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絶滅俯瞰  作者: 遒�。�
第二章 絢爛王都ディアデム
27/42

第二十六話 ××の中

 ガタゴト、ガタゴト。ガチャガチャ、ガチャガチャ。聞き慣れない音と共に、自分の身体が揺さぶられている。その少し不愉快な感覚に、フォリンは目を覚ました。


「ん……んむっ……?」


 身体が自由に動かないことに、すぐに気が付いた。両手足は縄で縛られ、その上口には布がかまされていた。猿轡というものだろう。手足を懸命に動かし、もがいてみるが縄も布も外れない。首に動きを制限する物が無いことに気付き辺りを見渡してみると、薄暗い闇の中でじっとしている他の人々の存在に気が付いた。皆俯いており、顔は見えない。

 状況が全く理解出来ていないフォリンだが、何とか身体を起こすことはできた。その時に立てた音と、人影が動いたことに気が付いたのか、フォリンから離れた場所で声がする。


「さっきのガキが目を覚ましたみたいですぜ」

「意外に早かったな」


 低い声だった。声がした方向には、鳥籠のような柵が見えた。鳥籠、とは言ったものの、その柵は比べ物にならない位に太い物である。しかし、フォリンはそれを"檻"と表現するのだという考えには至らなかった。逆光で、声を発する人物の顔は良く見えない。とにかく、そちらに視線を向けると眩しかった。


「こいつ、どの位の値が付きますかね?」

「金の髪、青い瞳、白い肌……珍しくも何ともねぇが、見目が良いからそこそこの値は付くだろう」

「まだガキだし、身体も貧相だが、仕込めばどうとでもならぁな」


 何か、相談事をしている様子だ。声の種類は三つ。三人の、それぞれ違う低い声がする。声は聞こえているものの、彼らの"相談事"の内容はフォリンにはよく分からなかった。こうした会話を、フォリンはこれまで聞いたことがなかった。故にそんな概念自体がフォリンにはなく。想像することもできないのだ。

 喋ることのできない無垢な少女が、人影を見上げる。フォリンにはただの人影にしかみえないが、その人影こと男達には、彼女の顔がよく見えていた。フォリンの知らない所で、男が口角を吊り上げる。


「少し確かめておくか」

「……?」


 ガチャガチャと音がして、檻が開けられる。男はゆっくりと中に入り、近付くと、フォリンの前に立った。ゆっくりと、男の手が伸びてくる。人が人に手を伸ばすことは、これといって珍しいことではない。マルクやミリア、老人達の手は優しかった。人の手には、漠然とした安心感をフォリンは覚えている。


 だが、何となく。ただ何となくだが、今日は良くないことが起こる予感がした。


 そんな彼女に呼応してか、獣避けが眩い光を放つ。


 視界が白む。反射的に目を瞑ったフォリンの前方から、短い悲鳴が上がる。ドタドタという音に目を開けると、今度は怒号が飛んできた。


「何しやがった、このガキ!」


 その罵声に思わず身を引いたが、フォリンには逃げ場が無い。じり、と後退りをする以外にできることが無い彼女の背に、冷や汗が流れる。

 そんな時、少し離れた所でどさりと誰かが倒れる音がした。それとほぼ時を同じくして、また違う声がフォリンの耳に届く。


「そういうお前は、何してやがる」


 鈍い音が響く。振り返る間も無く、目の前の男が倒された。一度に色々なことが起き過ぎたが故に、呆然とするしかないフォリン。ゆっくりと光のさす方向を見上げると、大分目も慣れて来たのだろうか。精悍な顔立ちの男が立っている様がはっきりと認識できた。


「さ、お嬢ちゃん。もう大丈夫だ」


 そうして差し出された手に対し、フォリンが危機感を抱くことは無く。彼女は静かに、彼の顔を見上げていた。

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