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設置は忙しい

朝の設置で4軒、材料を取りに行ってから10軒で、依頼を受けてから14軒の畑に設置出来た。


僕が設置していると、これから設置しなければいけない畑の持ち主が手伝ってくれるようになり設置時間が短縮されて予定より多くの畑に設置出来た。


今は材料を取りに畑から街に戻るところで、違う農家のおじさんにお芋を貰って歩きながら食べている。


片手は大きな荷車を引いている。この荷車に大樽は6個までしか載らないが、農家の方で用意して貰ってる、最初に2個持って来てからは街から持って来てない。


「今更だけどクエをあんなに受ける必要があったのかな」


前世を思い出すな、効率を考えて同じ事を一遍にやろうとしてた。


失敗した事では本を沢山持って落とすとか、土を運ぶのに軽い方が楽なのに持てないほどに山盛りになった大きめのバケツ。落とした事ばかりだ。これが大人ならやりきれないほどの仕事を受けるかな。


門が見えてきた。お昼も歩きながら食べたし、夜まで半分ぐらいは終わらせたいな。




「また来ましたよ。出来てますか?」


工房の親方が来てくれた。


「あらかた終わってる、手が空いてる者は荷車に運んでやれ」


「分かりました」


「どうだ仕事が早いだろ」


「はい、ありがとう。お任せしてよかったです」


「嬉しいね、他には無いのか依頼は?」


「今のところ頼んである物が完成すれば終わりです」


親方が残念そうだ。


「はあ~、仕事が欲しい」


「どうかされたんですか?」


「大きい街だから仕事がぷっと切れる時があるんだが長く続くと困るんだよ」


「そうですか、大きい街だといくらでも仕事がありそうに思えるのに」


親方は苦笑いをして「大きい街だから同業者も多いんだ、仕事が取られないかと心配が尽きないんだ」


そうか、この問題は難しいな。バランスなんて取れるものじゃないよな。


「では、今貰ったのが全て使い終わったら、残りを取りに来ますね」


「おう、今日中には出来るから朝には残りを渡せるぞ」


運んでくれたお礼を言って他の工房と材料を受け取りに向かう。




市場の露店でネズミの餌と芋のお礼に焼き菓子を買う。


「沢山買ってくれるのは嬉しいんだけど、全部食べてるの?」


「秘密で話せないんですが、餌なんですよ」


ここでネズミの事は話さない。エチケットだ、食べ物屋さんだしね。


「餌ね、これからも買いに来てくれるの?」


「いえ、おそらくもう来ないと思います」


「それは残念、仕入れ増やさなくて良かったわ」


ああそうか、沢山買うお客がついたら仕入れも増やさないといけないもんな。


「ありがとうございました」


「また欲しいのがあったら来ておくれよ」


「分かりました」


餌も買い、全ての材料が沢山揃ったので、門に向かって歩き出す。


「おい、いたか?」


「いません、声が聞こえたのに」


「他の者はどうした?」


「他の場所を探してるんだと思います」


話し声が聞こえて、その人たちを見ると騎士かな、分からないけど、誰かを探しいるみたいだ。


街の治安を守っているのかな、お勤めご苦労~。


僕も頑張らないと、畑の被害を更に少なくするにはなるべく一斉に罠を設置した方が効果が上がる。


僕が受けたネズミの討伐クエは、西と北の農村からの依頼でみんなで相談して依頼したのでほぼ全ての畑に罠を仕掛ける事になっていた。


西の農村から始めて北の農村全てを明日一杯で終わらせたい。




「お疲れ様、どうだ夜、家に泊らないか?」


「いいんですか、僕は助かりますけど」


「昨日、うちらの誰かの家に泊ったんだろ、それなら家に泊れば続きを起きたら出来るぞ」


「そうですね、泊る所探さなくて良くなりました」


おじさんに案内されて家に着くと。


「待ってたわよ、食事も出来てる」


既に奥さんに話してあった様で、僕の分の食事も用意されてた。


入り口の近くのテーブルにスープとパンそれと定番の茹でた芋が用意されている。


それぞれが椅子に座る。


「お疲れ様、どうぞ食べて下さい」


「ありがとうございます。いただきます」


まず、スープを飲む、いろいろ野菜の入ったスープだ。


パンはちょっと固くなってきている。


「あの樽でネズミが捕れるんだな」


あの光景を思い出してしまうがしょうがない。


「はい、ネズミは夜行性なので朝には捕れてると思います」


「そうか、楽しみだな」


あれを見て楽しみだとは言えない。


「そんなにネズミの被害が出てるんですか?」


「畑の半分ぐらいはネズミの被害だと思ってる」


半分の作物がネズミに食べられたのか、この辺の農家みんなが同じだとすると王都の作物の販売は2倍~3倍位の値段で売られてる事になる。


「もしかしたら、最初に発芽した時はすごい被害だったんじゃないですか?」


「なんでわかるんだ、全滅だよ。やっと育ったのに今度はネズミにやられるとは」


おじさんは、食べる手を止めてハァ~とため息をはく。


「ネズミは発芽した葉を食べるのが好きなんです、ネズミが減れば最初の被害も減りますよ」


「ええ、最初の被害もネズミが食べたからなのか?」


「そうだと思いますけど、違うかもしれません。でも発芽後の若い葉を食べるのは好きなはずなのでネズミによる被害が出てるはずです」


おじさんは考え込み、うんうん唸ってる。


考えがまとまったのか話し出す。


「前からあった被害がネズミが原因なら、王都の周り全体に出ていた被害はネズミのせいで・・・」


「あなた、取り敢えず明日になればネズミが何匹か捕まるから被害が減るわよ」


何匹か?もしあの村みたいだったらそんな少ない数ではない様な、明日になれば分かるか。


「しかし、君はよくあんな事を思いついたな」


「知り合いに教えて貰ったんです」


「いい知り合いを持ったね」


「そうですね」


元ネタはお金をかけたくなかったので、ネットで自作で検索して作ってみたんだよな。


おじいさんは言いました。真似は大事だがそこから発展した便利さを考えなさいと。


すいません。完全に真似だけです。


食事が終わってのんびりと雑談をしていたら、思い出した。


「これ、食事と泊めてくれるお礼です。街で売ってた焼き菓子です」


奥さんが焼き菓子に反応した。


「まあ、嬉しいわ、食べてみたいと思ってたのよ」


「なんだ、それぐらい買ってくればいいだろ」


「贅沢は敵なのよ」


喜んで貰えてよかった。





「きゃ~」「きゃ~」「きゃ~」「きゃ~」「きゃ~」「きゃ~」「きゃ~」「きゃ~」「きゃ~」


朝からにぎやかだ。僕は日が昇るとすぐに設置し始めたが、昨日の内に設置した罠を覗きに行ったであろう、奥様方の悲鳴が聞こえてくる。


一緒に聞こえて来てるわけではないが、他の人の話し声や周りの音が聞こえてこないので、「きゃ~」が間が空いているが連続はしている。


今日中には設置は終わらせるぞ。お~。


「君、ネズミの数を数えたいから来てくれないか」


ついに来てしまったか、この時が。


「数えてくれたんですか?」


数えて確認とかなら、いいですよその数でといえるけど・・・


大樽の前でやっぱり数えてないよな。


「おじさんが数えてくれませんか?」


「ほら、私が誤魔化すと悪いだろ、ここは君に任せるよ」


仕方がないので、中を覗き込む。うわ~、前の時よりも数が多いぞ。


あの時は近所の子供が数えて1個の樽に200はいたんだけどそれよりも多いのか。


「150匹ぐらい位にしときませんか?」


「そんなにいるかな・・」


「その前回、同じ物でネズミを捕まえた事は話したと思いますが、200匹はいたんですが、今回はそれよりも多くネズミがいるんですよ。僕は数えるのが嫌なので150匹でいいと思いますが、そんなにいないと思うのでしたら、おじさんが数えた方がいいですよ。誤魔化すといけないので」


おじさんは困っている、それはそうだ。数えないで150匹と言われても困るだろう。


おじさんの後ろに違う畑のおじさんが来てる。


大樽の中を覗き込み、「おらんとこより沢山いそうだな」と言った。


「おはようございます、そのネズミの数は数えたんですか?」


「嬉しくて数えたさ~」


嬉しい人もいるんだな。それに気持ち悪くないんだな。


「その何匹いたのか教えて頂けますか?」


「おらんとこもまけてくれるか?」


「大樽1個で150匹でいいですか?」


おじさんが飛び跳ねた。万歳か?


「いいのか、約束は守れよ」


「分かりました、数を教えてください」


「全部で1438匹いたぞ」


僕とネズミの数で交渉していたおじさんは黙り込む。


黙り込んだおじさんは、咳払いをして「150匹にうちもしてくれ」と言った。


僕はすぐに承諾した。だって1438匹よりも確実に多いのに数えるなんて考えるだけでも嫌だ。


「おじさんにお願いがあります、他の農家の人に数えるのが僕が嫌なので150匹にしてくださいとお願いしてると話して貰えませんか?その時に数えた人の話もして貰えると嬉しいです」


僕が提案してお願いしていると1438匹のおじさんが嬉しそうに言いました。


「おら、この樽のネズミ数えてみたいけどいいか?」


僕は1438匹のおじさんではないおじさんに目を向けると苦笑いをしている。


「数えてもいいですよ。でもみなさん150匹にが上限ですからそれよりも少なければその数にします」


僕の話を聞いて安心するおじさんは言った。


「参考までに家のネズミの数を知りたいので数えて頂けますか?」


「すぐに数えるからな」


その言葉にここに居てはいけないと思い行動する。


「僕は、まだ設置が終わってない農家に行きますね。後でおじさんの家に行きますので、この依頼書に150匹×4樽の合計の600匹と書いて完了の署名を皆にお願いしてください、まだ設置の終わってない農家は僕が行きます」


「分かったよ、家はあの家だから取りに来てくれ」


「お願いします」




昨日、揃った材料を全部設置し終わったので、クエの依頼書を取りに行った。


「こんにちは、依頼書を取りに来ました」


「君か、みんな喜んでいたよ。まけて貰えたのと、ネズミがあんなに沢山捕れたから、これで被害が少なくなると喜んでいた」


「僕も嬉しいですよ、あのネズミを数えなくていいと思うと」


「そうだな、さっきはごめんよ。あんなにいるとは思ってなかったんだ」


「いいですよ、数えたくない僕の提案が余計な不信感を与えたんですから」


「そう言って貰えると助かる」


「でも、数えたいおじさんがいるとは思いませんでしたよ」


「それがな、ほとんどの者が数えたんだよ。数えたくなかったのは僕と君と各家の奥さんかも知れないな」


そうなんだ、この世界の人は凄いな、貧弱一号が僕なのかな。


「私が預かっていた53枚の依頼書だ、600匹と完了の署名を書いて貰ってるから」


凄いぞ、83件の依頼のうちの53件が終わったのか。


「そうだ、説明がまだ足りてなかった」


おじさんは警戒する、まだ何かあるのかと。


「今回のネズミ討伐クエで設置したあの大樽とか罠はあのまま置いといて下さい。ネズミは警戒心が強いのでもしかしたら今日よりも後日の方が捕まる可能性もあるので、たまに餌を罠にセットしてください」


「そうか、分かった、あのまま置いとけばいいのなら、安く済んだんだな」


「そうですよ、毎年使えるから凄く安いんですよ」


おじさんは、毎年か~とつぶやいて、やった~と言った。

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