67話 お前の仕業だったのか。
小春を暫く「天使ぃ…。」と良いながらギュッとしていたインドールさん。…良い雰囲気に水を差す様で気が引けたが、話が進まないと判断したので、断りを入れてから小春を抱き抱えて寝室へ運んだ。
「そう言えば、影の精霊。あまりの可愛さに疑問にも思いませんでしたが…あの時はまだ少し寝る時間より早いのに、どうして小春はこのネグリジェ姿に?」
普段は肩に感じるもんにょりとした感触を頭で感じながら、私は影の精霊に問い掛けた。
えっと…定時に仕事上がって、インドールさんに連れられて居酒屋に案内されて、アレやコレやあって…うーん、それでも宵の口は掛かってなかった気がする。移動時間含めても、一時間もあの辺りには居なかった筈だし。
「お昼寝明けやったみたいでなぁ。普段は一定距離お嬢さんが近付いてきたって、そんな気配とかで起きるんやけど、今日は転移で一瞬やったやん?分かりやすく言えば、不意打ちにおけるマイナス補正失敗とか自動失敗ってヤツや。」
「分からんわ。」
いや、全体的に言わんとしてる事は分かるけど…影の精霊が何を例えとして引き合いに出したのかが分からない。ちょいちょいそう言う所あるよね、影の精霊って。別に良いけど。
「後、ネグリジェはウチがノリと勢いで着せました。」
「……グッジョブ。」
「季節柄半袖にしたかったんやけど…お嬢さんの萌えツボ的に白の長袖の方がええかなって。」
私は素早く頭を振って頭の上に居た影の精霊を落として、流れるように踏みつけ、小春のトキョンとした視線を受けつつ、スッと親指を立てた。…何故だろう、影の精霊が無駄に演出を凝って、無駄に良い顔を作ってる気がする。……まぁ、あくまで私がそんな気がするだけだから、本当かどうか分からないけど。
小春を寝室に連れていって、ベッドに寝かせて、頭をよしよしと撫でていたら、小春が寝落ちした。…冗談抜きで小春をどうするか考えないと、この子日がな一日寝てばかりにならないかな?
「ところがどっこい。意外と共有ルームで入居者に可愛がられとるんやで〜。言葉や簡単な計算を教わったりして、賢くなっあんっ!!」
影の精霊の言葉を頭が理解した時、咄嗟に影の精霊の頭を鷲掴みしてしまった。知っていたが、相変わらずゴムボールみたいに柔らかい頭だな…じゃなくて。
「おい、影の精霊…その時の映像、撮ってるよな?」
我ながら中々低い声が出たなぁ…と、頭のどこかで他人事の様に感じた。今はそれどころじゃないから、今は気にしない。
え、何それ…小春がお勉強?そんな…そんな美味しい事をしてるだなんて、全く知らなかったんだけど。メッチャ見たかったんだけど!!メッチャ撮影したかったんだけど!!
だがしかし、希望を捨ててはいけない。まだ最後の望みの綱が…影の精霊が私には居る。ぶっちゃけ頼りたくないけど頼れる存在として居る。
「ハァハァ、ハァハァ…もっちろん撮っとるで。オマケ程度やけど、それでも良い感じに編集して、思わずお嬢さんがジェラシーでハンカチグギギする感じの、良い動画に仕上げてみたんやで!!」
「リアルでハンカチ噛んで伸ばす?人って居るかは、今は置いておくとして…そこまで言うなら、期待しておきます。」
小春も寝付いたし、早くインドールさんの元へ戻ろうか。家主が姿を消したままとか、気まずくて居心地悪いだろう。
出来るだけ足早にインドールさんが居るリビングに戻ると、案の定ソワソワしているインドールさんがソファに居住まいを正して座っていた。…素っぴんのインドールさんって、化粧してる時とあまり変わりないんだな。…あ、勿論良い意味で。
まぁ、私も普段素っぴんと見紛うばかりのナチュラルメイクか、そもそも素っぴんなんですけどねハハハ。




