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83話 完璧に関係ないと油断してた。


「さて、お堅い話はもうここまでにして…夜風さん、この後の予定は何かあるかな?」


そろそろお開きな雰囲気が漂い始めた時、カルマートさんがパンッと軽く手を叩いて、明るい声でそういった。…そう言えば今は何時だったっけ。断りを入れて、時計で時間を確認する。…お腹の具合からすれば、大体お昼ぐらいではあるんだけど……あ、うん。ザックリ言えばお昼と言えなくもない時間だわ。


……え、この話の流れってもしかして。


「ギルドに戻って、今回の報告書とか…発生しているであろう書類を片付けたりだとか…になりますね。」


「おや、お昼ご飯を食べないつもりかい?ダメだよ、若いからってそんな事するのは。」


わざと昼食の事を外して予定を話すと、カルマートさんはニッコリと笑いながらそう言った。それはそれは楽しそうに…そう、どうやって追い込んで、退路を絶って、自分が求める選択肢を選ばせるかを笑顔で考える悪役が如くに。


ギルドに戻る前にご飯を食べるか、ギルドに戻ってからご飯を食べるか考えていなかったから簿(ぼか)かしただけだったんだが…。


「お恥ずかしながら、昼食を用意し忘れてしまって…後で自分で済ませようかと思って。」


うん。分かりきっていた事だけど、カルマートさん相手に腹の探り合いは歩が悪い。人生経験の浅い若造の私が、明らかに人生山あり谷ありあったんだろうと感じさせるカルマートさんに勝てる訳ないって話だよハッハッハ。


だったら、もう開き直って素直に言ってしまおう。やんわり遠回しの表現を使えば使うだけ、こっちが不利になっていくだけだ。


「おや、つまらない。」


「主、僭越ながら意見を言わせてもらいますが、お客様を困らせるモノではありませんよ。」


本当につまらなそうな顔をしたカルマートさんに、柚季さんが苦い顔で注意した。


お、おお…柚季さん、客人の前で雇い主であるカルマートさんに意見を言うなんて、何て大胆な事を。場合によったら即解雇だよ?


「始〜、君もお外向けの顔はもう良いよ?と言うか、その状態でお説教は止めてよ〜。」


「説教ではありませんよ。」


さっきまで苦い顔をしていた柚季さんだったが、今ではもうスッと真面目な顔をしている。…ああ、何だろう。何か柚季さんの態度に共感する所があるな。


「ふぅん?まぁ、良いや。今後夜風さんとは長い付き合いになっていくんだからさ、今の内に多少素を見せておきなよ。ほらほら、いつもみたいに僕を罵れば良いさ!!」


「!?」


執事の立場で主を罵るって…確かに二次元における執事にとっては、Sキャラや俺様キャラってのはありがちなネタではあるけれど…このカルマートさん相手に罵るとか、柚季さん精神強いな。一つの罵声が、十や二十ぐらいの強さの言葉になって返ってきそうなんだが。


それ以前に、年上ロリエルフにS属性執事とか…ネタ盛るなぁ。いや、厳密にはまだ柚季さんの属性は不明なんだけど。


「俺、いつ主を罵ったんですか…もしかして俺、そう聞こえてしまう事を言ってしまったんですか?でしたら、申し訳ありませんでした。」


「ぶぅ、適当に言っただけだよ。分かっているだろう?」


「主の口車に乗っていて、良かった例しがないんで。…夜風さん、食事の事はお気になさらないでください。」


「は、はぁ…。」


あ、あれ?ちょっと気を抜いて色々考えていたけど、この流れは…良くないよね?そこはかとなく、断った方が失礼になる雰囲気が漂ってきたんだけど。…うそ、パターン…入った?いつの間に!?


「フフン、ノリノリになった始を止めるのは骨が折れるよ?まぁ、ノリノリになった人を止めるのは大抵大変だけどね。」


「それは、まぁ…。」


正しくは、ノリノリの人を止めるまでは出来ても、その人を止めた後が大変なんだよね。メンタルケア的な意味で。だから、ノリノリに乗せたまま誘導した方が後が楽…って、今考える事はこれじゃない。


…はぁ、これは完璧にカルマートさんに乗せられたなぁ。まさか素でやる気を出している柚季さんを乗せた上で攻めてくるなんてなぁ。




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