ドラゴン祭り
「ローランド王国のみなさん、今日はドラゴン祭りですが、ドラゴンのみなさんはまだいません」
お城の城壁の門を通って沢山の街の人が、中庭に集まっている。城壁の外にある橋にも沢山の人が並んでいるんだろう、お祭りはまだ始まっていない、進行役の侯爵様がお城のバルコニーから、集まっているみんなに語りかけている。
「スタンビートの魔物の暴走を止める事が出来ました、騎士団、冒険者、ドラゴンの皆さん、みんなの協力で何とか魔物を南に追いやる事が出来ました。その後に起きた、空から落ちて来た岩も奇跡的に防ぐ事が出来ました。これからもローランド王国の全ての者を守るために国王様は頑張って下さります、国王様お願いします」
「みな、難しい話は抜きだ、これよりドラゴン祭りを始める、ドラゴンのみなさんに来て貰おう」
ドラゴン祭りに来た人達は、街のいたる所に立ててあった案内板を見て来たのだ。案内板には、ドランゴに会える、ドラゴンに食べ物をあげれる、ラム酒をあげれる、ドラゴンと会話ができると書いてある。
国王様は後ろに控えていた者から、鱗を1枚ずつ渡されて7枚になると手を上げた。
「ドラゴンの皆さん、ドラゴン祭りです。お集まり下さい」
国王様の持っている鱗が光りだした、集まっている全ての人達が驚いている。
「凄い、光だ」「何で光っているんだ」「眩しい」「光が弾けたぞ」「光の糸?」
光が拡散されて消えると7本の光の糸が色々な方向に向かって伸びている。
「僕は、ブラックドラゴン、ブラック君と呼んで下さい」
一番近いブラック君が来たようだ。
「おお、本当にドラゴンが来たぞ」「大きいぞ」「ドラゴンが話したぞ」「会話が出来るぞ」
「こんにちは、ホワイトドラゴンのシュラよ、ラム酒を頂戴ね」
「よく来てくれた。ブラック君にシュラさん、我が城の中庭に印がしてある場所に降りて下さい」
「ここね、ブラック君はあそこよ」
「我はドラドラなのじゃ、お祭りは楽しいのじゃ」
それからも光の糸に導かれてドラゴンさん達は集まって来る、レッドちゃんは最初から中庭に居たけど誰も気が付いていない。
「皆、お祭りを楽しむのだ」
国王様がバルコニーからお城の中に入った。
「国王様の挨拶とドラゴンさん達を呼ぶ事が出来た、皆楽しんでくれ」
侯爵様もお城の中に戻って行った。さあ、お祭りの始まりだ。
「ドラゴンさんにあげるハンバーグ、銅貨2枚だよ」
「ラム酒をあげたい人、売り場はここだよ。銅貨1枚だ」
「ハンバーグを買った人は、あげたいドラゴンさんの所に進んで下さい」
中庭には屋台が並んでいて、そこでハンバーグとラム酒が販売されているので、お祭りに参加しいる人が購入して、気に入ったドラゴンさんにあげるのだ、ハンバーグには購入者も食べれるように小さいハンバーグが付いている。
「ハンバーグ下さい」
「大きいのがドラゴンさん用、小さいのは貴女が食べてね」
「小さい方は私が食べていいんだ」
シュラさん達には小さすぎるハンバーグだけど、沢山のお客さんがあげれば凄い量を食べる事になる。
「ラム酒を下さい」
「はいよ、ラム酒はシュラさん、ボーンさん、ふうちゃん、スイスイさんにあげて下さい。飲みたくて待っているよ」
ラム酒を飲まないブラック君とドラドラさんには近くに水入りの大樽を沢山置いてある、その水はあげたい人が汲んでブラック君とドラドラさんにあげる。
「ハンバーグとラム酒下さい」
「セットだと銅貨2枚と小銅貨5枚だよ」
僕の考えたドラゴン祭りは、お祭りに参加したお客さんがハンバーグとラム酒を買って、それをシュラさん達に自らの手であげる、食べているのを見たり、会話をして楽しんで貰う事だ。シュラさん達にあげたハンバーグのサイズの小さいハンバーグを一緒に食べる事が出来る、同じ物を食べて喜んでもらうためだ。それにあげた食べ物の味が気になる筈だ。
変なお祭りだけど僕は楽しい、屋台でハンバーグを売ってくれているのは貴族様達で、そのハンバーグを焼いているのは、お城の厨房の人達だ。
「美味しい、やっぱりハンバーグは少し焦げているのがいい」
ふうちゃんは、味の分かるドラゴンさんだ、他の皆も美味しいと言っていたけど焼き方にこだわっているのはふうちゃんだけだ。
「そうですね、美味しいです。私は初めて食べました、ふうちゃんは食べた事があるんですね」
「うん、少し前に初めて食べたのよ、こんなに美味しい食べ物があるなんて人間ていいわよね」
「普段は何食べているんですか?」
「私達ドラゴンは食べなくても大丈夫なのよ、だから、ほとんど食べないのよ」
「お代わり食べます?」
「それはダメよ、ほら他の人が買ってくれるから、ほら、あそこでお土産を配っているのよ、美味しい肉丸だって」
「そうなんだ、お祭りは楽しいですね」
「最高よ、ごちそうさま」
「ふうちゃん、さようなら」
「そうなのじゃ、最古のドラゴンなのじゃ、年寄りのドラゴンなのじゃ」
「カッコいいな、すると何歳なんですか?」
「忘れたのじゃ、数え方も知らないのじゃ」
「忘れる程か、それも凄いな」
「私も歳をとったら、言葉の最後に『じゃ』を付けて話していいですか?」
「良いのじゃ、歳をとると『じゃ』が付くのじゃ、美味しい土産を忘れるのじゃ」
「はい、忘れないで貰って行くのじゃ」
「私はレッドドラゴンのレッドちゃんよ」
レッドちゃんの前に来たのは小さな女の子で、不思議そうに見ている。他のドラゴンさんを見て首を傾けて「似てないね」と言った。
「それは、変身が出来るからなのよ」
「凄い、変身出来るんだ、ウサギになって下さい」
「ごめんね、変身の仕方を忘れちゃったのよ、今はスライムから変身が出来ないのよ」
「そうですか。ハンバーグはどちらがいいですか?」
「見た目は小さいけど、大きい方を食べたいわね」
「はい、大きい方を食べて下さい」
女の子は小さい方を自分で取って、大きいハンバーグの載っている皿をレッドちゃんの前に置いた。
レッドちゃんは皿に乗る様にして食べるみたいだ。
おお、体の中に入ってそのハンバーグが消えたぞ。
「美味しいね、ハンバーグ」
「そうね、美味しいわね、ありがとう、とても美味しかったわ、気を付けて帰ってね、混んでるから」
「は~い、また来ます」
「そう、また来てね」
また来ますは、明日なのかな。
「シュラさん、ラム酒を飲んで下さい」
若い女性の人がシュラさんを気に入った様でラム酒の瓶をシュラさんに渡した、あんな小さい瓶を握っていないのによく持てるよな。
「ありがとう、大好きなのよラム酒が」
「体に触ってもいいですか?」
「好きなだけ、触っていいわよ」
「わぁ~、温かい」
僕も触ったな、伝説のドラゴンは優しかった。あの女性も感動しているんだな、嬉しいな、シュラさん達が受けいられている。
「ラム酒ありがとう、お土産があるから忘れないでね」
「そうなんですか?」
「お祭りだからね、私はラム酒を貰た。貴女は門の所で貰えるからね」
皆の所に来るお客さんを見ていたら、お土産担当だったのを忘れていた。
「ありがとうございます、ドラゴンの皆さんは皆さんからハンバーグを貰って喜んでいましたよ、ラム酒で少し酔っているのか陽気に皆さんと会話して言たようですね、お帰りの際にここで、オーク肉入りの肉丸をお土産にあげてます、食べてから帰ってもいいですし、家に持って帰ってから食べてもいいですよ」
ヴエルナさん達と僕とミアちゃんは来てくれたお客さんにお土産の肉丸を渡す担当だ。
「そこの人、お土産を忘れていますよ」
「お土産があるのか、ありがとう」
「来てくれてありがとう、どぞ~」
「美味しそうだ」
「どうぞ」
「食べて行こう」
大きい寸胴鍋からどんどん肉丸を出す、お客が多いので忙しい。
「忘れないで、貰って行く下さいよ、お祭りのお土産ですよ~」
「ユーリ、変なお祭りだね」
「そうなのです、それがドラゴン祭り。それにこれはドラゴンさんと人間が交流するお祭りだからね」
「そうか、ドラゴンさん達のお披露目なんだ」
「そうだよ、ドラゴンさん達が僕達人間に悪い事をしない、お友達なんだよと思えるようにしたかったんだ」
「成功したよね」
「うん、成功したよ」
ミアちゃんと会話をしながらお祭りに参加してくれた人達に肉丸を配る、調理担当のお城の厨房の人達は凄く大変だ。何人来るか分からないので、休む暇がない。
「ユーリ、オーク肉は足りるのかな?」
「ヴエルナさん達が頑張ったんだです、足りると信じて頑張りましょう。恐らく、大丈夫です、僕は運がいいので」
「言われてるぞ、ヴエルナ」
マシュさんが、来てくれたお客さんにお土産を配りながら、からかう様にヴエルナさんに話した。
「俺だって運のいい時もあるぞ」
「そうか、俺はヴエルナの運がいい時を知らないぞ」
「そうよね、ユーリの運は最強よ」
「努力の人とも言えるけどね」
努力の人か、レベッカさんの荷物を体力作りの為に持ったな。
「みんな、褒めてくれても何もあげる物はありませんよ」
「もう貰っているぞ、言葉の通じない国から助けてくれたじゃないか」
「そんな事がありましたか、忘れました」
そう、あんな事は忘れてもいい、落ちている野菜は、確認してから拾った方がいい事を覚えている方が役に立つ。
「すいません、お土産下さい」
なんと、頑張っているのにお客さんに催促されたぞ、スキルを発動・・・・更に頑張る、私語は仕事が終わってからだ。
「どうぞ、温かいうちに食べて下さい」
ドラゴン祭りは2日間、今日した事と同じ事を明日もする。あれ・・・・国王様と侯爵様は最初の挨拶だけなのか、ずるいぞ。ドラゴン祭りを見てくれているかな、国王様達にもドラゴンさん達と友達になって欲しいな。
シュラさん達は楽しそうだ、明日も頑張ろう。




