第十八話 見てくれ
「ところで、ミリア。ミテラへ連絡せんでもよいのか? 本来ならばお主らはとうに帰っておるはずじゃろう」
グリムの問いかけに、ミリアは「あ」と声を上げる。
「いっけない、忘れてた」
ミリアの言葉に、グリムはやれやれと溜め息を吐く。愛らしい瞳がじとり、と誤魔化し笑いを浮かべるミリアの顔を見つめている。
「……儂はいまだにお主とマルクが双子とは信じられん」
「えー、こんなに似てるのにぃ?」
「見てくれではのうて、内面じゃ内面!」
自身の顔を両手の人差し指で示すミリアに、グリムは呆れを隠さずに返した。ミリアの言うように外見はそっくり――マルクは隻眼ではあるのだが――な二人だが、グリムが言いたいところはそうではないからだ。二人が双子であることは確かな事実である。だが、そのあまりにも違い過ぎる性格が、外見上の特徴を遥かに凌駕して認識されてしまっているのだ。
「お主は、ほんに浅慮じゃ。フォリンの方がずっと大人びておるわ」
「えーっ……」
不服そうな声を上げたものの、ミリア自身も察したのだろう。グリムの弁は正しい。まだ十数年しか生きていないフォリンの方が、ミリアよりも思慮深く、落ち着いているのだから。それはきっと、マルクの施した教育によるところが大きいのだろう。
ミリアは頬を膨らませ、部屋の隅へと向かうと立てかけていた杖を手に取った。面白くなさそうな表情を浮かべながら、彼女はコツンと額を杖に当てる。そして、ミリアはぼそりと呟く。
「……いーもん。私、フォリンちゃんには法撃師として勝てるもん」
「当然じゃ、馬鹿め!」
ミリアの呟きと、それを聞いて即座に声を荒げるグリムにフォリンは苦笑した。少女にできることは、この場ではそれしかなかった。
コツン、コツン、と。ミリアの額と杖がぶつかる音がする。グリムは腕を組んでフォリンの隣に浮かびながら、ミリアへと声をかけた。
「何をしておる。早く声をかけんか」
「誰がいいかなって悩んでるの。急かさないでよ」
視線すら向けず、ミリアが述べる。そして、眉間の皺が一層深くなった時。一拍おいて、杖先が淡く発光し始めた。
「オルガでいいかな」
オルガ。その名はフォリンにとっても聞き慣れた名だ。ここ暫く顔を合わせていないな、とフォリンが思っていると、ミリアの杖先の光がその輝きを増した。




