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330.スプラテリトス、パイロットフィルム?

 スプラシリーズ、いや、スプラルジェント、巨大変身英雄復活は既に動き出していた。


「ウッヒャー!かっけー!」


 先行撮影した第二スタジオでのVDT戦闘機、新たなる怪獣防衛隊UGSの戦闘機の離陸場面、70mmという恐ろしく贅沢な合成のラッシュを見てリック社長がゴロゴロ転がっていた。


 画面で発進にゴーサインを出しているのはリック社長本人なのだが顔は映っていない。

 空軍や海軍の飛行機の運用を設計したのもリック社長本人なので、これら動作は誰より知っていることもあり手本を示したら、そのままデシアス監督がOKにしたのだ。


「これカッチョエー!俺だからダサいけど絵がカッチョエー!」

「まあまあ、とっても幸せそうですねえ」

「自分が映ってるのさ、よく感動できるよね~」

「俺なんてどーでもいーんだよ!あの臨場感がだね!ホントに飛行機が飛び立つ感じがねー!」

「いやいや、主よ。それ『スプラフィニス』でもやったではないか?」

「地上だからいいんじゃん!スプラ防衛隊の未来兵器だからいーんじゃーん!」

「はあ…スプラフィニスも同じでしょ?」


 未だにゴロゴロ転がっているリック社長には、彼にしかわからない何かがあるのであろうか、英雄チームは呆れた。


「それは兎に角、確かにこれは模型とは思えない仕上がりだ」

 滑走路に未来兵器が走り出す場面の後ろ側には作業員が走り作業用車両が行き交う。


 そして、管制塔では管制員の向う、大きなガラス窓の向うで未来兵器が離陸していく。


 夜のシーンでは一際空軍基地の灯が青白く輝いて美しい。

 VDTの白と黒の汎用戦闘機、UGSの銀色の対怪獣用戦闘機が離陸する場面、格納庫の灯の中滑走路に向かう場面。


「ドヒャー!カッケー!ウヒー!」

「社長社長!どうどう!」

「だってさあれさー!」

「まあリックさん幸せそう」

「その一言で片づけるアイラって凄いわね」

「そうですか?うふふ?」


 夜の場面では管制塔の合成カットに管制室の灯が映り込んでいる。

「ウッキー!ムッヒヒー!」

 確かに昼間の場面よりも明暗のコントラストが素晴らしく美しかった。

「でもね、テレビだとここまで綺麗に写んないんだよ~?」

「いーんだよディー、それでもすっごく綺麗な場面になるんだよ!」

「そ?そっかな」


「確かに撮り甲斐はあったなあ」

 デシアス監督も、昼間と夜間のオープン撮影のミニチュアに没頭していた。

 特に夜間シーンでは滑走路脇の正面を強く調整し、滑走路脇の建物や居並ぶ汎用戦闘機にも照明を浴びせ、この現実的でもあり幻想的でもある場面を撮り上げた。


「かっちぇー!カッチェー!」

「あそこまで喜んでもらえれば、主に仕えた甲斐があったというものだ。

 尤も本当にこの絵を作り出したものは。

 主が、異世界の記憶の中にあるものなのだろうがなあ…」

 デシアス監督は、名前も聞いていないこの名場面を設計した異世界の特撮人に敬意を表した。


******


 新たなスプラルジェント、スプラテリトスのスーツも完成した。

 

 やはり目に付く、エキスペクラリの様な胸の鏡面素材と、胸と両腕、そして額の発光部分。


 オープン撮影だと太陽の光に負けてしまうので強い光源が必要だな、とリック社長は考えた。

 ただの電球ではなく、電算機にも使われる半導体を用いた電球を試作したところ、結構な明るさが保てた。高価だったが。


 新たな巨大英雄、スプラテリトスの雄姿にリック社長は手ごたえを感じた。


 そして、パイロットフィルム用に本編もありもののセットで撮影した。

 スコッチライトという反射率の高い樹脂製テープでスプラルジェントたちの母星、光の国を表すのは過去作の手法の通りだ。


 しかし虹色の照明を緩やかに動かす事で、北方の極地で観測された「虹のカーテン」の様な不思議な空間は表せている。


 主人公はVDT宇宙探索船のメンバーで、異星人の襲撃を受け他の乗員を脱出させ、一人で敵の中心へ船を進めた。そのまま敵を引きつけ、ワープ航法へ。


 その主人公を仮に演じるのは、何と帰省していた英雄ブライ。

「ほとんどヘルメットだしビッカビカのセットでの撮影だし!顔写んないし!」

 そう父親に頼まれて渋々受けたが、中々器用に役をこなせた。


 攻撃を受けつつ

「俺は宇宙の彼方を目指す!人間が辿り着ける限界の、先に行ってやる!」

そう単身宇宙に脱出。


 目の前に広がる銀河から一つの光が飛来する。

 それが目の前を覆うと、彼は光の国にいた。

 周囲には歴代のスプラルジェントたち。


 センティアが彼に言う。

「よく来てくれた、地球の友よ。

 私たちは君が来るのをずっと待っていたんだよ」


 彼を救ったスプラテリトスが彼と融合し、彼を地球へ戻すため飛び立った。


 そして途中、破滅寸前の惑星に立ち寄る。

 その星の社会に巣食う侵略者、内通者たちが星の破滅を企てる宇宙船にスプラテリトスが突入、護衛ゴーレムを撃退する。


 内戦で荒れ果てた星を放射線で生まれた怪獣が襲い、廃墟と化した未来都市の中で他のスプラルジェントたちが撃退する。


 裕福な指導者たちは無責任にも宇宙船で星を捨てる。

 残された貧民の子供や老人たちは

「俺達はここで生まれた、ここで生きるんだ!」

 子供達もブロムちゃんやマーニャ嬢、ヘルム君達英雄チームだ。

 みんな中々に芸達者だ。


 そこに過去のスプラルジェントたちが、惑星各地を蝕む放射線を放つ戦略物質を宇宙に運び去った。


「私達は君達と友でありたい。

 希望を捨てないでほしい。

 明日への夢を抱き続けるなら、私達は、また来る」

 スプラテリトスは地球へと去った。


 そして地球上でも怪獣が暴れ始めていた。

 VDTの新生怪獣防衛隊UGSが迎撃に飛び立ち、主人公がスプラテリトスに変身、広大な未来都市のオープンセットで激闘の末敵を粉砕!


 宇宙船内のセットで、操演によるゴーレムとの戦い。

 全スプラルジェントが怪獣軍団と戦うなどサービス満点な第一話。


 巻頭の宇宙線描写はモーションコントロールカメラによる巨大感、廃墟と化した都市での怪獣戦はオープン撮影による迫力。


 第二話以降で使用されるUGSの発進シーンや宇宙艦発進シーンも前2作以上に乗員や整備員との合成を描きつつ、迫力を増した映像。


 新時代のスプラルジェントが誕生した。


******


 この迫力はヨーホーテレビの心もつかんだ。


「もうこれこのまま第一話でいいんじゃないですか!

 てかそれでいきましょうよ!」

 マッツォ社長が興奮気味に話した。


「うちの子もうどっか行っちゃいましたよ」

「ええー!!逸材を逃したー!!」


 英雄ブライは試写も観ずに逃げる様に探検へと旅立った。


「業界は兎に角、あの若いファンたちはどうかなあ」

 リック社長はまず今まで各地で好事家、後にマニアと呼ばれる若者たちによる上映会が行われた各地を訪れ、試写を行った。


 その会場は熱狂に包まれ、マニアたちは喝采を送った。


「素晴らしい!まるで劇場作品のレベルだ!いや『スプラフィニス』から今までの劇場作品のレベルを超えていたが!」

 最初に英雄チームを招待してくれたケアリア伯爵領での試写では、伯爵夫婦が半泣きでその出来を讃えた。


「放送が待ち遠しいです!」

「期待してます!」


 彼らは言葉で、アンケート用紙で、期待をリック社長たちへ寄せた。

 そして用紙の裏にギッシリと作品に対する希望を書いて送った。


「大体リックきゅんが思った通りだよね~」

 リック社長たちは、ある程度この大喝采は予想していた。

 しかしリック社長は慎重だった。


「怖いのは、彼ら好事家層が少数派に過ぎなくて、子供や親たちみんながドッチラケ、って事だよ」

「ドッチラケ?」

 リック社長は時々奇妙な擬態語を使う。


 その昔、ヨーホー映画が行った試写会の様に、各地の学校でも試写を行った。

 その結果、この懸念は思い過ごしであることが分かった。

 子供達は再放送ではなく新しいスプラルジェントを待っていたのだ。

「あたらしーのはやくみたーい!」

「スプラテリトスかっちょいー!」「ヒコーキのりたーい!」

 興奮する子供達の姿に、リック社長は新作への闘志を新たにした。


******


 各地で行われた試写会の結果は、ますますヨーホーテレビを期待させた。

「ヨーホーテレビはスプラテリトスを正式に発注します」

 マッツォ社長の宣言と共に、新作の契約が交わされた。


「1年、いや2、3年くらいは頑張りましょっか」

「いえ!そこは4、5年って言って下さいよ!」

「そんな先の事なんて解りませんからねー」


 相変わらず慎重なリック社長に、ヨーホーテレビ一同は苦笑した。


 製作費は何と2クールで2億。それ以降が続けば同額を追加。

 レイソン電機も去ることながら、子供向けの食品会社やトリック玩具以外の児童誌出版社、音楽会社も続々名乗りを上げた結果だ。


 早速リック社長は国際テレビやショーウェイに相談し、新作の美術と撮影体制を整えるべく協力要請を始めた。

 宇宙SFがこれから発展すると期待し、その期待が外れ商機を逃していた各社は喜んだ。


 その反面。

「また怪獣かあ」

「特撮って戦争と怪獣しかないもんかなあ」


 多くの映画人が「1799」の熱気に感激しすぎ、それを金科玉条の様に崇めてしまっている。


「いい事なのか、悪い事なのか悩むねえ~」


 この懸念は尤もだが、関係者たちのいう事は半分は正しかった。

 やはり怪獣映画は特撮という派手な非現実世界の華だったのだ。


 ヨーホー映画で、「ゴドランの復活」の企画が持ち上がった。

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