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ようこそ、心清堂へ  作者: みい
第一章/最終幕「悲しみの心その後」
23/40

あの丘の上にて






翌日あの丘の上に伊野部は訪れていた。

手には心清堂で貰った二つの小瓶を手にして……





墓の前まで来ると一つの小瓶を墓碑に置いて手を合わせた。


手を合わせた後

静かに顔を上げると



「どんな事があってもこれだけは、絶対に変わらんやろうな」

もう日常の一部になりつつあるし……と笑みを浮かべながら言って静かに立ち上がり、大きく伸びをした。



そして近くに植えられている木が目に入った。

すると木の木陰に人影が見えたような気がした。


木の方に歩みを進めて、木の下まで来ると静かに見上げた。


「この木も変わってへんな」

木を見上げながら呟いているとふと昔の記憶を思い出した。


「よく高校の時この木に二人で登ってたな……」

昔の記憶を思い出しながら、あの時みたいに少し飛んで登って太い枝に乗って風景を眺める


「たしかこうしてたら……」


「もうまたこんな所に登ってるんか!?」

下から俺に叫ぶ声が聞こえて、少し身体を乗り出して下を覗くとそこには……



「落ちて怪我したらどうすんねん、まぁ貴ちゃんらしいけど」

見上げて手を振りながら笑って言うのに対して


「だから貴ちゃん言うなって言うてるやろ!」

わざと怒ったような仕草を見せて枝から飛び降りた。そんな高くないから出来るんやけど……やっぱり昔みたいに身軽には出来ないなと伊野部は改めて実感する



「ええやんか貴ちゃんは貴ちゃんなんやから」


「まぁな……でもここに戻ってきてたんや」


「んー戻ってきたんかなぁ……」


「戻ってきたんちゃうんか?」

悩んだ様子で苦笑いを浮かべて呟く藤崎に伊野部が問い掛けてみれば、首を傾げながら少し悩むと


「ほんまは消える予定やったんやけど、気がついたらなぜかここ戻ってきててん」


「そうなんや……」


「多分またここで生活していけって事なんやろうなぁて……まぁ命日の前後一日と当日にしかこうして出てくる事出来へんみたいやけどな」


「それでも毎年ここに来ればまた話せるって事やろ?ならええやん」


「まぁたしかに……」

木に凭れて笑みを浮かべると藤崎は自分の墓に置かれている小瓶に目を向ける


「なぁ?」


「ん?」


「その小瓶……」


「あーあいつらに貰ってん、なんか記憶の宝玉?ってやつの欠片らしいけどな、あの店に来たら貰えるんやって」


「へぇーそうなんや」

藤崎は微笑んで聞いていると伊野部が手にしている小瓶も見つけ、中の石の色が違うのに気づくと色違いなんやなぁなんかカップルみたいと冗談混じりに笑いながら言った。


「何急にオカマみたいな事言うてんねん!きっしょ」


「あははっ、ええやんけ」


「分かってるわ」


「……また一年後やな」

急に寂しそうに言葉を溢すと伊野部も寂しそうな笑みを浮かべて、小さく頷く


「せやな……」


「でもこれからもここで貴ちゃんの年取った姿見れるって事やんか!まぁいつまで来てくれるんかは知らんけど」

木の幹に寄り掛かってため息を漏らすと貴ちゃん薄情者やからと付け加えた。


「薄情者で悪かったな」

不貞腐れたような表情で叩く仕草を見せると可笑しそうに笑いながら


「あーもう本気にすんなや!冗談やんか」


「今日は、冗談が多いな」


「たまにはええやん」


「まぁお前やから許すけど……」


「俺以外のやつやったら?」

そんなん決まってるやん、そう言って藤崎の顔の前で拳を止めるとニヤリとした笑みで


「当然一発そいつを殴る」


「あー怖っ……さすがヤク……」

拳を目の前にしても動じることなく冗談半分で言おうとしたのを伊野部が目付き悪くあぁ?なんて?と聞き返してやれば、すっとぼけた感じで返ってきた。


「なんでもございません」


「あーそう……」


「あっもうそろそろ戻らなくてええんか?日暮れてきてるけど……」

ふと風景に目線を移せば、地平線が夕日でうっすらと赤く染まりつつある空に目線を移して問い掛けてみれば


「んー……まだええわ、どうせ戻っても一人やし」


「えっ?たしか彼女おらんかったか?」


「あーおったけど、お前が死んだ後にすぐ別れた」


「ふーん……」

興味無さそうな相槌を打つ藤崎に呆れたように興味ないやろ正直と聞くと正直な話全くないとすぐに答えが返ってきた。

そして顔を見合わせるとまた笑い声を漏らした。

笑いながら凭れ掛かっている木をを見上げれば


「懐かしいわぁ、高校時代ようこうしてここで無駄に馬鹿騒ぎしてたな」


「たしかに無駄に馬鹿騒ぎしてたな」


「無駄にを強調せんでもええやろ」


「そっちが強調してたからそのまんま言うただけや」

藤崎は、笑いながら言うとずっと寄り掛かっていた木の幹から離れると小さくため息を漏らした。


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