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<第九話>


今起こっていることについて、僕が認識できるのは悪い犬型影と太陽の力を操る坂城が対峙しているということだけ。これから自分はどうなるのだろうだとか、あの黒い物体が現れた仕組みだとかは考えられず、ただ暗い路地裏での対決を呆然と眺めることしかできない。

「すっかり侵されているね。・・・じゃあすっきりとキミを消してあげるよ」

坂城は掌を影の犬に向けた。

犬はそれに反応して身構えた。唸り声をあげる。

その時、薄暗いはずの雲のせいで暗鬱とした路地裏に光が生じた。それは坂城の掌から発せられる光。坂城曰く太陽の力。

『ガァァァアアア!』

影の犬が跳躍した。黒い塊が坂城に襲いかかる。しかし、坂城は避けようとしなかった。光を放つ掌を犬に向けたまま構えを崩さない。

僕はただ見ているしかなかった。一介の高校生男子が勇気を捏造して立ち向かって良い物ではないと分かったからだ。分かっただけマシだと思った。

「さよなら、」



白い閃光が視界を包む。音はない、感覚もない。ただ白いだけ。

急に視界が暗転。しかしそれは元の薄暗い路地裏が視認されたというだけ。幾ばくかの白い閃光の余韻を残しながら僕の眼は順応していく。

坂城は立っていた。背中しか見えないので表情は分からない。しかし背中から疲労困憊な様子が見て取れた。

影の犬は、消失していた。もしくは蒸発した。影も形も見えなかった。

「やはり、自分の身体からエネルギーを出すというのは疲れるよ。困憊しきったね」

坂城が振り向いて言った。

顔には隈が出来ていた。坂城の白い肌には似つかわしくない。

「さてまあ、君も見ただろうけどさっきのが影だよ。全ての影がああなるわけではけれど」


「ずいぶんと凶暴なんだね」

僕はやっと口を開けた。なんとか口ごもらずに言葉を紡げた。


「ああ。だから僕たちが影を消す。さっきのようにね」


影は太陽世界を脅かそうとする存在。だから坂城たち『太陽の子』は影を消す。それはもう既知だ。


「しかも、」

坂城は続ける。

「人間が襲われることもあるしね」

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