したくない記憶の方が多く、今はまだ何も答えることができなかった。


 ●


 翌日、レントと万里雄は二人で未界に来ていた。


 受けた依頼は昨日と同じ。イヤシ草の採取。昨日の分は万里雄と出会う前にすでに手に入れていた為、依頼は無事達成している。


 とりあえず安パイな依頼で、万里雄をこの世界に慣れさせるのが狙いだ。


 昨日は非常に特殊な場合で、普通はあそこまで魔物に襲われることはないらしい。それを知っていたからこそサルバはレントにこの依頼を勧めていた。


 結果的にもう一度最初から、レントはこの依頼を受けることにした。


「これがイヤシ草なの?」


 テレポータルから出て森に少しだけ入った場所にイヤシ草は生えている。かなり報酬が安い依頼なだけあって、相当簡単だ。


 とりあえず初月は寮費を稼ぐ必要もなく、食費も必要ないので大きな依頼を受ける必要は全くない。人狼の牙は初心者に非情に優しいギルドでもある。


 万里雄が地面に生える小さな赤い花を少しだけ咲かせた草を摘み取る。イヤシ草の特徴で、小さな赤い花を年中咲かせている。見つけるのは非常に簡単で、塗り薬などに使われる草だ。


 人界には生えておらず、需要はほぼ無限にある。だからこの依頼がなくなることはない。初心者にとってのメシアみたいなものだ。


 万里雄は摘み取ったイヤシ草を少しだけ眺めていた。


「どうしたんだ?」


「いや…構造理解を試してたんだ。」


「へぇ、どうだった?」


「うん。そのまんまだった、切り傷などに対して化膿止め、痛み止めの効果がある草。」


「ちょっと待ってくれ、そのスキルは単純に構造を理解するだけじゃないのか?効能すら理解しているじゃないか?」


「たぶんだけど、それを含めて対象の構造ってことなんじゃないかな?」


「おいおいマジかよ。かなり有用な力じゃないか。」


「ははは、そういってくれると嬉しいよ。ん~と…そうだね、この草をどうぞ。」


 万里雄が適当な草を摘み取ってレントに渡してくる。


「ほう…これには一体どんな効能が?」


「名前はマヒマヒっていって、少しだけ体を痺れさせる効能があるみたい。レントの弓とか、ナイフに塗っておけると思って。」


「そいつはいいな。いやぁ、想像以上に万能な能力だなそれ。」


 レントは地面に腰を突くと、矢じりやナイフにマヒマヒを塗り始める。


「…惚れ薬とかもあるんじゃないかな。」


 万里雄が良からぬ顔をしながら他の草も観察し始めた。早速スキルを私利私欲のために使っている。自分の力の使い道は個人の自由だと思うが、あまりに不純な狙いにレントはため息をつく。


「はぁ…そういうのは俺がいない時に探してくれ。」


「えぇ!?…わかったよ。」


「僕もそれがいいと思う。そもそも惚れ薬が生えているのはもっと森の奥だ。今の君たちがたどり着くのはほとんど不可能だと思う?」


「ハハハ、森の奥なんてまだ行く気にもなれないさ。万里雄、こいつの言った通り諦めたほうがいい。」


 レントが笑いながら万里雄を止める。


「そっか、森の奥なら諦めるしかないね。」


 三人は暫く笑いあう。


「で、君誰?」


 レントは突然話に参加してきた何者かを見る。

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