86話 今まで利用してなかった。
今日も一日頑張ったなぁと思いながら、珍しく大浴場に入ってる時だった。何となく、制服って偉大だなぁって思った。
柚季さんを思い出しながら、今の私はオフィスカジュアルとか冒険者用の動きやすい服とかを着ているけど…その服を着るだけで気が引き締まるとか、そう言う制服があるって良い事だよなぁって。
「ん〜…久しぶりに大浴場に入ったからか、学生の時を思い出してしまいましたかね?」
「学生が何だって〜?」
視線をぼんやりとしながら頭の中もぼんやりとしていたら、ルナさんの声がした。…他にも複数の足音が聞こえるから、住人さんもこの大浴場を利用してくれているのだろう。嬉しいなぁ。
「いえ、制服があるって良いなぁって思ったモノで。」
「あ〜、確かに制服は便利だよね。一々考えなくても良いし…何より、より良く作業が出来る様にデザインされているからね。布だけでも耐火とか防塵とかの機能があるしさ…はぁ、製作者の愛を感じるよねぇ。」
ルナさんが想像してる制服って、多分工業系の制服なんだろうけど…それって、『制服』と言うカテゴリー全般に言える事だよね。
たまにそう言う機能性とか考えない『制服』は存在するけど…それはそれって事で。うん。
「あ、あの…大家さんとルナちゃんって、知り合いなんですか?どう言う関係で…。」
ルナさんも湯船に浸かって、一緒に気の緩んだ溜め息を吐いていたら、一緒にお風呂に入っていた住人さんの一人が、おずおずと聞いてきた。…ルナさんはルナちゃんって呼ばれているのに、私は大家さん。コレは…確実に私の年齢を上に見ているな。今に始まった話ではないけどね。
「幼馴染みで、友人で…元同級生ですね。」
「同級生って…え?」
「やっぱりそんな反応になりますよね…。」
案の定と言わんばかりのリアクションに、私の中で何だか慣れてきた感じが芽生えて…少し悲しい気分になった。
「あ、僕は別に飛び級とかしてないからね?ちゃんと僕とコトハは同い年だからね?」
ルナさんの対応も慣れてきてるなぁ…心なしかルナさんから哀愁が感じられてきた。貴女もか。
「え、ええ…そうなんですか。見えない……はっ、すみませんっ!!」
「いえいえ…。」
謝られると心にグッサリくるなぁ…と思っていたら、住人さん達のひそひそ話が聞こえてきた。
「ルナちゃんは身長との対比で大きく見えてる…だけ…だと思う……思いたい…じゃなくて。大家さんは、もうなんだかスッゴいね。お湯に胸がプッカリと浮いてる。…や、ルナちゃんも浮いてるけども。」
「…何をどうしたら、あんなサイズになるんだろう。」
…学園の寮に居た頃、大浴場使ってる時に、この手の話はたまに聞いてたけど…そう言えば、住人さんの前でお風呂に入った事なかったな。
胸ネタは学生時代からもう耳ダコだったから、もうセクハラかどうかも分からなくなってきたなぁ…そもそも女性からの胸ネタってセクハラに入るんだろうか。完全世間話じゃないかな。
「大家さんやルナちゃんの凄い所は、胸じゃないわ…確かにそちらも凄いけど。」
そろそろお風呂上がろうかなぁと考えていたら、今まで口を閉じていた住人さんが口を開いた。お、おお?この流れは、胸ネタ以外の話が聞けるのかな?
私と同じ考えになったのか、ルナさんも…湿気で大分へにゃっていたアホ毛をミョ…コンッと揺らした。…やっぱり水気があるからか、アホ毛の揺れが重たいな。
「どこが、どこが凄いと言うの?」
「それはね……筋肉よ!!」
大浴場と言う良く声が響く環境で、尚且つ良く通る声で、その方は『筋肉』と言った。言い切った。
「き、筋肉?」
「そう、筋肉。二人とも細身ながらしなやかな筋肉に覆われていて…並大抵の努力では、あんな美しい筋肉は付かないわ!!」
まさか筋肉を美しいと誉められるとは思わなかった私達は、お互い顔を見合わせて…何だか照れ臭くなって、一緒にお風呂から上がった。




