68話 アドバイスは求めてないヤツ。
お盆にお茶漬けセットを用意してから、予め用意していた温かいお茶をマグカップに注いで、インドールさんに差し出した。いやぁ、保温ポット便利だね。いつでも飲みたい温度のお茶飲める。
因みにこのマグカップ、ルナさんや由榎さんが来た時に出すマグカップなのだが…こんな事になるなら、来客用のカップセットなり湯飲みのセットなり用意すれば良かったと思いつつ、紅茶でも緑茶でも対応できるから有能な子だよなぁ、とも思った。あ、今回は私が愛飲してるほうじ茶です。好みもありますが、カフェインは少しでも少ない方が良いかと思って。
「えっと…職場とかでは優しいと言うか、あんまりハッキリしないけど、普段はイジメっ子と言うかからかう側の人…でしたっけ?で、割りに怖がりと。」
私はソファーではなく、ラグに直接座りながら、居酒屋でのインドールさんの発言を思い出した。
何故ソファーに座らないかと言ったら、ソファーに座ったらインドールさんと目線が揃っちゃって、私の居心地が悪くなりそうで…『私』の時も、あんまり目を合わさなかったから、今でも限られた人じゃないと目を見て話せないと言うか…完全自己満足で申し訳なくなってきた…。
「はい。…自分で言っといてなんですが、夜風さんアレで良く覚えてましたね。」
私が席を外している間に落ち着いたのか、コクリとほうじ茶を飲んで口を開いたインドールさんは、いつもより険は取れていて、尚且つ素っぴんだったけど、口調は戻っていた。
「アレだったから、ってのもありますよ。印象的ではありましたし。」
正直、私も覚えていてビックリだよ。忘れていたら後が怖い…って、本能的に覚えていたんだろうか。それとも、影の精霊が手助け……は、してないみたいだな。ジェスチャーと顔から、声に出さずとも『違う』って伝わる。
「そう、ですか。……単刀直入に言えば、その人は私の事眼中に入ってないんです。正式ではないにしろ、ちゃんと奥さんは居ますし…何より、私は可愛くない。人付き合いだって…可愛くない正論を固く聞こえる声で言ってしまったり…。」
な、何だろう。どことなく複雑な感じなのかな?正式ではない奥さんって…つまり内縁の妻、みたいな感じって事?あ〜、でもなぁ。確かにギルド職員って、危険がないと言えば嘘になるから…正式な結婚関係になるのを拒んでしまうのは分からなくはないかな。
「正直、私も今日の事がなかったら嫌われているのかと思ってました。」
「……確かに、最初の頃はちょっと気に入りませんでした。お金持ちが、ステータスの為に来たんだろうと。」
「……そうですか。」
私との間に確かに溝ができた瞬間のあの件は、マジだったんだ。
「でも…真面目に仕事に取り組んでいるし、何なら私より仕事出来てるし、その上でちゃんと向上心もあるし…年下ながら、尊敬できる存在になって。気に食わないけど、認めてると言うか……私ったら何を言っているんでしょうか。」
「はっ……ハハハ。」
ひ……ヒギィィヤァァアッ!!落ち着いた口調で誉められるって何ですか!!新手の拷問!?拷問なの!?恥ずかしいんだけど!!声ちょっと裏返ってしまった!!
お互い暫く沈黙して、インドールさんが温くなったほうじ茶を一気に飲み干して、息を吐いた。
「で、えっと……私の恋愛話は、もう半ば以上諦めているので良いんです。」
「え、良いんですか?」
あ、いけね。つい反射で答えてしまった。お節介だったかな…鬱陶しかったかな…。
「……た、誕生日に、ダメ元でそれとなく伝える予定ですが…それだけです。」
「おお…。」
いやぁ、最初は本当にどうなるかと思ったけど、最終的にはちゃんとした恋バナになった…!!何かインドールさん言い掛けてたけど、今のインドールさんがギャップ萌えで可愛いから良いかな。




