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焦熱の牙を持つ者たち


「試合開始――!」


リカルド先生の声と同時に、紅と黒の間に火花が散った。


「燃え尽きろ!」


ユリウスが一歩踏み出した瞬間、足元から炎が噴き上がった。赤熱した剣先が稲妻のように突き出される。


「ルカ、下がれ!」


ブランが飛び込み、大剣で炎のレイピアを受け止めた。金属音と共に火花が弾け、観客席がざわつく。


「ほう……防いだか」


ユリウスの瞳が愉快そうに細められる。


「ブラン!」


僕は慌てて叫ぶが、背後から別の声が響いた。


「視線が甘いな、虚無の坊や」


フランが槍を滑らせるように突き込んでくる。


「うわっ!」


咄嗟に剣を上げた。けれど、体勢は崩れる。


《集中しろ、相棒。あの二人は手加減しねぇ》


「できるかぁぁぁぁ!」


僕は必死に踏みとどまったが、足がすべりそうになる。



「ストーンシールド!」


マルコが土壁を張り、僕とフランの間に割り込ませる。

だが、炎の槍に貫かれて一瞬で崩れ落ちた。


「なっ……!?」


「土か。火に弱いのは当然だな」フランが鼻で笑う。


「くそっ、舐めやがって!」マルコが額に汗を浮かべる。


「小物は小物らしく地面に這いつくばってろ」

フランの一撃一撃は冷酷で、槍の突きは蛇のように鋭い。



「お前らが蒼に勝った? 滑稽だな」


ユリウスが踏み込み、炎の突進が迫る。


「うわああっ!」僕は慌てて剣を振るう。


すると黒い霞が弾け、炎の軌道が一瞬だけ途切れた。


「おや……今のは?」ユリウスが眉を上げる。


「“虚無”か。なるほど、だから奇跡を起こせたわけだ」


《よし、その調子だ! 相手の魔法を“掴んで”消せ!》


「わ、分かってるけど! 怖いんだよ!」


(炎に突っ込むとか死ぬって!)


「なら死ね!」ユリウスが再び突きを繰り出す。

炎の線が迫る。喉が焼けるほど熱い。


「ルカッ!」ブランが横から火球を放ち、ユリウスの注意を逸らす。


「行け!」


「い、いけって言われてもぉぉぉ!」


僕は必死に剣を突き出した。

黒い点が軌道を裂き、炎の突きが霧散する。


観客席がざわめいた。


「今の……消した?」


「やっぱり虚無は反則じゃ……」



「なるほど、魔法を消すか」ユリウスが不敵に笑った。


「だが、俺たちの技は魔法だけじゃない」


「そういうことだ」フランが割って入る。


槍を大きく振るい、炎の弧を描いてブランとマルコを押し込む。


「ぐっ……重い!」ブランの大剣が押し返される。


「マルコ、サポート!」


「やってるってば!」


土槍が放たれるが、フランに軽く弾かれる。


「その程度か。お前たちは俺たちの足元にも及ばない」


「ふざけんな! 俺たちだって――!」ブランが吠えた。


「だめだ……」僕の喉から声が漏れる。


「僕らじゃ、勝てない……」


《黙れ! ビビる暇があるなら剣を握れ!》


「ひぃぃっ!? わ、分かったから脅さないで!」


心臓が張り裂けそうなまま、僕は剣を構え直した。



再び、紅の二人が同時に踏み込んでくる。

炎槍と炎剣、二つの殺意が交差する。


「ルカ、今だ!」ブランが叫ぶ。


「一瞬でいい! お前の“虚無”で――!」


「わ、分かってる! やる! やるからぁぁぁ!」


僕は震える手で剣を突き出した。

黒い裂け目が走り、二人の攻撃が一瞬だけ止まる。


その刹那――ブランとマルコが横から同時に叩き込んだ。


炎と土の衝撃波が爆ぜ、闘技場が揺れる。


「……っ、今のは……」ユリウスが眉をひそめる。


「へぇ。ちょっとは面白いじゃねぇか」フランが口の端を吊り上げた。



観客席から歓声と嘲笑が入り混じる。


「黒が……押した!?」


「いや、偶然だ!」


「でも、今のは……!」


僕は息を荒げながら剣を握る。

「はぁ……はぁ……無理だって……これ以上は……」


《まだだ。まだ“喰える”。お前は虚無だろうが》


「ひぃぃぃ! 頼むから優しくしてぇぇ!」


笑い声と歓声の渦中で、紅と黒の戦いはますます熱を帯びていく――。



紅クラスとの戦いがついに始まりました。

ユリウスとフラン――その圧倒的な実力に、ルカたちは翻弄されっぱなし。

ですが、ネメシスの煽りと仲間の必死のサポートが、ルカを一歩ずつ前に進ませます。

次回は、彼らの戦いがどんな結末を迎えるのか。ぜひ見届けてください!


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