第十四話
「君が万里雄君と同時に持ち帰った換金部位を見た。フロックファングとホブゴブリンのものだったよね。あれは昨日冒険者になった奴に倒せる魔物じゃない。」
サルバは断言した。
「…でも…それは偶然かもしれない。まぐれ…かもしれないですから。」
レントは何とか言い訳して万里雄のお守りを逃れようとしていた。
「確かに大きなゴブリンを一瞬で倒したときは驚いたよ。人ってあんなに軽やかに動くんだね。」
隣で万里雄があの時の状況を話、ダメ押しをしだした。
「それに君となら一緒にやっていきたいと素直に思えるよ。ほら…あの件もあるだろ?」
万里雄がレントへとウインクした。
「…まさか君が万里雄君とそんな関係だったとは。この短い間によくもまぁ…」
サルバが更に苦笑いをしている。良くない勘違いをされてしまったようだ。
「いや、そんなことは全くないですから!俺はただ…。」
レントが最後まで言い切る前にサルバが口を開いた。
「君のことはベンから聞いている。僕らは友人だ。」
「え?」
「仮に君がフロッグファングやホブゴブリンを倒していなくても、僕は間違いなく君に頼んだろうね。それに…。」
「それに?」
「冒険者には信頼できる仲間が必要だ。君もこの先ずっと一人でやっていくのは難しいと理解しているだろう?」
「…それはそうですが。」
「なら決まりだ。この話はここまで。」
サルバは立ち上がってしまった。
「ゾーイ、万里雄君のギルドカードを発行してくれ。」
万里雄がゾーイに案内され、部屋から出ていった。
「それじゃぁレント、良ければ飯でも行かないか?」
「…わかりました。」
サルバに言われるがまま、レントもギルド長室を後にした。
廊下を少しだけ歩き、直ぐに食堂へ続く階段を下る。
すでに夕刻というだけあり、やはり食堂は人に満ち溢れていた。客の食べる料理がどれもおいしそうで、レントは考えるのをやめて食事でもしたい気分へと変わった。
「今日は僕のおすすめを食べてくれ。」
サルバに案内されるがまま席に着く。テーブルを四席の椅子が囲んでいる。薄暗い窓の外が見える席だった。別段高い建物という訳ではないので、夜景が美しいということはない。
ただし広い景色が望める窓際というだけで、少しだけテンションが上がる。
サルバが近づいてきたウエイトレスと話をし、直ぐに彼女はキッチンへと向かった。
料理を待つ間に万里雄とゾーイが残り二席に座った。最初から四人で食事をとるつもりだったのだろう。
「君の話しはよくベンから聞かされていたよ。」
「そういえばさっきから話に出てきていたベンさんって?」
万里雄が疑問気に口をはさむ。
「俺を育ててくれた人だよ。孤児院を経営していてね。いい人さ。」
「…そうなんだ。」
万里雄は孤児院というワードを聞いて黙ってしまった。育って見れば普通の家庭とそこまで変わらなかったが、万里雄からすると少し気になるワードらしい。
確かに前世であればレントも気を使っただろう。
そこでレントは話を変えることにした。
「ベンさんが、俺の話を?どんなことを言ってました?」
「君の自慢話ばかりさ。彼は昔から自分の子供たちの自慢話をするが、君のが特にひどかった。やれ爆発させただの、戦闘の天才だの…まぁ耳にタコだったよ。」
「ベンさんがそんなに俺のことを…。」
「だからか分からないけど、君のことはすでに他人とは思えない。いつもでも頼ってくれて構わないよ。もちろん他の者に示しが付かなくなるから限度はあるけど、出来る限りのサポートはする。」
「ありがとうございます。…以前のベンさんってどんな人だったんですか?」
「彼か…そうだな。今とあまり変わらないよ。彼は筋金入りの善人さ。昔からずっと誰かを助け続けている。ただその手段が血を流すことに疑問を持ってね、今の仕事を選んだわけさ。」
「…そうですか。ベンさんらしいですね。」
「そうだろ?…おっ?食事が来たようだ。さぁ食べようじゃないか。どちらにせよ無料なんだ。贅沢に食べてくれたまえ。」
目の前に並んだ贅沢な食事達にレントは思わず見とれる。隣に座る万里雄はと言えば溢れ出るよだれを我慢できずに垂らしていた。
「はぁ…前途多難だな。」
その日の夜、レントは歩けなくなるほどやけ食いをした。




