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そこに確かに存在する温もり

●2025年10月1日全編書き下ろしノベル7巻&8巻発売

◇予約ページ◇https://tobooks.shop-pro.jp/?mode=grp&gid=3106846

◆攻略対象異常公式アカウント◆https://twitter.com/ijou_sugiru?s=20/


三階の廊下を歩く。


庭を見て回った後、客間に戻るはずが、

なんやかんやで書庫に行ってしまい、書庫を見終わり今に至る。


現在、ルキット様とアリスは廊下に飾られている絵を見ている。

ものすごく熱心だ。私はどちらかというと絵の鑑賞は苦手だから、

絵を熱心に見ていられる人は本当に尊敬する。

何か、どうしても「あ、これ絶対途中でレベルアップする布だ」とか思って、

作者の意図が掴めない。


すごいなあと二人の様子を後方から眺めていると、

いつの間にか一人の掃除婦が立っていた。


「あ、こんに……」

「御嬢様、私はいつでも準備できていますからね」


掃除婦は、私にそう耳打ちして、足早に去っていく。






……まただ。今日は使用人皆の様子がおかしい。



アリスとルキット様を案内している間。

行く先々で出会う使用人の皆は、私を見つけると、

「外に出ようと……?」と尋ねてきたり、

屋敷に訪れたアリスとルキット様をどう扱っていいか分からないといったような目で見る。


そして、アリスやルキット様がこちらを見ていない間に、

唐突に耳打ちして来たりするのだ。


「準備は完了しています」

「何でもいいです、合図してください」

「しっかりやれます」


など、内容は大体この三種類。


外に関しては事件の心配から来るもの、

あの目は、私に客が来た、ということへの驚愕からくるものだろう。


私は学校でフィーナ先輩という友達が出来た時それを皆に話したりしたが、

話したのはその一人だけ。厳密に言えばエリクがいるが、

エリクは元々の友達。


よって私は皆に、

「入学して出来た友達が一人しかいないやつ」

という認識をされているのだと思う。

ただでさえ、幼少期から非社交的な性格をしていて、休みの日は屋敷に籠りきり。

茶会の付き合いは、必要であるから行き、自分から進んでは行かない。


そんな中でアリスとルキット様が突如お見舞いに訪れたのだ。

普通に驚くだろう。「掃除婦長考えすぎだなあ」と思ったけれど、

今思えば全然そんな事無かった。

アリスは見るからに明るく純朴でありながら咲き誇るようなこの世界のヒロイン。

ルキット様は転入数日で絶大な人気を得た光り輝く学校のアイドル。

社交的の擬人化であり、見るからに明るそうなこの二人。


私とそんな二人の関係性が全く見えない。


そんな輝ける二人が先生の随行といえ、

「お見舞いに来ました」と根暗の標本に会いに来たのだ。

何かもう、「それ絶対騙されてるよ」としか言えない。


だから驚くのはよく分かる。

ただ、「いつでも仰ってくださいね、準備出来てますから」とか、

「何でもいいです、合図してください」とか、「しっかりやれます」は、

本当に意味が分からない。

何の準備か絶対に言わないし、何をしっかりやるかも絶対言わない。

ただ、合図をすれば何かが発動するということしか分からない。


試しに合図すれば分かるかとも思ったけれど、それが

「屋敷の案内を盛り上げるために一発芸をする」合図だった場合、

とんでもない業を皆に背負わせることになる。

故に絶対しない。



よって、現在屋敷全体には、落ち着かない独特の雰囲気が漂っている。

しかしアリスやルキット様は元を知らないから

「こういう雰囲気なんだな、ちょっと変だな」と思うだけなのが、

唯一の救いだろう。


二人……、いやジェシー先生入れて三人が帰ったら、

アリスやルキット様は、

先生に頼まれて来ただけであるとちゃんと説明しよう……。


時計を確認すると案内を開始してから一時間が経過していた。

そろそろ客間に戻ってもいい頃だろう。


「では、これでこの屋敷は全て見て回ったので、

 客間に戻りましょうか」


二人に向き直ると、アリスが「あれ……」と奥の廊下を示す。


「あれ、あそこってまだ行っていませんね」


アリスが示しているのは、北棟の奥の廊下だ。


「あそこは、行ってはいけない部屋がありまして」

「す、すみません! 失礼しました!」

「いえ、お気になさらず」


アリスはまずいことを聞いてしまったのだと顔を青くする。

いや、別にあそこが事故物件というわけでもないだろうし……と考え、

ふと気づく。



……何故この奥の部屋は入ってはいけない部屋なのだろうか。


今まで両親や屋敷で働く皆にきつく言われていたから、

当然のように入ってはいけないものと認識して、

特に何も考えず過ごして来た。


でも、どうして入ってはいけないのだろうか。

そう言えばいつから入ってはいけなかった?

初めから?


レイド・ノクターが屋敷に来た時も、

当然のようにこの部屋は一切紹介していなかった。

それほど、自分の中では当たり前だったから、気にもしていなかった。


父の書斎も、仕事関連でいくつか倉庫のように使っている部屋はあるけど、

出入りは自由。

そもそもあの部屋以外に、行ってはいけない場所なんて存在していない。


あの部屋は、一体。




「そこへ行ってはいけませんよ、御嬢様」


一歩踏み出すと同時に背後から声がかかる。

振り返ると、アリスやルキット様のさらに後ろに、執事のグレンが立っていた。



「すみません。

 ……あの、何であの部屋、立ち入り禁止なんでしたっけ」

「? 覚えておられないのですか?」

「はい」

「……御嬢様が夜、ここから落ちてしまわれたと執事長から聞きました。

 下でメロが受け止め、奇跡的に無傷でしたが、

 もしそうでなければ、命に関わっていたと執事長は話をしていましたよ……?」


落ちた?

さっぱり記憶が無い。

物心のついていない小さい頃……?

しかしメロと出会ったのは四歳の頃だ。

メロが受け止めたということは、それより後のはず。


「それっていつ頃の話なのか分かりますか?」

「五歳の頃だと聞いています。俺がこの屋敷で働く前の……、

 ああ、メロが来た頃ではないでしょうか?」

「そうですか……」


メロが来たての頃。

考えてみれば、メロと始めどんな感じで仲良くなったのかの記憶が無い。

いつの間にか一緒にいたような、そんな気がする。


「絶対にここには近づかせてはいけないと俺は言われています。

 執事長にも、伯爵にも夫人にも。

 俺だって、御嬢様がこの前を通ることは嫌です、やめて頂けますか?」

「分かりました、これまで通り近づかないようにします」

「ええ、屋敷の外も危ないですけれど、

 中だって、危険な所はあるのですからね」

「はい」

「では、夫人と先生のお話が終わりましたので、

ご案内いたしますね」


こちらを促すグレンに従い、

アリスやルキット様と共に客間に向かった。









「今日は本当にありがとうございました! 最高でした!」


門の前で、アリスが感激に胸を震わせている。


グレンと共に客間に向かうと、

ジェシー先生がそろそろ職員会議の為学校に戻らなくてはいけないということで、

アリスとルキット様も自動的に帰宅の運びとなった。

母と屋敷の中で三人に別れの挨拶をしたものの、

せっかくだからと母に言われ、門のところまで見送ることにした。


そして現在、私は三人を見送るため門の前に立っている。

母は父に連絡をすると現在屋敷の中だ。


思えばあれからずっと屋敷の中にいたし、出たとしても庭くらいだったから、

ここまで来るのは本当に久しぶりだ。


「そうだ! 馬車の中に置いてきたんだ……ごめんなさい先生、あの……」


アリスが何かを思いだし、先生に頭を下げ何かを説明すると、

一度屋敷の敷地内に停められた馬車に向かう。


馬車は、門の外では無く敷地内に停めていた。

そして停められた馬車は一台。シーク家の紋が施されている。

どうやらアリスとルキット様も先生の馬車に乗ってこっちに来たらしい。


アリスは一度馬車に乘り込むとすぐ紙袋を携え出て、

こちらに向かって来た。


「あの、ミスティアさんのお見舞いにと……またクッキーを焼いてきました!」

「ありがとうございます」


アリスから紙袋を受け取る。

何か、クッキーにしては重い気がする。

いやすごい重い。


「それと、今までの授業の分の板書を、ルキット様とまとめてきました!」

「え、わざわざそんなことまで……すみませんお手間を……」

「別に、アリスさんと一緒にした訳じゃないのですよ。

 ただ偶然アリスさんもミスティアさんの分の授業内容をまとめていらして、

 分担することにしましたの」


ルキット様が訂正する。

二人とも、そこまでしてくれていたのか。

ありがたいし、嬉しい。


「ルキット様が板書、私が先生の話していた言葉です!」

「ですから、授業に出ていなくても、全く同じ内容が把握出来ると思います」


「本当にありがとうございます。助かります」


アリスとルキット様に感謝を伝えると、

アリスは「星……」と感嘆の声を漏らした後、

目を見開き一歩前に出てくる。


「いえ! 他にも困ったことがあったら何でも言ってください!」

「……出来る事であるならば、致しますわ」


一歩前に出るアリスに、引き気味のルキット様。

相性が良くないのかもしれないと思っていたけれど、

それは間違いだったのかもしれない。何だか相性が良さそうだ。


「すみません、テストまでには戻りたいと思います、

 ありがとうございます」


二人に礼をすると、

ぽん、と肩に手がのる。

顔を上げると先生が私の肩に手をのせていた。

先生はじっと私を見つめた後、口を開く。


「怖いかもしれない、無理はしなくていい。

 けれど、お前が学校に行きたいなら、

 しっかり守る。学校に行かなくても守るが……。

 ……ああ、うまく言えないな。

 とにかくお前の気持ちが一番だから、先生はそれを応援する。絶対だ」

「はい、ありがとうございます先生」


ジェシー先生は私が返事をすると、力強く頷く。


「では、また、学校でよろしくお願いします」


先生たちにお別れを言うと、

先生たちは馬車に乗り込んでいく。

そしてそれを見計らったかのように門が開いた。


そのまま御者が馬に合図をすると、

馬車はゆるやかに門をくぐり走り去っていった。





「御嬢様っ!」


門に背を向け屋敷に戻ろうとすると、

門番のトーマスが目を輝かせながらこちらに駆け、

私の手を取ったかと思えばぴょんぴょん跳ねる。


「わーい!」と飛びつくような勢いは無邪気な子供そのもので、

中性的な顔立ちは少女のよう、

背丈こそ私と変わりないが男女の力の差は大きく、

相手は成人男性。普通に腕が千切れる。


「えっへへぇっ やっと帰っていきましたねえ?

 これからどうしますかあ? おっれっとっ、お茶でもしますぅ??」

「いえ、このまま屋敷に戻ります」

「ええー?」


トーマスが残念そうにしていると、

もう一人の門番、ブラムがゆったりとした足取りでこちらにやってくる。


「トーマス、勝手に持ち場から離れるなよ。

 それに御嬢様を困らせるんじゃない」

「えー? 御嬢様困ってるんですかあ? 困っちゃってるんですかあ?」

「困ってます」

「はいはーい、分かりましたよーっと」


トーマスは素直に離れる。

するとそれを確認してから、ブラムが口を開いた。


「……それで、御嬢様はもしかして外出するおつもりで……?

 退屈でしたら丁度御嬢様にお渡ししたいとっておきの詩集があるので、

 お渡ししますよ?」

「いえ、外には出ません。でも詩集はお借りします、嬉しいです」

「ああ、良かった。なら後でお持ちしますね」


返事をすると、ブラムがほっとした様子で笑う。

ブラムの厳選した詩集は、詩に対して興味が無くても惹かれるもので、

さらにブラム……いやブラム先生の解説により、

まるで大作推理小説や壮大なRPGのような物語として楽しめる為、

とても好きだ。


「ブラムずるいよー! 俺も後で持っていきたいー!」

「でもトーマスは詩集は読まないだろ?」

「じゃーあっ、俺は縄片付けがてら新作のかーわいーぬいぐるみ!

 見てもらう! まだ途中だけど!」

「縄?」

「はい! 御嬢様が間違ってお外に出ようとしたり、

 俺以外の可愛いが出来た時使わなきゃいけない縄ですっ!

 雑に扱ったり出来ないからしまってきますっ!」


トーマスがこちらに敬礼しながらスキップで門番の持ち場に駆けていく。

おそらく言い間違いか聞き間違いだろう。

私が外に出ようとしたら使わなきゃいけない縄なんてものは無い。

脱走犯捕まえる訳じゃあるまいし。


「では、私は屋敷に戻ります、お仕事お疲れ様です、よろしくお願いします」

「いえ、しっかりお守りします……あ」


ブラムが私のうしろを見て、目を見開く。

それと同時に、どん、と私の背中に何かがぶつかった。

振り返ると料理長が立っている。


「あ、すみません料理長、どうしました?」

「御嬢様……」

「ど、どこか打ちました? 大丈夫ですか?」

「御嬢様」

「はい」

「御嬢様………」

「はい」

「御嬢様は……手作りの……。

 俺以外の人間の作ったクッキーを、食べ物を、

 召し上がられたのですか……?」


料理長が、絞り出すような声で発する。

手作りのクッキー?

アリスに貰ったクッキーのことだろうか。


「ええ、差し入れでもらって……」

「どれくらい食べましたか?」

「え、どれくらい? 八枚くらいですかね?」

「あああああああああああああああああ!

 うわああああああああああああああああああ!」


料理長が頭を抑えて唸りだす。

この状態の料理長は何度か見たことがある。

両親と外食に出かけたり、私が何かお土産を買ってきてそれを食べたりするとなる。

基本的に、料理長は他の料理人とかお店で食べ物を作っている人と張り合う節があるが、

まさか、アリスに対しても張り合おうとしている?


「八枚も御嬢様の身体に……、

 俺以外の人間が作ったものが入り込んで……」


何かもうクッキーじゃない物言いだ。

料理長が虚ろな目で私を見る。

あ、完全にアリスと張り合っている。


「あの、作ったのは料理の仕事をしている方ではなく、

 同級生の方ですよ、ほら今日来たアリスさんです」

「どんな味でしたか美味しかったですかどんな味でしたか美味しかったですか」

「ええっと、クッキーなので甘い……とか?

 丁度貰いましたよ。そうだ、よければ一枚……」


そう言って紙袋を差し出すと、料理長は勢いよく袋ごと受け取る。


「確認します。確認が終わり次第お届けしますね……」

「えっあの」


料理長は、ふらふらした足取りながらも早歩きで去っていく。

何か、言わなきゃ駄目な気がして、慌てて呼び止める。


「何を食べても、私は料理長の料理ずっと食べて生きていたいですし、

 それは変わりませんよ! 張り合わなくていいんですよ?」


思ったまま確定事項を伝えると、料理長はゆっくりと振り返った。


「……本当に?」

「はい」

「本当の、本当ですか?」

「はい、ああ、でも料理長がこの先別の働き場所を見つけたりとか、

 良い所を見つけて出て行きたいとか、そうでないのなら、ですけど」


あと、投獄死罪が確定的になって、解雇しなければいけない場合もだ。

その時は、使用人皆の再就職先を探さなければいけないし。


「そんなこと絶対に無いです!

 御嬢様の心臓が止まるその日まで、最期の朝食も、昼食も、晩餐も、

 全て俺が作ります!」


料理長が強い足取りでこちらに向かってくると、

私の手を掴む。力が強い。元気になってる?


「えーっと、ではよろしくお願いします?」

「はい、よろしくお願い致します! 一生俺の作った料理を食べ、

 最後の最後の時まで食べてください!」

「はい、料理長が良ければ」


掴まれた手を握り返し、返事をすると、料理長は満面の笑みを浮かべ、

「では!」と急に軽い足取りでしゃきしゃきと去っていく。

情緒が不安定過ぎる。

何か、料理長の、自分辞めさせられるんじゃないか不安というか、

張り合い、どんどん酷くなっている気がする。

アリスは料理人じゃないのに。






























夜、ベッドに寝ころび、窓に浮かぶ月を眺める。

夜だ。やっと夜が来た。

今日は酷く疲れた。あれからしばらくして料理長から一枚だけ研究の為食べました、

とクッキーが返却された。

調理場に置いてあったからか、少しだけ温かくなっていた。


……寝る前に、授業どれくらい進んでるか確認しておくか。

起き上がり、机の脇に置いた紙袋の元へ向かうと、

部屋がノックされる。メロだろうか。


「どうぞ」


声をかけると、扉が開く。

入ってきたのはメロではなく、両親だ。


「ミスティア、ちょっといいかい?」

「大丈夫だよ。どうしたの?」

「うん、ちょっと話があってね」


父は穏やかに笑うと、

私の机の紙袋に目をやる。


「そう、学校の話なんだ」

「学校?」

「うん、ミスティアはこれから先、学校に行きたいか、

 行きたくないかの話をしたくて」


父が、私の目をまっすぐに見つめる。


「ミスティアには、今、二つの選択肢がある」

「選択?」

「学校に通うか、辞めるかだ」


学校を、辞める。

投獄死罪の回避だけを考えるのなら、そんなに素晴らしいことはない。


「辞めるという選択は、かなり大きなものだけれど、

 学校だけが人生の全てじゃない。

 通過点に過ぎないんだ。だから、別にそこを通っても、

 通らなくてもいい。

 ミスティアがこれまで通り学校に行くならそれでもいいし、

 辞めて、どこか別の場所へ転入してもいいし、

 新しく家庭教師を雇ってもいい」


父の言葉に、母も頷き口を開く。


「そして一つ、選ぶ前に知っておいて欲しいことがあるの。

 一度決めたことは、簡単に後戻りすることは出来ない。

 けれど選んだ道を、少しずつ変えていくことは出来るわ。

 選んだ選択の中で、またミスティアが嫌になったら、

 その時は私も、お父さんも、どうすればいいかしっかり一緒に考える。

 私たちは、いつだって、ミスティアが選んだ道を応援するわ。

 だからミスティアは好きなように選んでいいの」


ずっと、二人は私の将来について、私以上に考えてくれている。


「……私は、出来れば、通いたいと思っています」


それだけのことを考えるなら、辞めたいと思う。

でも、私に関わった人たちのこともあるし、

出来る事なら、通いたいと思う。


「お父さんと、お母さんには、心配をかけてしまうけど、

 もし、許されるなら、学校に通いたいです」


どうか、我儘を許してほしい。

まだ、やりたいことも、やらなければいけないこともある。

頭を上げると、父は静かに笑う。


「ミスティアは、気を遣い過ぎる。

 きっと心配をかけてはいけないと心から思っているのだろうけど、

 子供に心配をかけられることも、

 子供の道を応援するのも、全部親の役目なんだよ」

「そうよ、好きなだけ我儘を言って頂戴、

 あなたは私たちの大切な大切な娘なんですもの」


母も、父に似た笑みで微笑む。

この二人の幸せを守りたい。

何も失わせたくない。危険な目になんて、辛い目になんて、

絶対に遭わせたくない。ちゃんと親孝行がしたい。

幸せでいてほしい。


「お父さん、お母さん、ありがとう。

 ……大好き」


普段あまり言わない言葉。

けれどずっと思っている言葉を伝えると、

二人は顔を見合わせ嬉しそうに笑い、私を抱きしめた。


















●2025年10月1日全編書き下ろしノベル7巻&8巻発売

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[一言] これは!もしかして料理長のクッキーにすり替わってる?
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