85話 秘密に深入りする度胸はない。
カルマートさんのお宅でお昼ご飯をご馳走になってから、ギルドに戻った。オムライスは凄く美味しかった。ふわトロではなく薄焼き玉子で巻くタイプで、ふわトロに慣れた身としては何だか新鮮だった。
…お昼ご飯を作る前からちょっと思っていたけど、カルマートさんの家は使用人を使用人としてではなく、ウチの実家みたいに家族として接しているんだなぁ。……どことなく柚季さんのカルマートさんに対する対応が、お母さんみたいだなぁと。…本当、柚季さんと私って似てるのかなぁ…はは、はははっ。
「コ〜ト〜ハッ!!今年の夏はどんな感じ?」
「アレ、ルナさん?」
カルマートさん宅からギルドに戻ると、たまたま人が空いてしまっていたので、久しぶりに受け付け業務をしていたら…元気一杯のルナさんがバーンと登場した。
一瞬ビックリしたけど…そうか、大学だと高等部の時より時間に余裕を作りやすいのか。
「一ヶ月くらい前から、冒険者の仕事を再開したんだ〜……って、そうじゃない!!だから、えっと…今年の夏のご予定はっ!?」
「予定ですか…お休みの期間は例年通りだと思います。申請すれば少し長く取れるみたいですけど。」
緊急の仕事が入らなかったら、って前置きが入るけど。その辺りはどこの仕事にも言える話か。
「いやいや、お休みの長さの事じゃなくて…いや、それも大事だけどさ?その休みにする事は決まってるのかって話。」
「何をするか、ですか…特に決めていませんね。」
そもそも長期休暇まで一ヶ月以上空きがあると言うのに、今から予定詰めてもどうしようもないと思うんです。せめて一ヶ月切るか切らないかあたりに決めたい。
「そっかぁ…じゃあさ、僕の知り合いの工房に遊びに行くとかどうかな?きっと小春ちゃんも楽しんでくれると思うんだよねぇ!!」
「はいはい、分かりましたから…ルナさん、貴女は受け付け嬢をナンパしに来たんですか?」
「……はっ、そうだった。はい、この依頼を受けてみたいんだけど…。」
ルナさんを苦笑いでたしなめてから用件を聞くと、ルナさんならクリア出来そうな採取の依頼が載っている依頼書を見せてきた。…良かった。ルナさんだったら、本当に雑談目的で会話してるかもしれないって思ったから、依頼書があって本当に良かった。
「はい、分かりました。期限は、依頼を受けてから一週間となってます。期限はきっちり守ってくださいね。」
「まっかせといて!!これでも、多少ザックリしているけどスケジュールの管理はそれなりに出来てる方なんだから!!んじゃ、行ってきまーす。」
ルナさんを送り出しながら、あまりの不安になる返しで苦笑いをしてしまった。…ルナさんは数字には強いから、そう言う意味では安心だと思っておこう。後の事は分からないけど、今の所はギルドのブラックリストには入ってないみたいだし。
…何故ロアイトさんの机の上に、ギルドのブラックリストがあったんだろう。そして何故、最機密指定書類であろうブラックリストを、ロアイトさんは簡単に見せてくれたんだろう…考えるだけ無駄なのかな。
「ギルドのブラックリストに載ってしまうと、ペナルティーやランク降格、ギルドに広がる悪評…ええことないなぁ。」
「自業自得ではあるんですけど。」
ブラックリストについて調べた中で、私が一番怖いと感じたのは…ブラックリストの中でも超一級危険指定された冒険者が、ある一定の期間の後に冒険者資格をギルドに返上した上で、二度と姿を表さないって所だ。
都市伝説かと思ったけど、過去の記録を遡ると確かに姿を消した冒険者が何人か居て、背筋が少し冷たくなった。関係ないと切り捨てるには、少しばかり友人が問題行動起こしやすい人だったってのと、明日は我が身な気がしてならなかったから。




