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百合色革命  作者: 水月さなぎ
百合色革命 第一部
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新しい友達は美少女なり!

 再び男装モード。


 本来の姿に学ランを着ているだけなので男装というのもおかしな話だが。


「それでは今年の王子と姫の登場です!」


 会場奥に用意された特設ステージらしき場所で、さらし者のごとく登場させられる俺(王子)と姫(男子校の優勝者)。


 男子校の姫は草薙斗織くさなぎとおるという名前だった。


 全体的に小柄て花車きゃしゃで、顔だちも整っていて、ふわふわの砂糖菓子みたいな女の子……じゃなくて男だった。


 たしかにこれなら女装が似合うだろう。


 というか絶妙に似合っている。


 あの二人に聞かせてやりたい。


 女装美少女というのは彼のような存在のためにあるのだと!


 しかし悲しいかな。


 あの二人は現在近くにはいない。


 男装姿の俺には全くこれっぽっちもミクロほども興味がないようだ。


 ……理解はしていても悲しすぎる事実だな。


「あの……」


 ほんのり落ち込んでいると、横から気弱そうな声がかけられる。


「え?」


 声をかけてきたのは草薙斗織だった。


 ぐあ……その上目遣いは反則的に可愛いぞ!


 さすが姫。


 男だと分かっていてもドキドキしてしまう。


 ……って待て待て。落ち着け。俺は佳崇たちとは違うんだって!


 女の子(百合を除く)が好きなんだってば!


「優勝おめでとうございます。その恰好、とても似合ってます」


「え……あ……その、どうもありがとう……」


 そして敬語だった。


 まあ一歳年下だからそんなもんかもしれないけど、なんか必要以上に余所余所しい感じがするなぁ。


 学生相手の先輩後輩かんけいなんて『~ですか』というよりは『~っす!』みたいなイメージが強いし。


「草薙さんもすごく可愛いよ。姫の名に相応しいくらいに」


「あ、ありがとうございます。ボク、本当は女装ってあんまり好きじゃないんですけど、でも褒められるとやっぱりうれしいです」


「あはは。まあ、健全だと思うよ」


 男で女装好きというのはただの変態だ。


「塔宮さんって、理事長の関係者なんですか?」


 いきなり話しかけてきたかと思ったら、それが気になっていたようだ。


 まあ、普通気になるよな。


 塔宮学園で塔宮の名前を持っているんだから。


 しかも理事長の娘として周知の存在である邑璃と違って、俺はいきなり湧いて出た新参者なのだから。


「関係者っていうより、理事長の道楽だと思う。私は一応、あの人の養子ってことになってるはずだから」


「そ、そうなんですか?」


「うん。実は結構不本意なんだけどね。まあ色々あって、仕方なく……みたいな?」


「はあ……何か被害者っぽい事情が垣間見えてくる雰囲気ですけど、聞かない方がいいですよね」


「うん。聞かないでくれるとすごく助かる」


「じゃあ聞きません。でも一つだけ教えてくれませんか?」


 そう言った斗織の目はすごく真剣だった。


「いいけど、何?」


「塔宮さんは……その、候補に入ってるんですか?」


「……最近よく聞くなあ、それ。生徒会長にも聞かれたし」


「ご、ごめんなさい。どうしても気になって……」


「なんで気になるの? 草薙さんには関係ないと思うんだけど」


「あ、えっと。ボクも一応候補の一人なんで」


「………………」


 ということはアレか?


 草薙家も塔宮家の分家筋ってことか?


 つーか展開的に塔宮繋がりが多すぎねえか!?


 それよりもアレだ。


 悊人氏といい、邑璃といい、咲来といい、斗織といい、あの血筋はなぜに美形揃いなのか?


 血筋なのか?


 美形一族なのか!?


 しかし塔宮学園の男装女装コンテスト両方で塔宮家の関係者が優勝を占めるというのは、微妙な不公平な感じがするなあ。


 不可抗力だけど。


「その点に関しては安心してくれていいよ。私と悊人氏はあくまでもギブ&テイクの関係だから。後継者問題には興味がないし、本音を言えば塔宮家そのものにも興味はないの。契約を果たせば私は塔宮家とはかかわりを断つつもりだし」


「そ、そうなんですか?」


「うん。だから安心して後継者でも当主でも狙えばいいと思うよ」


「……何かそれって微妙に嫌味っぽく聞こえるんですけど」


「まあ、そう意識したつもりだし」


「………………」


「ただでさえ色々うんざりしているのに、これ以上面倒な事情に巻き込まれるのは迷惑だって言ってるの」


「ご、ごめんなさい……そんなつもりじゃなかったんですけど……」


「じゃあどういうつもり?」


 俺が冷めた目を向けると、斗織は小柄な体をさらに小さくした。


 なんかビクビクしてる。


 小動物を虐めているような気分になって、正直ちょっと罪悪感。


「こ、候補じゃなかったら、友達になってくれないかなって思って……」


「友達……?」


「その、せっかくこういう場で会えたんだし、仲良くしてくれると嬉しい、というか……」


「………………」


 あれ?


 もしかして俺の勘違いか?


 候補だったらどうこうっていうのは、アレか?


 候補だったらライバルだと思われて仲良くなれないけど、候補じゃなかったら安心して友達になってくれって言えるから、みたいな?


「あの……確認するけど、もしかして後継者争いにあんまり積極的じゃなかったりするわけ?」


「え? あの……その……初めからボクなんかがなれるなんて思ってないです。ボクはほかの人と違ってそこまで優秀じゃないし。目立った特技とかもないし……」


「………………」


 可哀想になるくらい自分に自信がない少年だった。


 今は美少女の姿だけど。


 誤解から傷つけてしまった罪悪感も手伝って、俺は斗織の提案に対して前向きな気持ちになっていた。


「いいよ」


「え!?」


「だから、いいよ。友達になろう。斗織って呼んでもいい? 私の方も棗生って呼んでくれていいから」


「え、あのっ、そのっ、な、棗生さん……い、いいんですか?」


「棗生でいいって」


「あ……う……」


 おろおろはらはらしている様子もやっぱり可愛く見えてしまう。


 ……男なのに。


「じゃあこれからよろしく、斗織」


「は、はい。よろしくお願いします。棗生さん……」


 こうして、俺は草薙斗織と友人になったのだった。









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