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絶滅俯瞰  作者: 遒�。�
第一章 亡国王都ディアデム
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第九話 大人を困らせる子供

「エラー!?」

 フォリンの呟きにいち早く反応したのは、彼女と共に飛び退いたミリアだった。ミリアは飛び回る閃光を避けようと石畳に膝を付いているのだが、既に彼女の長い髪はそれの餌食となっていた。まるで浮遊法術を使っているかのように重力に逆らっているミリアの髪だが、その趣は今朝とは大分異なっている。それもそのはず、彼女の髪は光に引っ張られているのだから。

「クスクスクス……」

「キャハハハハ……」

 どこからともなく、子供の声が聞こえてくる。その発生源は、今彼らの周囲を飛び回る光――否、妖精だ。チカチカと明滅するモノ。激しい光を発するモノ。白、黄色、緑と色を変えるモノ。その種類は様々だが、一つだけ言えることがある。その全てが、異常をきたしているのだ。

 フォリンは一人門へと駆け寄ると、門柱に埋め込まれた鉄の板へ手を重ねた。ゼクト老爺の家にも備え付けられていたこの鉄の板の正体は、古代の人間が生み出した科学の結晶である妖精を操る為の制御盤だ。人間はこの制御盤を通じ、あらゆるモノを妖精を介して操っていたのだ。この門こと都市防衛機構もその一種であり、仕組み自体は同じものだった。

「フォリンちゃん! 私にくっついてるこれ、なんとかしてっ」

「やってます、やってますけど……全然、私のお願いを聞いてくれないんです!」

 いつもなら。妖精達はフォリンの言葉に耳を傾けてくれる。お願いを聞いて、扉を開けたり、結界の一部を解いたりもしてくれる。しかし、今の妖精達はどうも様子がおかしかった。

「門の妖精じゃ無いからってオチだったりしないわよね!?」

「多分ですけど、違います! 違うシステムでも、呼びかけに反応してくれるはずだし――」

 妖精の本来の役目は、人間を補助することだ。もしも異なるシステムを管理する妖精に声をかけたとしても、余程黎明期に造られた妖精で無い限り、彼らは正解の妖精の元へ誘ってくれるはずだった。

「もう、ちょっと! 何が目的なのぉ!?」

 ミリアの叫び声に、一瞬妖精の笑い声が止まった。彼女の髪にくっついていた妖精は一斉に髪から飛び立つと、今度はその頭上でぐるぐると旋回を始める。

「アハハーっ! かえっちゃうなんてつまーんなーい!」

「かえさないよーっ、だー」

「キャハハハハハハハハ!」

 甲高い笑い声と共に、妖精達は天へと飛び上がる。そしてその光は、四方八方へと飛散した。

「――まさか!」

 マルクの表情が引きつる。彼は妖精の後を追うべく、杖を身体の前で縦に構え、直ぐさま大地を突いた。浮遊法術の展開だ。ヒュン、という風切り音だけを残し、彼の身体は王都の上空へと飛び上がる。地平線を望めるほどの高さで上昇を止めたマルクは、眼下に広がる光景を見て絶句した。

 王都を取り囲む円状の城壁。今朝は朽ちかけた石のようにしか見えなかったはずのそれ。それが今はどうしたことか。不安を煽る光を湛え、この王都がかつて不夜城と称された頃のように煌めいている。その様に、マルクは言い知れない不気味さを感じたのだ。

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