21話 起きてから相手するから…。
明日一日の休日を死守する為に、ルナさんに今日一日小春を泊めて欲しい旨をメールし、出来るだけ現場で事情を説明して、家に帰ってからは…我ながら凄い集中力で報告書を作成した。日を置いてしまうと、落ち着いて物事が見える変わりに多少記憶が曖昧になってしまうからね。勢いって大事だ。誤字脱字や表現のミスとか怖いけど。
「ああ…終わったぁ。」
首をグリグリ回しながら時計を見ると、日は辛うじて跨いでいた。まぁ結構現場に居たからなぁ。仕方ないか。
明日はこの報告書を受付で渡してから…どうしようか。
色々考え出したらお腹が可愛いげなくなった。しかし、あ〜…ここからご飯食べたりお風呂入ったりするの面倒だなぁ。カップ麺って気分でもないし。…深夜にカップ麺とか怖いわぁ、あらゆる意味で。
「お嬢さん、お嬢さん。こちらに一肌より二・三度高い温度の手頃サイズなウチが居るんやけど…目や肩にどない?」
「多分速攻で寝落ちするから、今は良いや。」
何かそんな感じの商品売ってるけども…影の精霊だったら、低温ヤケドの心配もないだろうけども…この疲労感で目や肩、首回りや腰を温められたら、絶対寝落ちする。
別に、それは悪い事ではない。疲れているなら食事より睡眠を優先すればいいだろう。…でも、何か良く分からないが、寝ようかなと思った直後にお手洗いに行きたいとか、何か軽く胃に入れたいとか、思ってしまった。…そう言えば、警察署から今まで食事もお手洗いも行ってないな。
何だ単純な事だったと一人で納得して、お手洗いに行ってから何となくキッチンに向かうと…少しだけ気力が湧いたので、食事を作る事にした。と言っても、何かこうガッツリした料理じゃなくてアッサリしたモノだけど。…今は、何となく塩味のモノを食べたい気分じゃないんだよなぁ。
冷蔵庫を開けたらリンゴとヨーグルトがあったので、リンゴを皮付きのまますりおろして、ヨーグルトのパックににダイレクトに入れて混ぜただけのリンゴヨーグルトを、まるで流し込む様に食べた…いや、この場合『流し込む様に』ではなく『流し込んだ』の方が正しいか。咀嚼してないし。
…うん、平時の私だったらドン引きしてるかもなぁ、コレ。今は非常時だから特に何も思わないけど。
「お嬢さん、お嬢さん。それ無糖のプレーンヨーグルトやったけど、リンゴだけで甘さ足りたんか?」
「あ〜…このリンゴ甘かったから、意外に平気だったわ。」
次作る時はハチミツとか足そうかな…まぁ何にせよ、これで食事の面はクリアしたな。お風呂は…面倒だから、浄化魔法で済ませてしまおう。温かいお湯に体を沈めてリラックスしたい気持ちより、フカフカのお布団に包まれて寝ていたい欲の方が強い。一肌より二・三度高い温度の影の精霊を目や肩や腰に配置すれば、適度な温もりで絶対安眠できる。
「お嬢さん、お嬢さん。どうせウチをそこに配置するんやったら、いっその事マッサージしよか?お疲れやろ?」
「影の精霊マッサージ、ねぇ。ううん…。」
影の精霊マッサージは…気持ち良いには良いのだ。どこで培ってきたのか、とても絶妙に体を解していって、寝て起きたら昨日の疲れがサッパリなくなっている。…だが、マッサージを受けている時に色々と…何か色々と複雑な気分になるのだ。マッサージ受けてるのに疲れると言うか…体は軽いのに精神的に重たいと言うか…。
「もう一人の部屋やし、今日はキツネさんも居らんから大きな声で喘いでも問題あらへんで?」
「喘ぐ言うな。」
確かに影の精霊のマッサージを受けている時に色々聞かせられない声は出るけど…声が聞かれなかったら良いと言う問題でもない訳で。
そりゃ、少し足がダルいとか肩や背中が凝り固まったなぁとか感じるけど、自分でセルフマッサージすればどうにかなる範疇だから。
「む〜、お嬢さんったら強情やねぇ。今はそんな頑なスイッチでも入っとるんか?」
「単に普通に寝たいだけだと思います。」
兎に角今は私を布団に横たわせてくれ…何だかんだしてても眠たいんだよ。




