66話 酔うと素直になるタイプ。
影の精霊、どんだけ記録を残す気なんだろう…と、内心インドールさんにご愁傷様と合掌した。
ともあれ、このままインドールさんの話を流してお開きになるのと、この居酒屋に居るのは居心地が悪いと判断した私は、お会計をパパッ済ませて店から出た。
インドールさんの手を引きながら裏路地に引っ込み、認識阻害の結界を張ってから転移魔法で私の家まで移動した。
こんな風に私用での転移魔法はあんまり使いたくなかったが、今はこのインドールさんが一緒だから…バスやタクシー使うより面倒が少ないかなって。…私も気が動転してるんですよ。
「はい、インドールさん。取り敢えず…お手洗い行きます?」
「うう…じゃあ、お手洗い、お借りします。」
結局影の精霊がアルコールを混入したウーロン茶は飲み干していたみたいだし、それプラスお冷やも飲んでいたから結構ギリギリだと思って、インドールさんをトイレに案内する。
インドールさんをトイレまで案内した後、私は冷たいお水と温かい飲み物を用意した。どっちか飲みたい方を選んでもらおう。
「お嬢さん、ちょっと塩っ気のあるモノを用意したら喜ばれると思うで。」
「塩っ気?」
「せやせや、ラーメンやお茶漬けみたいな。」
「〆ですね分かります。」
良く聞くけどさ、お酒飲んだ後にラーメン食べるとかお茶漬け食べるとか。…ラーメンはギルティな感じが凄いから、お茶漬けにしようか。
「むきゅう…う、琴姉、お帰りなさい。」
万能ネギを刻んでから、何か良い感じの常備菜ないかなぁと冷蔵庫を漁っていたら、ズボンがセットになってるネグリジェを着た、寝惚けた、小春が奥から出てきた。…うん、天使かな?
「あ、ごめん。小春、起こしちゃった?」
「ん〜ん、眠いけど…大丈夫なの。」
何て健気なの小春ぅっ!!と言う衝動は、奥歯を噛み締めて堪えた。いくら近所迷惑にならないといっても、流石に夜に非常識だ。
私が小春の可愛さを内心で耐えつつ、お茶漬けは刻んだネギとちりめんじゃこと刻み海苔で良いかと決めた時、お手洗いを済ませたインドールさんが戻ってきた。…あんなに泣いて、興奮による発汗もあったから、やっぱりと言うべきか大分化粧が崩れている印象を受けた。
「インドールさん、化粧落としシートと…あ、蒸しタオル作りますけど使います?」
「…どっちも使います……ふえぇ、お母さん優しいよぉ…。」
……ん?
化粧落としシートを差し出した時、散々学生時代に聞いた事ある単語が聞こえた気がした。……まぁ、今はインドールさん酔ってるみたいだし、大目に見ておこう。
「きゅい?えっと、えっと…。」
「ああ、インドールさ…じゃなかった。ジャスミンさんだよ。」
そう言えば、小春にとってインドールさんはオリエンテーションぶりだったな…と言うか、小春インドールさん覚えていたのか。
「じゃちゅみんさん!!……う?」
あああっ!!今日ココイチで萌えた!!あああっ!!
興奮をぶつける様に、濡らしていた蒸しタオル用のタオルを、思いっきり絞った。分かるけどね?何か上手く発音できないとかそう言うの分かるけどね?可愛すぎかよ小春よぉぉっ!!
影の精霊でそのタオルを包み、流れるように電子レンジに投げ入れた。まだ萌えで変なテンションなんだよ。
「その方とは、幼馴染みなんですか?」
蒸しタオルが出来たタイミングで、蒸しタオルとお水が入ったコップを持って、化粧を落として少し肩の力が抜けているインドールさんの元へ向かった。
お水と蒸しタオルを差し出す時にそこはかとなく話をぶり返せば、インドールさんは表情を少し暗くさせた。
「いいえ…学生の時、一緒で…。」
負のスパイラルにでも嵌まったのか、またインドールさんの目に涙が溜まって、蒸しタオルに顔を埋めてしまった。…それ、苦しくないか?
今度はどうしようかと、少し思案した時…小春がトテテとインドールさんに駆け寄った。
「きゅう…じゃ、ジャスミンさん?泣いてるの?どこか痛い?」
一瞬噛み掛けたのが可愛いなぁと思った矢先、小春がインドールさんを慰める姿に胸キュンした。良い子。小春凄い良い子。
「はぁ…何ですか天使なんですかぁ…。」
「て、天使?私は、私だよ?」
インドールさんが口にした言葉に、ちょっと私ドキッとしました。く、口に出てたのかと思った。




