お友達から始めましょう的な? 05
「はっはっは。お久しぶりだね棗生君」
「………………」
押し込められた車の中で待っていたのは、塔宮悊人氏だった。
「それとも今は棗生ちゃんと呼ぶべきかな?」
「………………」
「おやおや、どうしたんだい? そんな怖い顔で睨んできて。私は君を怒らせる様なことを何かしたかな?」
「………………」
「それとも久し振りにパパりんに会えて感動している最中なのかな?」
「………………」
「………………」(俺)
「………………」(悊人氏)
「………………」(俺)
「………………」(悊人氏)
「……あの~、構ってくれないとちょっと寂しかったりするんだけど……」
根負けしたのは悊人氏の方だった。
「……何の用ですか」
「え? 父親が休日に可愛い息子に会いに来るのがそんなに意外かな?」
「拷問のような女子校空間で一週間を乗り切った青少年の唯一の息抜きを邪魔してまで言う台詞がそれか!」
つーか誰がパパりんだ!
「酷いな~。一週間頑張った棗生くんを労ってあげようと時間を割いているのに」
「いらねえっ! 今すぐ俺を解放しろ!」
「ところでお腹は空いていないかい? 朝食はまだだろう? 一緒に食べないか?」
「食べない! あんたと食べるくらいならコンビニのおにぎりでも食った方がマシだ!」
「それは残念だ。特別に十兵衛を貸切予約しているのに」
「!?」
そ、その名前は……!
「じゅ、じゅうべえって……あの十兵衛……?」
「その十兵衛だよ。芸能人御用達だったり、政治家が国民の血税で高級寿司を貪り食う、あの有名寿司店だ」
「あ……朝からそんなとこ開いてんのかよ……?」
「だから貸切だと言っただろう? あそこの店長とは知り合いでね。多少の無茶なら聞いてくれるのさ」
「あう……」
十兵衛……。
一度は行ってみたいお寿司屋さん。
庶民にはちょっと、いやだいぶ敷居の高いお値段設定。
ホテルでもないのに部屋料までかかる場合がある。
しかもその場合、部屋ごとに一人の板前さんがついてくる。
まさに専用空間!
噂では出張サービスまでしてくれるとか……。
そんな上流階級御用達なお寿司屋さんに、これから!?
しかも貸切!?
「どうするどうする?」
俺の葛藤を楽しそうに眺めながら、悊人氏は聞いてくる。
悊人氏と朝食なんてまっぴら御免だが、十兵衛には行ってみたい。
しかも貸切ということは、今日のために、つまり俺との朝食のためにそれなりに手を尽くしてくれたのだろう。
それをあっさり断るのも何だか気が引ける。
なのでせめてもの抵抗として……
「お、大トロ食いまくるからな!」
と、言っておいた。
「胃薬が必要になるくらい食べてくれて構わないよ」
「………………」
さすが塔宮グループ総帥。この程度のことではびくともしないらしい。




