何でこうなった
「えっと、聞き間違えでなければ依頼が53件終わったんですよね?」
「見て頂ければわかる様に完了の署名も頂いてます。カードに入金お願いします」
まだ信じられないのか、カードを受け取らないで何回も依頼書をパラパラとめくって見ている。
「はい、カード預かりますね」
渡されたカードを持って話し出す職員のおねえさん。
「聞いてもいいですか?」
「はい、なんですか」
「どうやって、こんなに早く依頼を達成出来たんですか?」
「そこは企業秘密です」
入金の処理をして。
「はあ、そうですよね。ありがとうございました、カードお返しします」
カードが返されてギルドを出ると、最後の材料を取りに行く。
「親方、出来てますか?」
「出来てるぞ、みんな手伝え」
手伝ってくれた皆さんと親方にお礼を言って、次に行く。
材料が揃い、市場の露店で買った干し肉にかぶりつく。
噛めば噛むほどに旨味を感じるな、子供の時に食べたビーフジャーキーを思い出す。
前世で食べたけど、食事として食べたてはいないよな。大人は酒のつまみに食べてた。
海外旅行で誰かが買って来て学校に持って来てた、袋にはどこかの言葉が書いてあった。
今日も街に兵隊さんが、忙しそうだな。でもよく見かけるようになったな。
もしやパーティがあるから警戒中なのかも。
「それにしても君、干し肉しか買わないね」
僕は胸を張って言う。
「冒険者ですから」
干し肉を3日分買って農家に向かう。
「ありがとう、これ依頼書」
最後の1枚を受け取った。
昨日の夜に罠の準備が終わり、ネズミの討伐クエが今終わった。
荷車を返して、冒険ギルドに依頼書を持って行く。
掲示板には沢山の依頼書が貼ってある。
王都の掲示板は4個もある。ここで他の冒険者にあまり会わない。朝に来た事が無いから会う事も無いのかもしれない。
「すいません、これでネズミの討伐クエは終わりました」
いつもの女性職員が困った顔をして。
「ご苦労様でした。依頼書出して貰えますか」
僕は残りの30枚を渡す。これで本当に終わったんだ。
確認が終わり、入金の為にカードを渡す。
「少々お待ち下さい」
大した事はしてないが、疲れたな。そろそろ冒険者みたいな事がしたいな。
忘れていた、冒険者ならドラゴンの事を調べないと。
図書館は無いから・・・誰に聞けばいいんだ。
300年は見たとの情報がないと侯爵様が言ってたから、今生きてる人は知ってるはずがない。
僕が依頼を出しても偽情報しかなさそうだし、異世界なんだから500歳の人間とかいないのか。
人間の寿命は何歳なんだろうか。ドラゴンの血液を飲むと寿命が延びるとか・・寿命が延びても意味がない。知っていなけらば。
あれ、遅いなどうしたんだろう。
掲示板の方から何か音が聞こえる。
「バサ、バサ、バサ」
何をしてる音かな、掲示板を見ると、あの職員さんが依頼書をはがしてる。
僕のカードはどうしたのだろうか。
急いではがしてるけど、何かミスでもあったのかな。
「ハァ、ハァ」
お疲れの職員さんは息を整えてカードをこちらに出してくれた。
僕がカードを受け取ろうと手を出してカードを取ると、職員さんは僕の手をがっしりとつかむ。
「え・・・・」
僕が驚いていると、職員さんは手を放しカウンターに紙の束をのせる。
「お願いです、受けて下さい」
受けて下さい?ついに来ました。
「僕は子供であなたを養う事は出来ません」
きっぱりと言ってやった。この手の女性には甘くしてはいけないのだ。
母さんを見て僕は学習しているんだぞ。
「違います、この依頼を全部受けて下さい、君なら出来ます。少し多くなりましたが」
最後の少し多くなりましたが小声だけどなんでだ。
「だから、受けて下さい」
僕の前に突き出された束の1枚を取って見る。
依頼書?・・ネズミの討伐クエ。東の農民からの依頼。
東の・・・僕が今まで受けてた依頼は西に北。
東も依頼してきたのか。
僕は束を取り、速読する。出来ないけど沢山あるのが分かる。
「あのこの依頼の束は全てネズミの討伐のクエですか?」
「そうです、全部受けてください。全部で146枚あります」
146枚・・・・・・何でこうなるんだ。
「あの説明をして貰えませんか」
「はい、西と北の農家の人達の依頼を受けてくれて、ありがとうございました。完了した農家から東と南の農家の人が話を聞いたのかもしれません。それで罠の設置が有効なのを聞いたので依頼したいと思ったのかもしれません。今日のお昼頃から依頼が次から次と持ち込まれ全部で146枚になったんです。ギルドとしましても今までは誰か受けてくれないかな程度で依頼を掲示してたんですけど、誰も受けてくれないクエなんです」
「ハァ~」
「君なら出来る、146件なんか簡単です。さあ受けてください」
説明を聞くと効果が凄いから、うちもしてほしいと146件申し込まれた。
どうすればいいんだ。確かに一遍だが数が多すぎるかも知れない。どうする冒険者として頼まれた依頼を断れるのか・・・・無理だ僕はお人好しなんだ。
しかし、これは嬉しいかもしれないな。2度とこの街でネズミのクエを依頼される事が無くなる。
あの大軍を孔明様でも見る事を拒むはずだ。もう見たくないが仕方ない。
「分かりました、条件があります」
「いいわ、言ってみてくれる」
「この条件が呑めなければ、僕は絶対に依頼を受けません」
職員さんはどうぞ早く言いなさいと顔に書いてある。キリッとした顔になって僕が条件を言うのを待っている。
「まず、全ての農家がネズミ討伐クエを依頼してくる事、これは僕のやる気が続かないから二度と申し込むなという事です。依頼されてない農家に交渉するのはギルドの仕事にしてください。これが条件1です。どうですか?」
職員さんはいきなり困り顔。
「待って、ギルマスに話してくる」
そうか、あの人に権限がないか。
怖そうなおじさんが来た。
「話は聞いた、条件1を呑もう。次からの条件を私もここで聞く」
「分かりました。条件2は、今までの経験で依頼のネズミ討伐クエで罠に捕まるネズミは凄く多いです。少なかった時はありません、そこで大樽に300匹以上入るところを150匹と決めたいと思います。これは農家の皆さんも得するけど、僕にも数えたくない見たくないと双方に利益になると思います。農家1軒で600匹の報酬を約束してほしいです。もし数えるならギルドの職員が全部数えてください。数える労働力を考えるとギルドにも僕の条件にした方がお得だと思います。これが条件2です」
「150匹とは大袈裟だと思うのだが」
ギルマスが、僕を疑り言い出す。
「同じ事を言った農家の人がいましたが、そこに数えるのが好きな他の農家の人が数えた数を教えてくれました。1438匹でした。樽1個に約330匹いた事になります。おじさんはここの大樽の中のネズミは家の大樽より入ってると言ってました。150匹は破格です。数えますか?」
ギルマスは考えて、直ぐに答える。
「分かった、条件2も呑もう」
それはそうだろうな。
「条件3これは簡単です。期限を無期限にしてください。元々ネズミ討伐クエは期限は無いが急いでほしいと言われましたが、条件1で何件増えるか分かりませんし、材料の加工に調達に時間がかかります。無期限ではなく僕の都合みたいになると思います。条件3は時間を少しくださいですね」
「それはあたり前だ。条件を呑もう。農家に今の条件で断られる事は無いと思うので準備を始めてくれ、ギルドはまだ依頼してない農家の確認と依頼の申請を出して貰う様にする」
僕は依頼の束を持って、やばいぞと気がつく。そもそもローランドの近くに農家は何軒あるんだ。
そして依頼を出してない農家は何軒あるんだ。北と西が終わったと思ったけど、他にはないのか。
おじいちゃん一遍にやりすぎてしまいました。
まあいいか、パーティまで20日以上あるから余裕だ。
「僕は、準備に向かいます。3日後にまた来ます。材料が揃ったらすぐに始めますので、他の依頼は3日後に来た時に渡してください」
「分かった、よろしく頼む。相談にはのるから、いつでも来てくれ」
「では、3日後に」
「親方はいませんか?」
僕は職人さんの一人に声をかけ親方を読んでもらう。
「呼んで来ます」
「おう、どうしたんだ」
「親方、追加で作って貰う事出来ますか?」
「おお、仕事か何個でも受けるぞ、それで何個だ」
僕は考える。そうだ何個頼むか決めてなかった。確か他の工房では他に仕事が入ったと言ってたから、やって貰えるところは前よりも少なくなる。
「そうですね、300個お願いします」
「え・・・・300個。30個か?」
「300個作れますか?期限はありません5日後までに100個出来てれば嬉しいです。」
「100個なら余裕で出来るぞ。全部で300個なんだな」
「そうです。後相談なんですが、出来たのを東と南の農家に届けてくれませんか?数が多いので僕だけでは運びきれないんです。それに工房で預かるのは大変だと思うので邪魔だなと思ったら農家に収めてください」
「それもいいな、邪魔になるまで作って、農家に納品してまた作る。分かった、その仕事受ける。他は頼んできたのか?」
「これからです、先ずは親方に話さないと先に進めません」
「嬉しい事を言ってくれるね。料金はいつごろ貰えるんだ?」
「今全部払います。お願いします」
僕はカードを親方に渡して支払いをお願いする。
「おい、いいのか?普通後払いだぞ」
「一度お願いしているので問題ないです」
「ありがとう、また忙しくなる」
僕はカードを受け取る。
「では、他に行きますね」
「そうだな、頑張れよ」
「行ってきます」
「300個ですか?」
「はい、300個です。それでまとめてではなくて、入り次第買いたいと思います。最終的に300個買います」
「分かりました、全部で300個をどんどん仕入れます」
「最後の工程で使うので、急ぎませんが300個作って下さい」
「分かりました、その依頼受けます」
「ありがとうございます。後日取りに伺います」
「おばさん、こないだの秘密の餌300個7日後に買いに来るので、用意出来ますか?」
「嬉しいね、仕入れとくよ。価格はこの前と同じでいいのかい?」
「いいよ、大量に売っても作業は変わらないでしょ」
「そうだけど、沢山買うと値切るのが普通だからさ」
「僕は値切るのが面倒なんだ」
「そんな人ばかりだと利益が増えるんだけどね」
「7日後だけど大丈夫?」
「大丈夫だよ。ありがとう」
おばさんが嬉しそう。
「はい、カード」
「ちょっと待っておくれ」
おばさんが手続きをしてくれる。
「おまたせ、7日後までには仕入れとくから、来ておくれよ」
「はい、わかりました」




