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┗道化師の微笑み

●2025年10月1日全編書き下ろしノベル7巻&8巻発売

◇予約ページ◇https://tobooks.shop-pro.jp/?mode=grp&gid=3106846

◆攻略対象異常公式アカウント◆https://twitter.com/ijou_sugiru?s=20/

「しっかり伝えておいたよ」



昼。

飯も食わず校舎裏へ向かい、そこで待つ壊れかけの玩具に声をかける。


「ありがとう、助かるよ」


壊れかけの玩具、目の前のレイド・ノクターは人好きのする、

計算しつくされた薄っぺらい笑みを浮かべた。

人間の笑顔が採点されるのであれば、

満点を取りどんな奴でも落ちる笑み。


が、こいつの本当に欲しい女はそれを見て怯える。

そんなに良く出来た皮肉があるかと笑い転げたくなるのを堪える。


「ところで、レイドくん、報酬のほうなんだけど……」

「それはしっかり用意してるよ」


申し訳なさそうな表情を作り、弱々しく催促すると、

玩具の婚約者様は懐から封筒を取り出した。


「わ、ありがとう! すごく助かるよ……でも、不思議だな、

 どうして自分から話さないの? 僕は助かるからいいんだけれど」

「ミスティアは君のことを随分と信用しているからね」


嬉々として封筒を受け取り、知っていることをわざわざ尋ねてやれば、

壊れかけの玩具……、レイド・ノクターは冷ややかな目をこちらに向けた。

怖い怖い。何をされるか分かったものじゃ無い。

……面白い。


「そ、そうなのかなあ? なら、また何かあったらよろしく。

 親は兄にかかりきりだし……。

 こういうの、本当に恥ずかしいけれどすごい助かるんだ」

「へえ、また何かあればお願いするよ」

「う、うん! じゃあ、またっ!」


適当に焦ったような笑顔を浮かべ、

怒りの矛先がこちらに向かない間に、速やかにその場を去った。











「この金、なーんか面白えことに使えねーかなあ」


ひとまず人目の無い渡り廊下に向かい、

封筒を取り出す。

怪しまれないように報酬を金に指定し、

あわよくばノクター家の印がついた封蝋つきの封筒なんてものが手に入らないかと

期待半分に考えていたが、

当然ながら封は施されていない。抜け目がない。

封筒が特殊仕様なら少しは面白いことが出来るが、

封筒もそこらで売ってるもの。

買った人間を特定しようとしたところでただ無駄な労力で終わる。

つまらない紙だ。




「まー楽しそうだからいいか」



伸びをして、廊下の窓を開き、下を見下ろす。

相変わらず有象無象が蠢くように這いずり回っている。


ここが一気に火の海にでもなれば、とんでもなく楽しいだろうなあ……。


駄目だ駄目だ。そんなことをしたらせっかくのお楽しみまで燃える。


「くっ……ふふ、ひひ……」


とっておきの玩具の完璧な婚約者様は、

校外学習で、勝手な復讐をした。

あの真面目ぶった眼鏡があの場で死んでいたらもっと面白かったのに。

中々上手くはいかない。

殺し合いでも始まらないかと期待していた眼鏡と玩具の誤解も解け、

何の面白味も無い、つまらない退屈が始まるかと思えば、

案外うまい方向に転がったのは嬉しい誤算だった。


結果的に眼鏡は絶望した。そしてとっておきの玩具は眼鏡の絶望に気付かない。

それどころか向けられる好意を認識しないから、眼鏡が許されるたび、

心がずたずたに抉られていることが分からない。

馬鹿みてえに吐き散らかしていることに気付かない。


そして、眼鏡と玩具が仲良くするたび、

婚約者様が壊れることにも気付かない。


笑える。なんて最高だろうか。

これまで、これほどまでにいかれた人間たちは見たことが無い!


今までは適当に手を出して壊さなければ楽しい結果が得られなかった。

が、まさか何もしなくても勝手に壊れていくものが現れてくれるとは思わなかった。


「本当、どいつもこいつも、馬鹿だよなあ」


堪えきれず一人で笑っていると、

遠くにとっておきの玩具の姿を見つける。

奴は相変わらずつまらない顔をして歩いていた。


あいつは本当に、全てがつまらない。

あいつの周りは面白いことで溢れかえっているのに、

その本体は何から何までつまらない。あんなに周りが面白いのに、

本体は驚くほどつまらない。


そんな、最高に面白くてつまらないとっておきの玩具の後ろを見ると、

やはり男がひっそりつけている。

あの男の存在は、玩具にも、婚約者様にも教えてやらない。

その方がきっと面白い。

思惑や計画がそのままその通り行われても何も面白くない。

壊れてからが面白い。

細密に計画を立ててそれが壊れた瞬間の人間の表情ほど楽しいものはない。


「ヒントはくれてやったぜミスティア。

 せいぜい檻に入れられねーよーに、

 逃げきれるといいなあ」






●2025年10月1日全編書き下ろしノベル7巻&8巻発売

◇予約ページ◇https://tobooks.shop-pro.jp/?mode=grp&gid=3106846

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― 新着の感想 ―
「結果的に眼鏡は絶望した。そしてとっておきの玩具は眼鏡の絶望に気付〜そして、眼鏡と玩具が仲良くするたび、婚約者様が壊れることにも気付かない。」あああ〜辛い〜!! クラウス氏愉快犯だもんな〜、事件が起き…
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