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357.巨大英雄、ゴドラン、東国伝説

 ショーウェイの超騎士団シリーズっぽい作品を1本で終え、リック社長は次回作を勝手知ったる巨大変身英雄モノとした。


 打ち出した構想は…。


 未来の軍隊。

 最強巨大兵器の素材として志願し、晴れて巨人兵となった男。

 その姿は、巨大ゴーレムというより、巨大にして華麗な装飾を施した騎士そのものだった。


 だが、非戦闘員を殲滅しろという非人道的な命令を拒んだため、機能を停止させられ、機能を停止され破壊される事となった。


 しかし彼は死ねなかった。

 破壊される直前に脱走した。


 軍は更に巨大生物兵器を生み出すが、ついにそれらが社会に牙を剥き、未来都市を蹂躙し始める。


 その時、優しい心を持ち続けていた「彼」が忽然と現れ、戦いを繰り広げる。

 自分の同類である生物兵器を倒し、未来の軍隊から追われつつ孤独に戦い続ける。


 その一方で。

「彼」の動向に注目し、その正体、誕生した経緯、軍の内部に注目し、「彼」を救わんと動き出す王国の情報部が動き出す。


 果たして「彼」は救われるのか、闇の中葬り去られるのか。

 王国の暗部は真実に辿り着けるのか。


 身長10m程度の巨大騎士対巨大生物兵器が未来の街並の中迫力ある戦いを繰り広げる。

 巨大騎士の戦闘スタイルは、現代の騎士の礼に則ったもので、能力が高まると剣が光線を放つ。


 時に建造物の中で戦いを繰り広げ、逃げる人々を巧みな合成で守りながら戦う巨大騎士。


 何しろ特殊技術(テレビでの特技監督のクレジットは、ヨーホー映像とトリック特技プロでは「特殊技術」となっている。ショーウェイでは「特撮監督」としている)は剣聖デシアスである。生半可な殺陣は許していない。

 彼がスカウトした騎士の剣裁きは流石に見事で、高速度撮影でもそのブレない剣戟は美しい。


 未来、巨大という空想的要素を纏いつつ、母国の軍に裏切られつつも尊厳を失わない騎士の姿をリック社長とデシアス監督がフィルムに収めた。


 この企画、「エクィエス・ギガソリタリティス(孤高の巨大騎士)」

 26回放送で1億5千万デナリ。最低保証視聴率40%。


 真っ先に飛びついたのは、何とアモルメ王立放送局であった。

 遅れてショーウェイテレビとレイソンテレビが名乗りを上げたが、既に契約した後であった。


 二度リック社長の作品を見送る事になったマッツォ社長は激しく後悔した。

 

******


 一方ヨーホーはゴドランの続編を検討し始めた。


 とはいう物の、大成功に終わった「ゴドランの復活」はリック社長の発想や助言によるところが大きすぎた。


 現実的な政治描写と、怪獣という空想の産物のかけ合わせが絶妙で、その後幾度か企画が出されたが簡単に実現できなかった。


 つまり「ゴドランの復活」同様の政治劇になるか、過去の人気怪獣、特にキメラヒドラやマキナゴドランの人気にあやかろうとする企画ばかりだったのだ。


「いっそ、あのSF作家の先生たちに相談してみてはどう?」

というリック社長の有難い助言に従い、作家陣が招集された。


******


 先ずフルクトゥ・フォルティナ氏が意見した。


「残念だったのは、マキナゴドランだねえ。

 ゴドランが何故この世に生まれ、人間社会を破壊するのか、それが問われないまま、宇宙人の武器となって終わっちゃったのはねえ」


 第二作「マキナゴドランの逆襲」はそれなりにゴドランの影を纏ったものであったのだが、彼の中では四捨五入されて弾かれてしまった様だ。


「今改めて、ゴドランという誰でも知っている怪物の本質を世の中に訴える作品が出来ないだろうかねえ」


 フルクトゥ・ピヌス氏、「内海が広がる時」で名を馳せたSFの大家も心の内を語った。


「リックさんなら何と言うか」

「この打ち合わせに参加しないって事は、これからのゴドラン像はヨーホーで考えて欲しいって事じゃないですかね」

「寂しいねえ!」

 流石高い知性を持つ二人の会話に、ショーキ監督が本音を漏らした。


 この席上で交わされた意見は…。


 ゴドランとは極大魔法という人類が生んだ禁忌の産物である。

 極大魔法については今更新鮮味が無い。これに替わる禁忌は何か。


 宇宙開発の末に宇宙の危険な生物を持ち帰ってしまい、地上で繁殖してしまった、という案。


 ゴドランに対抗する研究を行った学士が、医術、生物知識を駆使しゴドランの「細胞」、体の一部で実験を繰り返した結果、悪質な巨大生物を生み出してしまった、という案。


 いっそ現代的な解釈で、第一作を再作成してはという案も出されたが却下された。


「第二案ですが、医学という先端知識や命の創造という宗教的な禁忌に触れていて、興味深いですね」


「宗教には気を配れ、ってリッちゃんが言ってたなあ。

 色々神殿には相談して描き方に注意しないとな」


「そこまで配慮しての、今までの作品だったんだなあ」

「だからこそ!あの人を超える発想で新作を世に送り出すんですよ!」


 ショーキさんのつぶやきがSF作家の二人の心に火をつけた。


******

 

 こうして新作映画「ゴドランの分身」の検討用台本が書かれた。


 フクさんが放射線障害と遺伝子の関係を調査した。

 そしてゴドランの不滅とも思える命を、遺伝子の異常、放射線障害により元々古代竜が持っていたとされる「死ぬまで成長する」、即ち老化しない特性に更なる自己修復能力を伴わせてしまった、と設定した。


 物語は、ゴドラン対策から始めた研究が更なる恐るべき不滅の命を生み出し、ついに第二のゴドラン、あるいはプロメテの末裔の様な怪物を生み出してしまう。


 自分と同じ種族の血を引く怪物の登場にゴドランが引き寄せられ、互いを抹殺せんと戦う。


 当初は計画が失敗して解散したと発表した研究組織だが、この失敗から得られた知見を独占せんと政治力を駆使し生き残りを図る。


 だが二大怪獣の戦いを引き起こしたため討伐対象となり、組織は他国に権利の譲渡を持ち掛け、国家間紛争が巻き起こる。


 怪獣の戦いは、人間の戦いはいかにして鎮まるのか。


******


「いやあ、凄いね、いいねえ!」

「そう言って頂けて何よりです」

「もう俺いなくても行けるよね?」


 新企画の反応を知りたいとヨーホー映画本社に招かれたリック社長が絶賛し、そして彼らからすれば寂しい事を言う。


「出来れば一緒に企画に参加して欲しかったんですけどね。

 特にショーキさんが」

「ははは!じゃあまた酒樽持って差し入れ行くか!」

「是非そうして下さい」


 肝心のスターである敵怪獣は、自己修復能力の所為か当初は両生類、次いでゴドランの様な二足の古代竜、更に人間の体躯に近い姿に進化すると設定された。


 新作「ゴドランの分身」の製作発表は、「ゴドランの復活」程ではなかったが、怪獣映画の集客力が健在であると思わせる賑わいは見せた。


******


 トリック特技プロで製作中、アモルメ王立放送で放送開始された「エクィエス・ギガソリタリティス(孤高の巨大騎士)」がで大人気となり、26回の予定が39回に延長された。

 そのため、新作の企画を後回しにして延長策が取られた。


 ただ、翌年に控えた条約祭典・諸国物産展、その会場となるテッキ王国から、自国初の王立テレビ放送局設立についてキリエリア放送局を経由してリック社長に相談が持ちかけられていた。


 そして文化振興のためと称して、テッキ王国内に伝わる武神伝説を娯楽兼教養作品として製作できないか、という相談まで持ちかけられた。


「責任重大だなー」


 リック社長はいっそ自国王朝開闢の史実をテレビドラマ化してはどうかと持ち掛けたところ、「両方やってくれ」と言われてしまった。


 流石にそれは無理だと、史実ドラマは宮殿の復元や合戦を特撮で描き、本編やら宮殿内のドラマは自国のスタッフを育てる様訴えた。


 だがそれも「自国に映画が撮れる器用な人材がいない、そっちで撮れないか」と却下された。


 そこでリック社長は旧知のスタッフを駆けずり回り、テッキ王国向け「映画伝習隊」を募って東へと送り出す事にした。

 慣れない東国での暮らしに通じない言葉に不安を持ちつつ、新天地に映画の華を咲かせんと決意した「伝習隊」たち。


 その殆どがトリック特技プロの「卒業生」か、リック社長の斡旋で倒産した映画商社から今の職場にありつけたベテランたちだった。

 機材やフィルム、スタジオ建設などはボウ帝国や現地商人を絡めるとボッタくられる危険があるので、リック社長はこの工面にも関わった。


 みるみる整うテッキ王国初の映画スタジオに、関係者は感激して「伝習隊」に感謝した。


「俺たちも、行くかあ」

「久々の東国ですね」


 リック一家は後事を英雄チームに任せ、1年の限度を設けテッキ王国に移住。

 王国肝煎りの潤沢な予算で1部3回、4部構成で計12回の特撮テレビ作品「荒武神伝説」が製作された。


 そして「伝習隊」たちは1時間枠26回の大河ドラマ「建国史」を、現地の映画作りの情熱に燃える若者たちを指導しつつ撮影を開始した。


 どちらも35mm、立体音響で製作され、世界映画祭では総集編が上映される予定である。


 最長で1年キリエリアを留守にするリック一家…

とはいえ、何かあれば、いや何かなくとも瞬間移動で戻って来て、「エクィエス・ギガソリタリティス」に打ち込むデシアス監督、ミーヒャー専務以下スタッフを労ったり、白亜の殿堂に「怪獣列車」に酒樽を乗せてショーキさんの陣中見舞いに向かったりと、中々に忙しかった。


******


 年末、無事「ゴドランの分身」が完成し、試写会ではそれなりの評判を得た。

 正直、4年ぶりのゴドラン新作というのもあっての評判だったが、前回以上にマニア層のイベントは盛り上がった。


 撮影が終わったショーキさんは積極的に若者たちが主催するイベントに出席し、新作のフィルムを携えて宣伝を行った。


「呼ばれたら行くさ!何つっても彼らはゴドランのファンって言うより、俺のファンだからな!」

 等と周囲を笑わせつつ、後援者を増やしていった。

 実際、リック監督の名声に隠れていたショーキさん、ファンとの交流の中でその豪放な人柄が人気を呼ぶという不思議な現象が起きていたのだ。


 そして「エクィエス・ギガソリタリティス」もキリエリア、マギカ・テラはじめ各国で放送が開始され、子供達やファンに対して、スプラシリーズの無い今に、巨大英雄特撮シリーズ健在なり、と示したのだった。


「案外色々仕事はあるもんだねえ」

 燃え盛る宮殿の撮影を終え、リック社長は感慨にふけった。


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