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絶滅俯瞰  作者: 遒�。�
第二章 絢爛王都ディアデム
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第二十八話 汝は人間なりや?

 ふと、金属音を伴う足音が近付いてきていることに気が付いた。先程の青年の時には気が付かなかったが、彼は金属の鎧を身に纏っていた。恐らく、青年の足音もこれに似たものなのだろう。そういえば、フォリンを助け出してくれた男も、よく似た格好をしていたはずだ。

 あの人だろうか、と思いそちらを見ると、フォリンの予想とは全く違う人物がそこにいた。凛とした、涼しげな目元をした若い女。ミリアやオルガ以外に若い女を見たことがなかったフォリンは、少し驚いてしまった。肌には皺らしい皺も無く、かといって自分の様な発育途中でもない身体は、成熟した成人女性のそのものだ。あまり美醜の判断を下す機会も無かったフォリンには上手く形容できないかもしれないが、その女は今の世においても美しいとされる見目をしている。

 しかし。彼女はその美貌が勿体無くなってしまうような表情をして、フォリンの前に立っていた。


「その娘か? 奴隷商の目を潰したのは」


 厳しい視線に、尖った印象の言葉。女性らしさをあまり感じさせない雰囲気を、彼女は纏っていた。


「あ、副隊長ふくたいちょー

「コーエン、どこまで話を聞いた?」

「いや、俺はまだ何にも」


 女性の目が厳しい。彼女はどうやら、コーエン青年よりも立場が上にある人物のようだ。態度は良いとは言えないだろうが、敬意の情の類は感じられる。

 副隊長と呼ばれた女性は、軽く息を吐くとコーエン青年に向けていた視線をフォリンへ移した。その視線はやはり鋭く、威圧感がある。美しい銀の瞳が、冷たい。


「……娘、これからいくつか質問をする。正直に、出来るだけ仔細に答えろ」


 何も言えず硬直してしまったフォリンの前で、「ダメダメ」とコーエン青年が両手と首を振る。


副隊長ふくたいちょぉ、それじゃまるで尋問ですよぉ。それにそんな怖い顔じゃあ話したくても話せませんって」


 そんな彼の言葉に一瞬ムッとするも、何となく彼女自身も問題がありそうなことは理解しているのだろう。小さく、短く、咳払い。そして、再度フォリンへと向き直る。


「奴隷商を取り調べた。君に触れようとしたら目が潰れた(こうなった)、だそうだ。……一体何をした?」


 あの時のことを思い出す。フォリン自身は何もしていない。何も出来なかった。強いて言えば、これまでにないような不安を感じた。たったそれだけだった。故にフォリンは、自分の右手首を彼らに差し出してみせる。そこには、マルクから贈られた獣避けの腕環が嵌められていた。


「私は……何も出来ませんでした。けど、多分、これが」


 きらりと輝く腕環。コーエン青年が不思議そうな顔で見つめる横で、副隊長と呼ばれた女性は驚きから目を見開いている。


「……これは、杜人の」

「へっ? じゃ、これ、法力が込められて……?」


 女性の言葉に、今度はコーエン青年がひどく驚いた表情を見せた。愛嬌のある目が、大きく丸くなる。


「杜人の獣避け。装備者が危険を感じた時に力を発揮し、危機を回避する……成る程、あの輩は獣と同等か」


 はは、と笑いながら、女性は前髪を掻き上げた。さらりとした銀糸のような髪は、指先を滑ってすぐに重力に従って落ちていく。


「流石、上等な品だ。人間にも効くとはな」


 どこか自嘲気味な彼女の言葉を聞いてか、コーエン青年は複雑な表情を浮かべていた。女性の雰囲気から声をかける勇気が持てなかったフォリンは、遠慮がちに彼に声を掛けた。


「あの……私からも、質問、いいですか?」

「ん?何かな?」


 フォリンには、先程からずっと、気になっていたことがあった。その"形"を認識してから、ずっと聞きたかったこと。それを、思い切って訊ねる。


「お兄さん達は、本当に。本当、人間……ですよね?」

「……へ?」


 フォリンの質問に対し、彼女と同じ耳の形をしたコーエン青年はどんな態度をとったかというと。予想だにしていなかった問いかけを前に、残念ながら間の抜けた声を出すしか出来なかった。

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