115話 外野が言えた口ではないが。
昨日のうっかり投稿を見てしまった方…すみません。
話の流れはおおよそ変わりませんが、出来る限り加筆修正しましたので、こちらもお楽しみいただけたら幸いです。
相変わらず仕事の早い影の精霊が呼んだ警察に事情を話して、取り敢えず私は一旦家に帰った。あの当事者三人は後日にも事情を聞かれるみたいだけど。いやぁ、久しぶりにこの手の事件で当事者にならなかったなぁ。
ま、それはそれとして…疲れた。早く家に帰って、早く小春に癒されたい…あの軽やかなフワフワモフモフを抱き締めて、顔を埋めて気を抜きたい…脱力したい。
「うきゅ?日辻しゃ…日辻さんなの!!」
「めぇ、お邪魔します。」
「えへへ、いらっしゃいませ、なの!!」
そんな事を考えた時には、もう家が目と鼻の先で…私は何かに急かされる様に帰って、玄関で待ってくれていた小春を抱き締めて、ソファーへ寝転がった。…今日着ている服は影の精霊特製の服だから、シワとか寄れとか気にしなくて良いから楽だ…。
そして、小春と日辻さんの会話が凄くほのぼのしてて和む…やっぱり知ってる人?が来ると嬉しいのか、心なしか小春の声が弾んでる様に感じる。……日辻さん、『お友達』までは許しますが、それ以上は私は認めませんからね。
「お嬢さん、何勝手にジェラシィしとるん。」
「うるせ…はぁ、小春モフモフ…癒される。」
「ふふ、琴姉よしよし。」
あまりに私が小春に甘えていたから小春の中の母性が刺激されたのか、小春が私の頭を撫でてきた。…こ、小春のモフモフボディーに顔を埋めてて良かったぁっ!!
人型の姿ではなくキツネの姿では、体の造りの構造上撫でにくいだろうに…それでも頑張って私の頭を撫でてくれる小春の姿にキュンとする。
「めう。……はっ、豚カツ!!」
日辻さんからの豚カツと言う叫びに、ああ…そう言えば日辻さんを巻き込んだ時に、日辻さんのリクエストを聞くとか何とか言っていたなぁ…とボンヤリ思った。今はちょっと、小春に癒されていたい。
「完全に気が抜けた見たいやなぁ、お嬢さん。…そんなお嬢さんに、今回の事のあらましを勝手に、耳元で、囁くでぇ!!」
「影の精霊、耳元と言うか耳の中?で大きな声を出さないで下さい煩いです。」
いつもはそれなりに気を使って、必要最低限のボリュームなのに…何で今回はこんなにテンション高いんだよ。訳分かんない。こちとら癒されてる真っ最中なんだよ気を使え。
「まぁ、例のごとく意味はないノリなんやけど…強いて言うなら、お嬢さんの不快度指数をジリジリ上げて、最終的には、お嬢さんの我慢が出来なくなった時に出るキッツイお仕置きを楽しみにしとるくらいやろか!!」
何度も聞いた分かりきった答えで、もう何も言えない…全く、影の精霊は自分の欲に素直だなぁ。…だったら、私も今は自分の気持ちに素直になる。癒される。
暫く小春に癒されてから、私は影の精霊に向き合った。私だって、何がどうなってしまって、あんな修羅場になったのか…何だかんだ気になってはいたのだ。
我ながら下世話だなぁと内心苦笑いしつつ、影の精霊の次の言葉を待つ。
因みに小春は、日辻さんの計らいでこの場に居ない。…美味しい豚カツ作らなきゃなぁ。
「まぁ、アレですね。やっぱり、恋愛と言うモノは人を惑わせるんすね。」
影の精霊が不気味なほど笑顔で話した、あの昼ドラみたいな修羅場のあらましは…思っていた通りだったが、ある意味とても想外だった。
取り敢えず、話を聞いて先ず口から出た言葉は、これだった。もうなんか…これしか言えない。
ザックリ言えば、かつて好き同士だった相手が、急に別れを切り出され…しかも別れた理由がまさかの異性と結婚する為…その事に気を病んで、病んだ末に、あのナイフ男はドロドロとした感情に飲まれた…らしい。
そう。あのナイフ男が傷付けていたのは、『恋敵』ではなく…かつて『自身の恋人』だった相手だったのだ。
展開が意外過ぎて、もう何てコメントすれば良いのか…え、まさか現在の恋人――いや、この場合は婚約者か。その婚約者の女の人の前で、自分の好きな人を自分の気持ちのままなぶってたの?
「ウチ的に!!凄くアリ!!やけどな!!」
「アッハイ。」
「はぁぁん…雑やなぁ。」
何だろう…相手を殺して自分も死ぬ気だったのだろうか。と言うか、あのグッタリしていた男性…どっちも大丈夫な人なんだ。何か、影の精霊以外でそんな人初めて見た。
「同性愛者って、結構病みやすいらしいで。」
「それは、私も聞いた事あります。」
例え好き同士だったとしても、国が受け入れてくれてても、やっぱり世間から見たら少数派な訳で…ちょっとした事で相手の気持ちを疑ったり、気持ちがすれ違ったりしてしまって…みたいな事は聞いた事ある。…いや、それでも刃傷沙汰はイカンですが。
「因みに腰から下げてたナイフは、相手に突き立てたら自分にも同等のダメージが入る逸品やったんやで!!」
「ろくでもねぇ…。」
興味本意で聞くには濃すぎた話に、私はソファーにグッタリと倒れ込んだ。




