117話 何気ない日常のままが一番。
影の精霊から聞いた事件のあらましや、日辻さんの可能性?に思う所がなかった訳ではないが、小春モフモフしたし、ご飯もしっかり食べたし、お風呂にもゆっくり浸かったし…身体的にも精神的にも結構癒されたので、その日は普通に眠った。私が気に病んでも仕方ないからね。今回は一応部外者だし。
そして、朝。いつもの様に朝の支度をしていると、ふとルナさんの事が頭を過った。
「まぁ…自業自得とは言え、大変そうですからね。これくらいは良いでしょう。」
まだ時間に余裕があったのもあり、私はルナさん用にと簡単な軽食を作った。本当、ルナさんのお腹事情を鑑みなくても気持ちばかりの量の軽食だけど…昨日の夕飯や朝ご飯の残りで作ったから、勘弁してほしい。
「日辻さん、コレをルナさんに渡しておいてください。もしルナさんが要らない様でしたら、日辻さんが食べても構いません。」
「めぇ…カツサンド、タマゴマヨサンド、ハムレタスチーズサンド…めうめ、王道。キュウリのサンドイッチは、作らなかったの?美味しいよ?」
既に手頃な布巾に包んでいたのにも関わらず、日辻さんは私が作ったサンドイッチの中身を当てた。
作る過程を見ていた感じはしなかったけど…いやはや、日辻さんったら良く見てるなぁ。確かに、スーパーやコンビニで売っているミックスサンドのパックだと、タマゴマヨ、ハムとキュウリ…後はたまにツナマヨが入ってるイメージだよね。
ハムとキュウリのサンドイッチの、辛子が入ったマヨネーズとキュウリの組み合せ…私好きなんだよねぇ。ツーンと鼻を抜ける辛子の辛さを、キュウリが爽やかにしてくれて…ハムはね、たまに先に食べちゃう時があるから…ね。
「それが、キュウリを朝ご飯で使い切ってしまったんですよ。私もキュウリのサンドイッチは好きなので、出来たら作りたかったのですが。」
「めう…め、また次がある。」
…それって、私はまたこうしてサンドイッチを作らないといけなくなるフラグなのだろうか?まぁ、サンドイッチくらいなら…。
いや、ここで安易に作るとか言ってしまうと、何かアホみたいにサンドイッチを作らないといけなくなるだろう。…考え過ぎかもしれないけど、それを笑い飛ばせるには…私のフラグ達成率が割りと高いのがね。笑えない。
煮込み料理なら兎も角、サンドイッチは作るの面倒だなぁ…と思いながら日辻さんに曖昧な笑顔を向けて、小春に行ってきますのハグをしてから外に出た。
「…わぁ、もうニュースになってますね。」
ギルドに着くと、昨日のあの刃傷沙汰『だった』事件が、すっかりニュースになっていた。まぁ、バスの中で確認した全国版のニュースサイトにも載ってたし、近所の事だし…なおかつネタがネタだし…そりゃ話題にもなるか。
「ねえねえ、夜風さんっ!!」
「コスモクロアさん?」
今日の予定を確認して、最近事務部の仕事多いなぁ…とか思いながら席に座ると、コスモクロアさんがスマホ片手に興奮気味に私に駆け寄ってきた。そのスマホの画面には、恐らく今話題に上がっているニュースが載っているのだろう。
「ねぇ、今朝のニュース見た?あんな事件が近所であったなんて…ギルド職員としては、気付かなかった事が恥ずかしい限りなんだけど、それでも何だか凄いわよねっ!!」
「そ、そうですね。」
言動が、途中から完璧に野次馬の方に寄ってる…まぁ恋愛系の話って、女性は食い付きやすいネタではあるかなぁ。ただ、まぁ…勢いが凄い。
「コレ、凄いわよねぇ…この、『通りすがりの善良な冒険者』って誰なのかしら?魔法で怪我を治せる人って、割りと多いのよね。」
「さぁ、誰でしょうね〜。」
ニュースでは、私の事は詳しく表記されていない。まぁ、本当にただ通りすがっただけだし。面倒そうだから、関わりたくないし。
私が黙りをしている間に、暫くウンウン一人で考えていた様だが…コスモクロアさんの興味は、直ぐに容疑者と被疑者の関係に移っていった。…ほっ。




