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ようこそ、心清堂へ  作者: みい
第一章/第三幕「本当の悲しみに誘う真実の扉」
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過去との決別





二人が顔を見合わせていると

二人の胸が一瞬光った。


「記憶の宝玉が光った……」

店の奥でずっと二人の様子を見つめていた村井がふと目を閉じたまま小さく呟いた。


「えっ?」


「二人の胸の辺りが今光ったでしょ?過去と決別が出来たみたいだ」

嬉しそうに微笑んでまぁ記憶の宝玉と言っても渡すのは、欠片だけど……そう付け加えていた。そして目を開けてゆっくり立ち上がると店内のある場所に向かうために歩き出した。






――ほんまありがとな……


藤崎の声が頭の中で聞こえて、見直すと

徐々に姿が薄れていき、やがて目の前から姿が完全に消え、店には自分以外誰もいなかった。


「……………………………………」

行ってもうたか……誰もいなくなり一人きりなった空間を見据えたまま思っていると


「無事に行かれたみたいですね藤崎さん」

と店の奥から村井が姿を現わして、話しかけてきた。


「おん……」

村井の言葉に小さく頷くと目を微かに細めて笑みを浮かべてこれで過去と決別出来たんですねと言った。


「いつまでもあいつに弱い所見せてられへんからな、それにやっと気付いてん」

自分の事を恨んで傷付けても何の意味もないって事をなと日記を眺めながら付け加えて言った。



「その日記本当に捨てないで、持っているんですか?それを持っていたらあの時の出来事を忘れる事が出来ないと分かっていて……」


「たしかにこれを持ってたらずっとあの出来事が頭の中に付きまとうかもしれへん。けどな、今日久し振りにあいつと会って分かったわ、あの出来事は忘れたらあかんねん、たしかにあの時の出来事は、俺にとっても当然あいつにとっても色々あったけど、逆にあの出来事のおかげであいつのほんまの気持ちに気付く事が出来た」

だからその証として残しときたいんや、日記を村井に見せて微笑むとそう告げた。



「本当に吹っ切れたみたいですね、あの時の出来事から」


「おん、なんかありがとな」


「いえ、僕は何もしていません。あえて言えばあなたと藤崎さんを会わせるための手助けをしたぐらいです」

遠慮がちに否定しながらも笑みを浮かべてそう答えると


「……あいつもうあの丘の上におらんのやな」


「どうでしょうかね……」

伊野部の言葉に村井が独り言で一言呟くとえっ?と伊野部に聞き返されて、首を横に振りながらなんでもない、と答えた。


「いいえこっちの話です。あっ、藤崎さんがいなくなったからといって丘の上に行く事は、止めないで下さいね?」


「やめへんよ、そんなんやめる訳ないやろ、俺にとってあの丘の上に行くのは日課になってるからな。いわば生活の一つって事や」

村井の問い掛けに笑みを浮かべたまま答えて日記を鞄に入れた。

そして鞄をカウンターの椅子の上に置いて痛々しく巻かれている包帯に触れた。



「俺が今までやってきた事が間違ってたんやなってよう分かったわ」


「心に残った傷は、なかなかなくすのは難しいですが、身体に付いた傷は簡単に治ります。…………僕がそうだったようにね……」

右手首の包帯を見つめながら呟く村井は、最後だけは自分にしか聞こえないような声で囁くと一瞬だけ悲しそうな笑みを浮かべたが、すぐ表情が戻った。



「あっ、なんか食べていかれませんか?さすがに何も出さないって言うのは……一応喫茶店みたいな所でもありますし」

思い出したように苦笑いを浮かべて静かに尋ねた。


「あーたしかに昨日も食べずに帰ってもうたから頂くわ」


「ありがとうございます。あっお酒とか飲まれます?」


「んー……今日は、やめとくわ。この後ちょっと寄らなあかん所あるし」


「そうですか……じゃあ烏龍茶持ってきますね」


「おん」

そして村井は、店の奥に消えていった。

入れ替わりに伊野部が昨日最初に出会った男が出てきた。


「あっあんたたしか……」


「久し振りやなぁたしか昨日振りぐらいやんな、実は俺、この店のマスコットキャラクターの梶くんなんや。なーんて冗談は置いといて……ちょっと渡したい物があるんだけどええ?」


「渡したい物ですか?」


「おん、これなんやけど……」

目の前に差し出されたのは、青い石の欠片らしき物が入っている小さな小瓶


「なんですかこれ……」


「この店に来た人に記念として特別な御守りみたいなもんをその人に合わせて石と言うよりも宝玉に近いかもしれへん欠片を小さい小瓶に入れてて渡しててん」


「御守りですか……」


「この店に来た特別なその人だけにしか渡さない石やから、大切にしいな!あっなんか後日でも注文があったらネックレスとかほんまに御守りにも出来るけど……」


「……あの……この石って一つしかないんですか?」


「なんで?」


「もしもう一つあるんやったら……」


「同じ色の石やないけど用意は出来るで」

伊野部の言葉が終わる前に満面の笑みを浮かべて答えるとほらっと言いながらもう一方の手からもう一つの小瓶を取り出した。


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