悲しみの真実との再会
「やっぱこの時が来てもうたわ」
藤崎は自分の少し透けた身体を見て、苦笑いを浮かべながら呟いていた。
「お前もしかして……」
「もうそろそろ行かな、元々あの丘の上から離れたら消えてまうのは分かってたんやけど……」
「あの丘の上に……ずっとあの場所におったんか?」
「おん、だから貴ちゃんが毎年欠かさず墓参り来てくれてんの知ってんで」
「……そうなんや……」
「だから……お願いやから俺の分まで生きてな?こんなん頼むの友人やからな」
俺からの一生のお願いと手を合わせる藤崎の姿になんやねんそれとつっこんでしまった
「一生のお願いって……いつの間にそんな俺に頼み事出来るようなってん」
一生の前にもう死んでる一生のお願いとか使えんやろ、なんて言ってやると手を合わせたまま
「この姿になったからやで、この姿やったらなんか言うてもし殴られても全然痛ないし」
「なんや、それなら無理矢理にでも殴ってやろか?」
「もう冗談に決まってるやんか」
「分かってるわ!」
肩辺りを殴る仕草をする伊野部にわざとらしく痛がる素振りをすると堪えきれずに笑い出してしまう
伊野部も笑い出して二人の笑い声が店内に響き渡る
「あははっ……あーそうや、その日記見たんやったらもう処分してええから」
元々あんま見て欲しくないやつやったし、日記を指差すのに伊野部は不思議そうに首を傾げる
「お前何言うてんねん」
「えっ?」
伊野部の発言が訳分からないと言ったような表情を浮かべる藤崎を横目にカウンター席の机の上に置いていた日記を手に取り
「これは、俺が貰う」
そう言った瞬間
藤崎が驚いた表情を浮かべてえっ?とまた聞き返してきた。
「貰うって、俺の日記をか?」
「おん」
「なんで?」
そんな面白くもないただの日記やで?なんて不思議そうに聞いてくる藤崎に向かって笑みを浮かべる
「なんでって聞かれてもなぁ……別にええやん理由なんか」
日記を手にしたまま答えるとおかしそうに笑い出し、お前らしいわぁと笑いながら呟いていた。
「そんなん持っててもほんまにええ事ないと思うで?お前にとって」
「そんな事自分が一番分かってるわ、だけどな……どうしても置いときたいねん、自分の手に届く所に」
日記を手にとって表情緩ませたまま話を続ける
「お前のためやなくて、自分のこれからのためにな」
「これからのために……」
伊野部が言った言葉を小さな声で何回か繰り返し呟いた後に何か察したのかそうか、と静かに笑みを浮かべた。
「吹っ切れてくれたみたいやな」
「なんか日記を読んだら今までの自分がめっちゃ馬鹿馬鹿しく思えてきたわ、だから俺は昔みたいに自分らしく生きる事にしてん」
「そう言ってくれて良かったわ……」
本当に安心したように微笑み、これでやっと果たせなかった約束を果たす事出来たような気がするわと告げた。
「……じゃあもう行くわ」
その言葉を合図に身体の向こうの風景がうっすらと見え始めた事で、消えていくんやと直感的に分かった。
「行くしかないんか?」
「しゃーないやん、あの場所から離れてもうてるから、消える以外何の方法もない。多分やけど……」
「……そうか」
「もしかして俺がいなくなるって分かって寂しいんか?」
「んな訳ないやろ、アホか」
「そんな言わんでもええやんか、それにアホちゃうし」
そんな会話を交わした後
二人はふと目が合うとまた笑い合った。




