37話 心配いらない
神様サバイバル8日目
【人類残り65%】
爆発音は、朝の静けさを容赦なく引き裂いた。
ドカァァァァンッ!!
地面が揺れる。
熱風。
破片。
ホームセンター入口の見張りが悲鳴すらまともに上げられず吹き飛んだ。
数秒遅れて。
「敵襲ぅぅぅ!!!」
怒号が建物の奥まで響く。
「伏せろ!!」
不知火が叫ぶ。
ほぼ同時。
パンッ!!パンッ!!
本物の銃弾が頭上を掠めた。
壁が砕ける。
商品棚に穴が開く。
「うぉぉぉぉ!!」
的場だけテンションがおかしかった。
「ダイナマイトつえぇぇぇ!!」
「お前聞け!!」
不知火が怒鳴る。
盗丸は即座に転がり込んだ。
「くそっ!」
「もうバレてんじゃねぇか!!」
ピエロはすでに動いていた。
無駄がない。
白塗りの顔のまま、
音もなく園芸コーナーへ滑り込む。
大型の観葉植物。
肥料袋。
土。
遮蔽物になる。
不知火も気づく。
(なるほど)
ホームセンター。
ただの店じゃない。
戦場だ。
「こっちだ!」
盗丸が叫ぶ。
洗剤コーナーへ走る。
棚に並ぶ大量のボトル。
迷いなく掴む。
「こういう時はなぁ!!」
ドバァァァァァッ!!
床一面。
ぬるりと広がる洗剤。
その瞬間。
突っ込んできた黒闇の部下。
「いたぞ!!」
「撃——」
ツルッ。
「うぉっ!?」
「ぎゃあっ!!」
派手に転倒。
後ろの二人も巻き込む。
「ナイス!!」
的場が笑う。
転んだ男の顔面に蹴り。
鈍い音。
一人沈む。
「いいねぇ!!」
その横で。
カチッ。
導火線。
不知火が振り向く。
的場。
またダイナマイト。
「待て待て待て待て!!」
飛びつく。
「なに!?」
「なんで止める!?」
「この距離だぞ!!」
「?」
「俺たちも吹っ飛ぶだろ!」
数秒。
的場が固まる。
「あ」
納得した。
ホームセンター奥。
黒闇は静かに報告を聞いていた。
「侵入者です!!」
「四人!!」
「またあいつらです!!」
黒闇の目が細くなる。
不知火。
的場。
前回の襲撃。
思い出していた。
「……懲りんな」
壁に立てかけてあった銃を取る。
金属音。
「今度は確実に息の根を止める」
低い声だった。
⸻
「まだまだあるぜ」
盗丸がニヤついた。
ペットコーナー。
「え?」
不知火が止める前に。
ガチャッ。
檻。
開放。
「わんわんわんわん!!!」
「シャーーーーッ!!!」
犬。
猫。
一斉解放。
店内を駆け回る。
「ぎゃああ!!」
「猫!!猫!!」
部下の顔面に猫パンチ。
別の男の足に犬が噛みつく。
「離せ!!」
「うぉぉ!?」
混乱。
「犬つえぇ!!」
的場大喜び。
さらに。
盗丸。
消火器。
ピンを抜く。
ブシャァァァァ!!
白煙。
視界ゼロ。
「な、なんだこれ!?」
「見えねぇ!!」
混乱。
不知火が飛び込む。
ヌンチャク。
一撃。
二撃。
「ぐっ……!」
倒れる。
ピエロ。
無言で部下を拘束。
手際がいい。
口を塞ぐ。
紙を出す。
【女子供の場所】
部下の顔面蒼白。
「い、言う!!」
「言うから殺すな!!」
盗丸が笑う。
「物分かりよくて助かるわ」
数分後。
ホームセンター奥。
女子供の小屋。
あと少し。
空気が変わった。
「そこまでだ」
低い声。
全員止まる。
黒闇。
その後ろ。
武装した部下たち。
本物の銃。
こちらを向いている。
圧。
明らかに今までの雑魚と違う。
的場だけ笑っていた。
「おぉボスのお出ましか」
パンッ!!
即応。
柱が砕ける。
「くっ!」
不知火たちが隠れる。
圧倒的不利。
こちらの銃は的場だけ。
的場が捕まえた部下を引っ張る。
「こいつ盾にして進む?」
部下絶叫。
「やめてくれぇ!!」
「蜂の巣になる!!」
「まぁ、それもそうか」
軽い。
黒闇が叫ぶ。
「お前ら何の用だ!!」
声が響く。
「なぜ邪魔ばかりする!!」
不知火が顔を出す。
「女子供を解放しろ!!」
「奴隷にしてる男たちもだ!!」
黒闇。
一切迷わない。
「断る」
「なっ——」
その瞬間。
騒ぎを聞きつけたのか。
小屋の扉が開く。
女子供が、ぞろぞろ出てきた。
怯えた顔。
不安そうな母親。
泣きそうな子供。
その中。
ピエロの目が止まる。
一人の少女。
少女も止まる。
見つめ合う。
黒闇が振り返る。
「お前たち!!」
「中へ戻れ!!」
だが。
ピエロは前へ出た。
ゆっくり。
誰も止められない。
そして。
踊り出した。
ムーンウォーク。
パントマイム。
ぎこちないようで、
無駄のない動き。
「……は?」
黒闇の部下が呆れる。
「おかしくなったのか?」
一人が銃を向ける。
その瞬間。
ピエロが上着を開いた。
沈黙。
全員、凍る。
身体中。
びっしり巻かれたダイナマイト。
導火線。
火がつけば終わる。
黒闇の部下が一歩下がる。
「マジかよ……」
「イカれてる……」
違う。
ピエロは少女だけを見ていた。
ただ。
心配させないように。
無言で踊る。
朝のホームセンターで。
爆弾を抱えた道化が。
一人の少女のためだけに。
消滅ワード
1日目 “法律 ”
2日目 “ 電気”
3日目 “ 罪悪感”
4日目 “ 鍵”
5日目 “ 痛覚”
6日目 “ 肉”
7日目 “ 地図”
8日目 “ 鏡”




