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54話 脱走

神様サバイバル9日目

「これでどうだ?」


不知火が取り出した一本のダイナマイト。

部屋の空気が止まった。


盗丸が固まる。


「お前……なんでそんなもん持ってんだ?」


楓も一歩下がった。


「いや待ちなさい」


廃人が額を押さえる。


「焔くん?」


的場だけが目を輝かせた。


「おっ」


不知火は平然としていた。


「脱出するんだろ?」


「なら使える」


数秒の沈黙。


そして。

盗丸が頭を抱えた。


「いやまぁ……」


「使えるけどよぉ……」


数十分後。

五人は床へ簡単な見取り図を書いていた。

盗丸が指でなぞる。


「この部屋の換気ダクトがここ」


「で、その先が外壁近くを通ってる」


廃人が覗き込む。


「爆発で崩せそう?」


盗丸は頷く。


「多分な」


「ただ爆発位置がズレたら終わりだ」


「下手したら俺達も終わる」


「そこは気合いだな」


と的場。


「気合いで済ませるな」


楓が即座に突っ込む。

作戦は決まった。


ダイナマイトを換気ダクトへ入れる。

爆発の衝撃で外壁を破壊。


その隙に脱出。

実行は0時。


神が現れる時間だ。

全員が個人モニターや空を見る。


囚人達も。

見張りも。


一瞬だけ注意が逸れる。

そのタイミングを狙う。



作戦が決まると。

少しだけ空気が緩んだ。


盗丸は壁にもたれる。

楓が隣へ座った。


「ねぇ」


盗丸が視線を向ける。


「なんで逃げたのよ」


その問いに。

盗丸は苦笑した。


「まだ気になるか」


「気になるわよ」


即答だった。

盗丸は天井を見上げた。


「怖かったんだよ」


楓は黙る。


「金剛はやべぇ、昔からやべぇ」


「今もやべぇ、でもな」


少し間を置く。


「死刑決まってからは違った」


「穏やかだったんだ」


盗丸の脳裏に。

あの日の電話が浮かぶ。


携帯を握る金剛。

電話の向こうの声。


そして。

ほんの少しだけ見せた笑顔。


「神様サバイバルが始まって」


「自由になって、また戻っちまった」


楓は聞いていた。

茶化さない。

珍しく真面目に。


盗丸は続ける。


「おれさ、探してたんだよ」


「金剛を止められる奴を」


楓が眉をひそめる。


「止められる奴?」


「あぁ」


盗丸は頬をかいた。


「電話だ、

死刑決まった金剛が、唯一笑った日」


「誰と話したか知らねぇ、

でも絶対そいつだと思った」


部屋が静かになる。


廃人も。

不知火も。

聞いていた。


「だから探そうとした、

そいつを」


「でも今考えたらよ」


盗丸は苦笑した。


「バカだった」


「懐中時計だ」


楓が首を傾げる。


「時計?」


「金剛が必死に探してるやつ」


盗丸は頷く。


「その中にヒントがあったんだろうな」


「写真とか、名前とか、

そんなもんだ」


頭を掻く。


「気付いた頃には」


周囲を見回す。

鉄格子。


コンクリート。

囚人達の刑務所。


「懐かしの五人部屋だ」


誰かが吹き出した。

廃人だった。


「たしかに遅かったねぇ」



時刻。


23時50分。


向かいの檻。

橋本恵がこちらを睨んでいた。

楓と目が合う。


「楓」


「アンタ逃げる気でしょ」


楓が嫌そうな顔をする。


「は?」


橋本は鉄格子へしがみついた。


「連れて行きなさいよ!」


「じゃなきゃ叫ぶわよ!」


不知火が楓を見る。


「知り合いか?」


楓は即答した。


「知らない」


橋本が絶句する。

楓はさらに続けた。


「ダイナマイトがもう一本あるなら」


「向こうの檻に投げたいくらい」


「ちょっ!?」


橋本が叫ぶ。


23時55分。

全員が立ち上がる。

不知火が換気ダクトを指差した。


「いいか」


「おれがあそこのランタンで火を付ける」


「そしたら――」


その時だった。

橋本が息を吸う。


嫌な予感。

楓の顔色が変わった。


「ちょっと待――」


遅かった。


「こいつら逃げようとしてるわよーーー!!」


刑務所中へ響く大声。

盗丸。


「うわぁぁぁぁ!?」


楓。


「ばっ、ばか!!」


廊下の奥。

慌ただしい足音。

囚人達の怒号。


「どうした!?」


「今の声なんだ!?」


「見に行け!」


盗丸が顔面蒼白になる。


「終わったぁぁぁ!!」


だが。

不知火だけは冷静だった。

無言で導火線へ火を近付ける。


シュゥゥゥ……


「あ」


楓が固まる。


「焔くん?」


廃人が後退る。


「ちょっと待って?」


導火線は止まらない。

不知火は淡々と言った。


「間に合わん」


そして。

換気ダクトへ放り込む。


数秒。


沈黙。


迫る足音。


囚人達。

そして。


ドゴォォォォォォォンッ!!!!


刑務所が揺れた。

消滅ワード


1日目 “法律 ”

2日目 “ 電気”

3日目 “ 罪悪感”

4日目 “ 鍵”

5日目 “ 痛覚”

6日目 “ 肉”

7日目 “ 地図”

8日目 “ 鏡”

9日目 “ 約束”

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