夢を追いかけし者と諦めし者と
――翌日……
普段通りに会社へ通勤したが、なぜかいつもなら電車で会う伊川と会わなかった。
「デスクにもおらん、か……」
自分のデスクから周りを覗き込むように確認してみるがやはり伊川の姿はなく、おもわずどこ行ってん……なんて事を呟いていれば、上司に呼ばれて、しまいには資料を会議室まで運ぶよう言われた。
「……なんで俺に……」
今こんな事してる場合やないんやけどな。など愚痴をこぼしながら山積みされた資料を抱えて、会議室に向かっていた。
そして会議室に向かう途中にある自動販売機があるフロアに近付いてきた時
遠くから聞き覚えのある声が誰かと必死になりながら話している声が聞こえた。
この声、まさか……と資料を抱えたまま少し駆け足でしかし相手に気づかれないようにすぐそばの壁に姿を隠すように寄り掛かり、話に耳を傾けた。
「……だから、なんでやって聞いてんねん」
そこには伊川がいると分かったが、声だけ聞いても明らかに穏やかではない事が分かり、状況が気になってしまってしまい、少しだけ顔を壁から出して様子を見た。
すると伊川は誰かと電話しているのが見て分かった。
「ほんまにええんか?」
電話の相手に向かって深刻そうに問い掛けていた。
伊川のやつ、いったい誰と電話してんねん……伊川の様子を見ながら小さく呟いていると遠くから伊野部が呼ばれる
呼ばれて急いで壁に隠れて返事をする代わりに頭を下げた後
伊川にばれない内にその場を離れるように会議室に向かう道に戻った。
「絶対気付かれたよな……」
あーやってもうた。ため息を漏らして呟いていると会議室の前を通り過ぎようとしてしまい、慌てて引き返し会議室の扉を片手で開けて中に入った。
――あれから数十分後
「……はぁ……」
やっとの思いで会議室から自分のデスクに戻る事が出来、椅子に腰掛けると同時に深いため息を漏らして腕を上に上げて伸びた。
「あーあかん……」
もう昼前やん。壁に掛けられている時計を見て時間を確認したするとまたため息が漏れて、机に顔を伏せた。すると
「何さっきため息ばっかついてるんですか?」
先輩らしくない、と伊川が覗き込んでデスクを挟むように話しかけられて、顔を上げてみれば
「あー伊川やんか」
「疲れ切ってますねぇ」
「まぁ少しなぁ」
会議が長引いてもうてなぁと気だるそうにまた伸びをしながら答えると
「あのー、さっき兄さん俺が電話してる時にいました?」
「えっ?あー会議室に資料を届けに行く途中にお前の姿は、遠くから見たけど……まぁ会議室に行かなあかんかったから姿見ただけですぐ会議室行ったけど」
「じゃあ電話してるところとか、見てないって事ですか?」
「あー電話してたんや、でもなんで?」
本当は見ていたことは、あえて言わずに知らないふりして聞き返してみれば、少し焦ったように見てないんやったら良いんですと答えると十二時を告げるチャイムが鳴った。




