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356.リックの超騎士団、終了!!

 26話1億デナリ…諸々の経費を差し引くと8千万デナリ程度の低予算で、トリック特技プロ製作による超騎士団っぽい作品、「エクィテフェリー(鋼鉄騎士団)」の撮影が始まった。


 その特撮は、スプラシリーズ譲りのミニチュア都市破壊と、逃げ惑う群衆との合成や本編での避難誘導や救助作業、更にゴーレムの変形を生かした毎回異なる戦闘スタイル、最後にゴーレム戦で必殺技と、スプラシリーズに殉じる豪華なものだった。


 巨大な戦車が疾走し、変形時には前照灯が全開となり、敵の目を晦ます!

 先端が突出した前輪部とその装甲がつま先となり、その後部が起き上がり脛となり、短い光線砲を備えた砲身部が胴体となる。


 両脇に備えた二門の主砲が腕となり、主砲下部に内蔵されていた鉄のショベルが伸びて敵の人型ゴーレムを殴り、装甲をブチ破る!


 つま先は敵要塞の鉄壁を蹴り崩し、それを内部から主砲の乱射で蹂躙、敵の軍事拠点を、人型ゴーレムを粉砕する!


 時には敵の残骸を高速で乗り上げ、ジャンプしながら変形し、敵ゴーレムを蹴り倒すアクションを見せる!


 頭部には短距離着陸・超音速噴射式飛行機や大出力垂直飛行機が合体可能だ。

 自動追跡ロケットを敵要塞に発射し肉薄する、或いは垂直飛行機が合体し、敵機送艦に乗り込んで戦車部の重砲撃で艦橋や甲板上の敵ゴーレムを破壊する!


 ショーウェイのゴーレムとはまた違った、現実味がある兵器が変形し合体する姿は、低年齢層も、それ以上のアニメファン層にもかなり刺さった。


 そして本編も、本家超騎士団シリーズとは異なる二輪自動車と高速装甲6輪戦車ハリボテによる活劇や、接近戦では本家とは異なる大立ち回りが披露された。

 回によっては敵戦車ハリボテとの接近戦すらある、変化に富んだものだ。


 大特撮破壊も、本編の目の眩む様な高速アクションも、それを彩るのはリック社長イチオシで音楽を担当するユニヴァ・ポン師。

 ゴロゴロ調に電子楽器、更に古典的伴奏が一体となり、その高揚感は中々に危険なものがあった。


 更に本作は何とステレオ放送対応も可能で、楽曲は全てステレオ録音された。

 時に過去の作品から名曲を選んで、ポン師の騎士団ドラマからも選んで再演奏する様頼み込み、師から半ば呆れられ笑われ、録音されたりもした。


 余談だがリック社長は自動車を運転する際ポン師の音楽を車内で流して、2度程速度違反で罰金を科せられた。

「みんなはマネしちゃダメだよ?」

「お前が言うなー!」「主よ…」「ゴメンナサイ」

 流石にみんなから怒られたそうだ。


 編集はシナリオに合わせて先ずリック社長が音楽を編集し、そこに特撮やアクションを当てはめるという異常なこだわりを見せ、これもまた異常な高揚感を生み出した。


 物語は深刻で今の社会の未来を示唆するものながら、序盤の小競り合いに終盤の大立ち回りから特撮決戦へ至る様は素晴らしい爽快感があった。


 ショーウェイ的な快感とヨーホー的な重さ、更にトリック特技プロ的な特撮の爽快感が限られた予算の中で発揮された快作となった。


******


 だが、試写を見たショーウェイ一同は不安を覚えた。


(本家の人気を喰う危険があるのではないか?)

(本家でこの出来を求められたら、予算が嵩んで立ちいかなくなるのではないか?)


 役員たちの不安の結果、1年の延長は拒否し、予定通り26話で終了する事となった。


 だが。

 製作費は26話8千万デナリという契約は兎に角、一番金がかかっているパイロット版、冒頭4回1億デナリについてはトリック特技プロ持ち出しにしようと言い出すものがいた。


「そんな不義理が通る訳がありません!」


 義に篤いトレート部長が怒りを抑えながら主張した。


「26話終了は、受け入れます。

 私の力不足を、深くお詫びします。


 しかし、冒頭4回1億デナリは、本作を始めるにあたっての絶対条件です!

 これを裏切り、リックさんに押し付ける様なマネしたら、ショーウェイは二度とあの人に相手にして貰えません!

 いや、訴えられます!

 恩を仇で返して、それが今まで色々助けて貰った人に対してする事ですか?!」


「まあまあ。

 昔は色々世話になったみたいだけど、今はウチももう色々安定してるし、ここで大枚叩くより合理的なんじゃないかな?」

「あんな金持ち相手に殿様商売してたらこっちの身が持たないでしょう。

 契約の不備って事で1億デナリ節約できたら儲けものでしょう」


 心無い発言を繰り出す重役を前に

「出世した方が意見を通しやすいんじゃないですか?」

と助言してくれたリック社長の真剣な顔を思い出し、一瞬後悔したトレート部長。


「それはー、言い過ぎでしょ?」


 ブチ切れかけたトレート部長を宥める様に、社長が話し出した。


「向こうさんはね、色々んなところで、ウチを助けてくれた、大恩人なんですよ」

 相変わらず鶏を〆た様な甲高い声で役員達を抑えた。


「でもまあ、リックさんの作品はウチでは手に余るね。

 今回は義理は果たすけど、次はよっぽどお客さんを呼べるものか、ウチの予算に収まるものを、お願いするとしましょうね」


 様々な修羅場をくぐって来た社長の言葉には、誰も太刀打ちできない怖さがあった。


「その通りにします」

 トレート部長には、それしか言えなかった。

 結局、ショーウェイとの提携はこの1作で終了した。


******


「なんか申し訳ないね」

「それはこっちの言うべき事です!

 折角!あんな素晴らしい作品を…」

「それを決めるのは、テレビの前のみんなですよ」


 リック社長はブレなかった。


******


「終わっちゃいましたわね」

「ま、まあ。妥当な結末だよね~」

「トレートさんは俺達の実入りより、名誉を守ってくれたんだ。

 劣悪な条件で続けるより、キッチリ契約を守って、この1作を終わらす道を守ってくれたんだ。


 次も。はあ。どっかで頑張んなきゃねえ」


 とりあえず社員の給料分は稼げたものの、この条件ではショーウェイとの契約は次はないなあと痛感したリック社長たちだった。


「次はゴーレムか?巨大英雄か?何でもやるゾ!」


 半分戦車とか半分飛行機とか、中に人が入るには実にキビシイながらも、ゴーレム同士の殴り合いや巨砲を乱射する芝居を器用にこなしたアックス氏がどっちでも来いとばかりに煽る。


「でも、あの半分戦車とか半分飛行機ってもっとやりたかったよねー」


 リック社長としてはショーウェイ変身英雄作品のカッコよさを煮詰めるつもりの企画だったので、是非1年やりたかったのだが。


「社長、この構想メモ。

 敵の騎士団の最後が戦争裁判とか、最後の敵がどこかの倒産した工場の電算機が世界中に繋がって計算してたとか…

 ちょっと尖ンがり過ぎてませんか?」


「何を言うか!

 今の世の中の、漠然とした不安を見事に描き出した優れた結末ではないか!」

「ご主人様、私は小さい子供の事を言って…」

「世界を散々惑わせた敵を追って!追って!世界中の電算機が命令の発信源を追って!

 誰も気にする事の無い!

 崩れる寸前の小屋の中の!

 机一つ分の大きさしかない旧式電算機が!

 多くの街を破壊し、多くの人を殺し、戦争を巻き起こす呪いの命令を発し続けていた…

 俺はそれを撮りたかったのだ!」


 珍しくデシアスが激高した。

「戦争の発端というものは、それ程に愚かなものなのだ…」

 国に忠義を尽くす彼にも、彼の戦争観があったのだ。


 リック社長も同じ気持ちだったが、想いを切り替えた。

「また、どこかでこの構想を生かそうよ。

 その時はデシアス、頼むよ?」


 ミーヒャー専務も、リック社長に促され、無念に震えるデシアス監督に手を重ねた。


******


 だがこの作品。

 中々いい時間帯が確保できず、リック社長の発案で安息日の礼拝の後、昼という視聴率が低い時間帯に放送されながら、50%以上の視聴率を獲得したのだった。


 礼拝を済ませ、食事を終えた後、大人がなんとなくテレビを流す時間にこの強烈な特撮作品を放送し、子供達は狂喜したのだった。


 この成功に

「急ぎ後半26話を、1億で!」

とショーウェイテレビの編成局長が言い出した。

 役員一同、この時間帯で結構な視聴率を稼げ、リック社長の特撮番組を確保できる、そう踏んで期待を込めたのだが…


「舐めんなー!!!!」


 トレート部長が絶叫した!

 この泣き虫おじさんは、怒ると本当に怖いのだ。

 彼は役員達が何を言おうと、一切反応しなかった。


 こうして奇跡の様な安息日昼間の50%伝説は半年で終わった。


 後日、この顛末をリック社長に報告したトレート部長。

「折角の機会を奪ってしまって申し訳ありません!」


 ところが。

「あなたは俺たちの名誉のために怒ってくれたんです、ありがとうございます!」

「同感です。安易に延長しない道を、貴方は示して下さった!」

「あなたとなら、また仕事をしたいなあ、フォルティ・ステラの時みたいにね!」


 逆にリック社長たち一同は深く頭を下げ、トレート部長が恐縮する事になったのだ。


 子供達に突然降ってわいた様な興奮を与え、トリック特技プロ製超騎士団っぽい作品は半年で完結して消えた。


******


 リック社長は、引き続き初期4作は自社が自費で製作する「スプラQ」方式を続けることにした。


 ただ、もしテレビ放送が決まった場合、確保できる視聴率を見込んで26回完結で契約の上製作し、一括払いで納品する。


 見込み視聴率を超えた場合は成功報酬として利益を折半。

 但し最低視聴率を保証し、それを割り込んだ場合は損害を補填する。

 そんな契約で作品を売り込む事にした。


 相当な「賭け」である。

 無論、こんな生の視聴者の反応を無視するかの様な条件でフィルムを買うテレビ局はない、そう思われた。


 実際「エクィテフェリー」でのショーウェイとのイザコザを話半分で聞いた放送局各社は、ヨーホーテレビはじめ彼の次回作に興味を示す事が無かった。


 だが、彼の特撮に込めた夢は、未だ終わる事はなかった。

 そして各放送局は激しく後悔する事になるのであったが、それはまた後の話だ。

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