351.やっぱり怪獣、破壊、変身、光線が好きだ
リック特技プロの規模縮小から季節は移っていく。
リック社長はのんびり企画を纏め、英雄チームもそれを補佐しつつ日は過ぎた。
「みんな色々動いてるなあ」
自分は二歩後退、半歩前進の様であり寂しいものを感じた。
17th世紀プロの「トニト・アシビター」も。
トリック特技プロを卒業したスタッフを迎えた国際テレビの「アルジェント・レオニス」も。
撮影中の「老舗旅館」も。
ヨーホー映画の「宇宙帝国の滅亡 学団の反乱」も。
撮影が進んでいるのだ。
ショーウェイではスプラルジェントが二作で途絶えた後を埋めるため、ペルソネクエスが「8号誕生!ペルソネクエス全員集合」を2時間枠のテレビ映画で製作、高視聴率を稼ぎシリーズ化している。
これもリック社長が
「昔通りが一番いいんです。
怪人が続々崖の上にズラーって並んで名乗り上げて、エクエス達が大乱闘して、最後悪の幹部やっつけて、謎の首領がホレムさんの声で負け惜しみ言って去って行けばいいんですよ、みんなそれが見たいんです」
と、投げやりな、しかし的を得たアドバイスをした結果だった。
その結果復活した新エクエスは、超騎士団シリーズと共に子供達の人気を博し、人気俳優の歴史剣戟映画とともにショーウェイテレビの視聴率を稼いでいる。
かつてローカル局だったショーウェイは得意分野で人気を稼ぎ、国内地方局を開設し全国ネットワークの一角にまで成長しているのだ。
「これも!リックさんの!おがげでずー!」
相変わらず泣きながらトレート部長がリック社長に感謝しに来た。
トレート部長も役員になってもいいのだが
「僕は現場に居たいんです!」
と固辞していたのだ。
「出世すりゃ企画通しやすいですよ?」
リック社長の助言も固辞して現場に拘っていた。
「みんながんばってるんだなあ」
だが。
「それでいいのよ」
「そうそう。そんな事言いつつさあ、リックきゅんは大活躍じゃないさ~」
二人の夫人はリックを労う。
これらの作品の影には、必ずリック社長がいたのだ。
気付けばみんないい年齢だ。
「本来なら俺達も隠居していい年だがな」
「私はまだまだ現役よ!年寄り扱いしないでー!」
「私も頑張ります!」
英雄チームの一角であるセワーシャ夫人は兎に角、魔力が人並みだったミーヒャー夫人も、デシアスが多忙を極める中魔力訓練を受け、まだまだ若さを保っている。
「それに温泉!温泉は年齢を解決します!」
「リック最大の功績ね!」
リックが掘り出したクラン温泉はこの地の宝として愛されている。
仲間のみんなもやる気に満ちている。
「じゃあ、そろそろテレビで新シリーズ始めますか!」
「「おう!」」「「ええ!」」「やろ~」
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新しい企画とは。
前の「卒業式」でリック社長が話した、兎に角過去の路線。
都市の真ん中に巨大な怪獣かゴーレムが現れ、正義の英雄が巨大変身するかゴーレムと未来兵器でこれを倒す。
「リックさんがやりたかったのは、やっぱりこれなんですか」
しかし出資者であるヨーホーテレビのマッツォ社長は浮かない顔で迎えた。
「それなんです」
リック社長はキッパリ答えるが。
「しかし今変身巨大英雄は国際テレビさんがやってるのとショーウェイの変身騎士団モノがあります。
それに」
「それに?」
ハテそんな作品あったかなと不思議に思うリック社長だが。
「再放送ですよ」
「あ」
トリック特技プロ作品は結構再放送されている。
作品数も多いので不動の人気を誇っているのだ。
「自分で自分の首絞めたー」
「ヨーホーテレビとしては嬉しいのですが」
マッツォ社長からは今一度考えて欲しいとの」意見を喰らってしまった。
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ゴドラン復活のお祭り以来、再び暫く絶えているゴドランを応援せんと若いファンたちは上映会やスタッフのトークショーを開催し続けている。
勿論リック社長も招待され過去の話を色々披露するのだが、むしろ意見交換や宴会で彼らの求める新作について意見を聞いた。
だが。
「もっと大人向けの変身英雄を」
「アニメは凄く進んでます、超騎士団やってる場合じゃありません」
「リック監督は『宇宙帝国の滅亡』に参加しないんですか?」
彼らは新しいものを熱望していた。
確かに宇宙戦艦や兵器ゴーレムものでアニメは若者層を相当夢中にさせている。
それに比べるとリックの作品は「スプラ9戦士」にしろ「二賢王」にしろ、懐古調であった。
しかしリック社長は思っていた。
「あんまり未来にしすぎると現実感が無い、やはり作り物っぽくなってしまう。
それにそれは『宇宙帝国』で結構出来る限りやっちゃってるしなあ」
そう思うと素直に若い声に応える事は出来なかった。
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だが、とある集まりとの宴会で、子供向け英雄番組を激しく批判しアニメやSF映画を礼賛する尖がったファンがいた。
「かつて一世を風靡したヨーホー特撮は、リック監督作品は世界の最先端に出るべき作品を世に送り出す義務がある!」
とまで胸を張って言い出だす始末。
流石に仲間から諫められた。
そんな仲間に対しても雄弁を振るうファン氏。
「君達はそんな事でいいのか?
愛する特撮作品が子供向けの駄作のままでいいのか?
いっそ子供から特撮を取り上げる時が来てもいいのではないか?」
得意げな彼に向かい、別のファン氏が反論した。
何とも強い光が目に宿っていた。
「何が好きで嫌いかはいいよ、好みは人それぞれだよ。
でも、作品として駄目だ、駄作だなんていう資格が俺たちにあるのかよ!」
リック社長は、このファン氏が自分達スタッフを気遣ってくれているのかと思ったが。
「皆が、あれは駄目だ、これは駄目だなんて言ってみろよ。
何にも作られなくなっちゃうよ?!
ゴドランがいなくなってスプラルジェントもいなくなって。
数年前には一度怪獣がいない世の中になっただろ?」
確かに間を開けてしまったなあと申し訳ない気分になった。
「僕はね!
ああいう寂しい時は二度と来てほしくないんだよ!
どんな出来でも文句があっても、ファンなら先ず行って、見て応援しろよ!」
この人は封切りで商品全買いして回る猛者氏だった。
リック社長は不明を恥じた。そして思った。
(撮り続けなくちゃ。
こうしてまで言ってくれる人がいてくれるんだ)
そう思い。
「ありがとねえ。
一時は寂しい思いをさせて申し訳ありませんでした。
でもね。俺は止めないよ?
俺は怪獣がビルをドバーってぶっ壊して!
未来兵器がワンダバーって出て来て!
巨大英雄がクルクル飛び回って!
最後になんか凄い光る光線撃って、ドカーン!!
俺は自分でこれを見たくて生きてるんだよ!」
「「「おおー!!!」」」
今まで色々な意見を交わしていたファン一同がリック社長の熱い語りに
「財産が尽きるまで辞められないね」
「「「ええ~???」」」
ファン一同、この人の、国家予算並みと言われる財産が尽きる事があるのか?と疑問に思い、一瞬間が開いて。
「「「うわははは!!!」」」
大爆笑したのであった。
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「どうやらなんだかんだ言いつつ、周りの反応を気にし過ぎたのかもしれないね」
「だからこそ聞けた意見もあっただろ?」
「迷うのも正解に辿り着くためには必要ではなかろうか」
やはりリック社長は単純な巨大変身英雄の製作を始めた。
それも放送局未定のまま。
つまり出資するテレビ局もスポンサーも無く、例によって自費で、である。
その内容は…
高層建築や未来兵器が進化した未来社会。
古代の遺跡が発掘され、邪悪な神獣が暴れ出す。
主人公は遺跡に残された古代英雄達の魔道具の力を得て、巨大英雄に変身してこれを倒す。
しかし古代英雄の魔道具は複数あった。
諸国で様々な人々がそれを手にし、巨大英雄同士が戦う事すら起きてしまった。
軍の一部も、魔道具を自分達の思う通りに使える兵器にせんと企み、主人公を拉致する。そしてそれを戒める勢力も。
古代英雄たちは果たして神獣や神々との戦いに勝ったのか?
何故古代の文明は滅びたのか?
遥か昔にこの世を去った彼らの平和への祈りは、未来社会を救えるのか?
というテレビ映画だ。
「スプラミティス」の様な神話とSFを合体させた企画にキリエリア2が飛びついた。
「26回で2億デナリ!」
飛んで来たのはナントカ氏。
「あーまたナントカか」
「スプボンテだ!失礼な奴だな!
だが素晴らしい企画だ!」
目下放送中の国際テレビの「アルジェントリベリ(超少年)」。
少年が変身、というか強化宇宙服を装着して戦い、巨大合体ゴーレムが敵の怪物や怪ゴーレムを叩く作品が人気だが、他に子供向け作品が無い。
そこで買い手がまだ表れていない本作に飛びついたという訳だ。
「ありがたいけどそんな予算掛からないと思うよ?
その分国際テレビさんに回してあげてよ」
「いいから取っておけ!
その分凄いの撮れ!
国際テレビはやっぱりイマイチだ!」
予算は押し付けられるかの様に与えられた。
「どんだけ神話好きだよこの人」
いっそ主人公を歴史神話学の教師にしようか、と口が滑った
「なお良し!それで行け!」
「どんだけ教師モノ好きだよこの人」
結局人は好みで仕事をするものだなあと痛感させられた。
半年の準備期間で巨大英雄、甲冑、ゴーレム的な要素を集めた新英雄シリーズの1クール13回分が納品された。
「マキナヒーロース(クインケ)」だ。
一応スプラシリーズ的なフォーマットには則っている。
主役級ではないが防衛隊の未来兵器も登場する。
そして主人公は教師として未来の若者に接し、数々の問題に直面する。
進化し重い責任がのしかかる社会で、他人を思いやる気持ちを失ってしまうもの。
目先の欲に捕らわれ、古い言い伝えを蔑ろにするもの。
加虐心に捕らわれ、学校内で弱いものを標的に集団暴行を楽しむもの。
それらは悪神の加護を得て魔獣の肥やしとなり、災厄を齎す。
力を得て顕現した神獣が未来社会を襲い、主人公は悪に捕らわれた若者を聡し、救う見込みのなくなってしまったものは見捨て、神獣を倒す。
同じ様に戦うものが各地に現れ、意気投合したり、対立する国の戦士であれば戦ったり。
「いいぞいいぞ!
これこそが現代に求められる英雄像だ!
やりゃあ出来るじゃないか!」
ナントカ氏はゴキゲンだった。
「もうスプラルジェントなんか目じゃないぞ!」
「一言余計だよ!」
リック社長は
「やっぱりコイツ苦手だ」
と改めて思った。




