「黒クラス、散る」
「燃えろぉぉぉ!」
ユリウスのレイピアが大地を薙ぎ払った瞬間、炎の奔流が結界いっぱいに広がった。
「ぐあっ……!」
マルコの土壁が一瞬で蒸発し、僕らは熱気に押し潰されそうになる。
「ははっ、これが紅だ!」
フランが槍を振るい、炎の竜巻がブランを飲み込んだ。
「ブラン!」
「大丈夫だ! まだ立てる!」ブランは歯を食いしばり、大剣で火の渦を押し返す。
《おい相棒、どうする? このまま燃えカスになるか?》
「む、無理だって! 火も槍も速すぎる!」
「まだ立つか。だが――」ユリウスの瞳が赤く輝いた。
「“炎帝の継承”の意味、教えてやる」
炎が剣先に凝縮され、一本の赤い閃光となって突き出される。
「やばい!」
僕の体が勝手に反応した。虚無が黒い点となって軌跡を食い破る。
だが――消したのは半分だけ。残りの炎が肩を掠めた。
「うっ……!」
焦げた匂いが広がり、観客席から悲鳴と歓声が入り混じる。
◇
「ルカ!」ティアが控え席から立ち上がりそうになる。
「だ、大丈夫! まだ……動ける!」
僕はふらつく足を必死に踏ん張った。
《いいねぇ、その顔だ。死ぬ寸前の獲物みてぇで最高だ》
「励まし方間違ってるよぉぉ!」
◇
「小物のくせに粘るな」
フランの槍が風を切り、僕の胸元へ突き出される。
「させるかよ!」ブランが割り込み、火花が散った。
「ルカ! お前しか止められねぇんだ! やれ!」
「ぼ、僕が……!」
足が震える。でも、二人が必死に繋いでくれている。
(ここで逃げたら、本当に全部終わる)
「うぉぉぉ!」
僕は喉が裂けそうなほど叫び、剣を振り下ろした。
黒い奔流が広がり、紅の炎と槍を一瞬だけ掻き消す。
観客席が息を呑んだ。
「消えた……!」
「紅の攻撃を止めたぞ!」
◇
「へぇ……やるじゃねぇか」
フランが口角を上げた。
「でもな、小僧。そいつは“消すだけ”。殺しきれねぇ」
ユリウスが剣を掲げ、燃え盛る炎を一点に凝縮させる。
「終わりだ。“クリムゾン・ドライブ”」
炎の刃が直線となって迫る。
「ルカ!」
「今だ、掴め!」
《喰らえ! 全部喰い尽くせ!》
「くそぉぉぉぉ!!」
黒い裂け目が奔流を飲み込んだ。
炎と虚無がせめぎ合い、結界全体が揺れる。
数秒――いや永遠に感じる刹那の後。
炎が虚無を押し切った。
「ぐあああっ!」
爆風に吹き飛ばされ、僕は地面に叩きつけられた。
◇
「……勝者、紅クラス!」
審判の声が響く。観客席から歓声が爆発した。
「やっぱり紅だ!」
「黒なんて所詮、奇跡止まり!」
僕は朦朧とした視界の中で、ブランとマルコの必死の顔を見た。
ティアは泣きそうな瞳でこちらを見つめている。
《惜しかったな、相棒。でも……悪くねぇ》
「……うん……僕も……少しは……」
意識が闇に沈む。
黒の挑戦は敗北に終わった。
だが、その爪痕は確かに刻まれたのだった。
ここまで読んでくださり
本当にありがとうございます!!
紅クラスとの戦いは黒クラスにとって大きな壁となりました。
結果は敗北――けれど、確かに爪痕は残したはずです。
ここからルカがどう成長していくのか、ぜひ見守ってください。




