表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
354/368

354.英雄ブライ、帰る。嫁連れて。

 トリック特技プロの新企画「マキナヒーローV」は紆余曲折を経ながらも、成功裏に完結した。

 次回作をどうしようか。

 のんびりと考える一同の元に、宜しくない知らせが舞い込んだ。


 それは春先の事だった。


******


「リックさん!」

 アイラ夫人が血相を変えて叫んだ。


「「大丈夫だ」よ~」

「え?」


 リック社長とアイディー夫人が声を揃える。


「ブライのクルス・ボランテスの状況は特殊無線でウチに伝わってるんだ。

 大丈夫。

 通信が途絶したのは距離が遠くなったのと、途中に特大の雨雲が挟まったからだ。

 ブライは今、凄く大きな島で停泊してるよ」

「多分明日には無電で無事を知らせて来るよ~」


「もう!それならそうと教えて下さいよ!もう!」


 一瞬最悪の事態を思ったアイラ夫人は二人をポカポカ叩いた。


******


 どうにも英雄ブライの音信不通はどこぞの新聞がスッパ抜いた飛ばし記事だった様だ。

 早速リック社長は契約していた弁護団と共に、風評被害による損害賠償を訴え、その新聞社を叩き潰し、膨大な賠償金を巻き上げた。


 スッパ抜いた記者は業界を追われた上、損害賠償のカタに売られ、鉱山送りとなった。


 それはさておき、リック社長の言う通り、その記事の翌日には本人から無電が入って無事が確認された。


 彼は西方、クルス・ボランテスの航続距離半分ギリギリで巨大な島を発見したのだった。


 連絡に従い機送艦が向かうと、クルス・ボランテスが飛んで来た。

 乗っていたのは元気な英雄ブライと、赤い肌の美少女。


 機送艦に無理やり乗り込んで来たリック社長は我が子ブライをブン殴った。

 そして泣いて抱きしめた。


「お前は幾つになっても俺の子だ!

 俺達の!かわいいブライちゃんなんだよ!

 無茶すんな!危ない事すんなよ!」


 未知の世界への冒険など無茶の無茶もいいとこなのだが。


「ゴメンよ…御免なさい!」

「危険は避けろ、常に連絡取れるようにしろって言っただろ?

 この小僧が!」


 リック社長は心配していなかったつもりだが、本人も自覚しないまま凄く心配していた様だった。


 英雄ブライ曰く、西方に陸地を発見したものの積乱雲のため迂回、一時音信不通となった。

 しかし陸地沿岸の集落に着陸し、その地に集落を発見、何と歓待を受けていたそうだ。


 風土病、感染症について口うるさくリック社長から言われていた英雄ブライは接触を拒み検査を行っていた。


 だが、空から現れた彼を神の使者と信じて持て成そうとする現地民と揉めた末、互いに感染症に悩まされる事になった。


 幸い既知の病気だったため数日で回復、雨雲が去った後に通信を試みたという事だ。

 英雄ブライを看病し続けたのが、一緒に来た娘だった、という事だ。


 今後の調査や風土病についての感染対策は機送艦に引き継がれ、クルス・ボランテスは補給を受けて帰国する事になった。

 リック社長はもちろん、例の娘、アタシノラバ嬢も同行して来た。


******


 リック社長以下が帰宅した。

 ここでも二人の母から引っ叩かれ、抱きしめられ泣かれた。


 ついでに何故かリック社長も引っ叩かれた。


「なじぇ?!」


 異国の娘、アタシノラバ嬢は彼が深く愛されていることを痛感した。


 リック社長は移動中に感染症の有無を相互に確認し、無事を確かめた。

 英雄ブライは短い滞在中に書き溜めた辞書で簡単な言葉をレクチャーした。


 空を飛ぶという不安、見下ろす大海原に大都会、未知の住宅に怯えていた少女の心を和ませるため、リック社長以下一同で彼女を歓迎し、温かく包むことにした。


 先ずアイラ夫人が西大陸の言葉で、委縮する少女に優しく問いかけた。

『アタシノラバ、あなた、ブライ、すき?』


 すると彼女は慣れないこちらの言葉を交えて答えた。

「わからない。でも、まもxxx(守りたい?)

 このひと、xxx(凄く?)いい人、強い人。

 神の使いと思った、xx(でも?)違った。

 神の使い、病かからない」


「「「あー」」」


 何か理解しつつも、一同は彼女の言葉の続きを待った。


「xx(でも?)ブライ、みんなを助けた。

 ブライも苦しんだxx(のに?)、みんなを助けて、もっと苦しんだ。

 私、ブライ助けたかった。

 ブライ、とってもいい人、強い人。


 本当に強い人、戦うxxxない(だけじゃない?)、自分より、他の人を守る人…?」

『あっ!私!私!ブライの事!きゃー!』


 最後に西大陸の言葉を叫び、彼女は真っ赤になって顔を覆った。

 そして黙ってしまった。


「どぉ~すんのよブライちゃあ~ん?」

 ニヨニヨしつつアイディー夫人が英雄ブライに絡みついた。


「この子は貴方の本当の姿を解ってくれた人よ?

 大事にしなさいね?」

 ニコニコしつつ、涙を流すアイラ夫人。


「やっぱりリックの子供だなあ!」

「ああ。主の子もまた人のために尽くすのだ!」

「ついでに優しい子をモノにするのよねー」


 英雄チームもニヨニヨしつつ、少し涙ぐんでいた。


 そこまで言われて黙っている英雄ブライではなかった。


『アタシノラバ、俺はね、君に助けて貰ってとても幸せだ』

『はい!』

『君をもっと知って、君にも俺をもっと知って欲しい。

 そして、それでも嫌でなければ、一緒に暮らそう!』


「今さ、一緒とか、暮らすって言ったよね~」

「はい。流石私達の息子です!」


 すると、アタシノラバ嬢が頷いた!


「「「ウオー!!!」」」「「「ステキー!」」」

『『『目出度い!』』』『『『ステキー!』』』


 その夜は未知の世界から嫁がやって来たかの様な歓迎会、そして婚約式の様に盛り上がった。


******


 翌日、ブライは大西洋探検の後援者である王国海軍に赴き、洋上に新大陸と新文明を発見した事を宣言し、待ち構えていたカンゲース6世陛下によって発見者として承認を受けた。


(こくおうへいかー!!)

 流石に英雄ブライは仰天しそうになった。


「英雄の子は英雄か!

 はっはっは!

 兄としてこの上なく誇らしいぞ!よくやった!」


 喜色満面、我が身内の事の様に嬉しそうな国王陛下であった。


(なんで国王陛下がいらっしゃるんだよ父さん!)

(こういうの先王陛下も好きだったから血なんじゃないかな?)

(勘弁してくれよー!)

(右に同じだよー!)


 同席する様呼ばれたアタシノラバ嬢。

 今まで見たことも無い豪華な王宮に眩暈がしそうだったが、アイラ夫人たちに付き添われて何とか耐えた。


 そして歓迎の印として王家の紋章が入った盾が贈られた。

 黄金と宝石で飾られた豪華な盾には西側言語と英雄ブライが記録した新大陸の文字で

「キリエリア王国カンゲース6世の友たるを証す」

と記されていた。


 あまりの栄誉にアタシノラバ嬢は気を失いそうになったが、これもアイラ夫人たちのフォローでしっかり返礼出来、新大陸の使者としての面目を保った。


『驚かせた、すまない。

 しかし私は嬉しい。

 我が弟の子が、新しい世界から、美しく、優しい、優れた娘を連れて来た。

 私は、あなたと会えて、嬉しい』

 国王陛下は現地語で彼女を迎えた。


 そして彼女も気を引き締めて返礼した。


「わたしも、みんなからもらった、やさしさ。

 これを、わたしの村につたえる、ます!

 感謝します、アリガトウゴザイマス!」


 なんとか見事な返礼を返した肌の色が違う美しい少女に、居合わせた一同は驚き、そして恐らくリック社長一家が短時間で教育を施したであろうことを悟り、畏れた。


 そして、新大陸やその住民に非道を行った場合、リック社長一家から報復を受ける事を悟ったのだった。


******


 機送艦からの詳細報告を受け、キリエリア艦隊が調査と国交樹立のため派遣される事となった。


 英雄ブライは得られた知識を伝え、先導役を買って出て南方へ向かおうとしたが。

 英雄ブライは自分を甲斐甲斐しく世話してくれたアタシノラバ嬢を安全なキリエリアへ預けるつもりだったのだが。


 リック社長に待ったをかけられた。


「いいか?

 あの子がその気なら、ちゃんと責任を取れ。

 未知の世界に挑んでもお前を守る決意を固めて来たんだろう?

 お前も、アタシノラバさんを死んでも守ると誓え!」


 父は言った。


「あの子と一緒に行くんだ。

 向うにも彼女の家族がいるんだ。

 彼女の国と、こっちはいくらでも行き来が出来るんだって伝えてやれ。

 そうすれば向うの親御さんも安心するだろ?な?」


 そういうリック社長は、優しく、父親の顔をしていた。


 二人の母も

「男を見せなさい!」

「女の子を一人にしちゃダメだよ~!リックきゅんみたくなっちゃうよ~」

「いや!あん時まさかディーがそんな事思ってるって」

「リックさん、ここは流すところですよ?」

「ヒー!」


「父さんモテモテだなあ」

「お前は今までそーゆーの無さ過ぎだぞ!

 アタシノラバさんに一生頭下げろこのタコ!」


 当の婚約者殿は、親子漫才の言葉は解らずとも、何故か笑い、少し泣いた。


 こうして可愛くも誇らしい我が子の船出をリック社長は見送る事になった…


「ディー、超長波無線受信用意!

 サテリュム(地球撮影衛星)非公式カメラをクルス・ボランテス追跡モードに!」

「もうやってるよ~」

「国家予算を何私物化してるんですか!」

「だってー」


 こうして若い二人の旅路の安全は守られるのであった。


******


「間に合わなかったー!!」

 入れ違いで帰って来たのは、マギカ・テラで活躍中のキャピーちゃん。


「お兄様のお嫁さん会いたかったのにー!」

「マギカ・テラでも報道されてたでしょうが」

「仕事終わらすのに一杯イッパイで見てなかったのよー!」


 17th世紀プロの新作「コスモパトルア」は、派手な特撮の見せ場は2~3回に一回という頻度ながら、奇抜な宇宙の住民や常識の異なる隣人とのトラブルと和解を描きつつ、26回の放送を終えて3ケ月後に更に26回の製作に入っていた。


「だからね、リックきゅんはね、ウチにちゃんと帰れ~って、言ったのにさ~」

「ぐぬぬ、せめてこの無念!仕事で晴らす!」


 結局自宅での宴会を撮影したフィルムに写る未来の兄嫁の姿に

「ほわわ~、可愛い~、お兄様これ犯罪~!」

 10歳以上年下の美少女が妹になる事にキャピー嬢は浮かれていた。


 そして、なんと製作中の「コスモパトルア」に赤い肌で言葉がたどたどしいながらも聡明で勇敢な少女を登場させた!


 このキャラは人気を博し、レギュラー入りを果たすのであった。

 キャピー嬢の身内贔屓は妙なところから新大陸との友好を支援する形となったのだ。


 そして数か月後、帰国した英雄ブライは新大陸でも婚姻を認められ、晴れて「婚約者」であるアタシノラバ嬢を連れて帰国したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
めでたい! しかしアタシノラバとは剛速球ストレートで微笑ましいです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ