329.スプラルジェント、二度目の復活!
ゴドランはじめヨーホー特撮映画の主題を集めた「交響的狂詩曲」1~3番と「戯曲風輪舞」、そして「交響詩スプラルジェント」の爆発的な売れ行きは、マッツォ社長とリック社長に、更に英雄チームの仲間達に、それぞれゴドラン、スプラルジェントの復活を決意させた。
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「ほんじゃあ新しいスプラルジェント、考えますか!」
まだ春も遠い中、企画会議と言う名の宴会が始まった。
「宇宙SFは外せないかなあ」
「いや、ゴドランの様な古典的怪獣映画に戻るべきでは?」
「それヴェラトラヴィでやったじゃないの」
「そもそもスプラルジェントは宇宙から来たんだ。
宇宙の物語であって当然だ、とは思う」
「でもさ~、最初のQは~、何でもありの空想アンソロジーだったよ?」
色々な意見が出る。どれも悪くはない。だが中々纏まらない。
「リックさんが撮りたい物で宜しいのではないでしょうか?」
アイラ夫人の一言で一同がリック社長を注目。
暫く考えたリック社長が言葉を放つ。
「やるなら、今までにないものにするか、今までのを全部ひっくるめたものか」
「「「どっちも!!!」」」
一同は即答した。
だが。
「一番肝心なのは何だろうか。
あそこに集まったみんなは昔のスプラを愛してたんだよ?
彼らの情熱に背を向けたくはない、って思いもあるんだ」
「基本は怪獣対英雄の物語だろ?」
「そこにどんなドラマを乗せるのは自由な筈だ」
「あらそう?怪獣出ない話があってもいいんじゃない?」
その時、リック社長はふと息子の英雄ブライを思い出した。
「未来の人類が宇宙を旅して、スプラルジェントたちの星に辿り着く。
その探検者がスプラルジェントと同化して帰って来る。
その途中で星々の破滅を救う。
地球も様々な問題が起きて破滅に向かっている。
最後は、地球を旅立ちスプラルジェントの星を救いに立ち向かう。
そんな話はどうだろう?」
「今までみたいに助けてもらう話から、一歩前に進む感じかあ」
「でもどっかスプラ・ファブラっぽいかも~」
「破滅しそうな星を救うのもやったしねえ」
「うむ。
考えてみれば今までの作品とは恐るべき思考実験の積み重ね、哲学体系とも呼べるものだなあ」
「今までやってないネタを集めよう。
今起きてる問題も、これから起こるかも知れない問題も何もかんもブチ込んで、その思考実験を積み重ねようよ!」
こうして交通問題、国際紛争、貴族間の対立、宗教紛争、果ては学校で加熱する競走や落ちこぼれの問題等々のアイデアが続々と挙げられ、簡単なあらすじが書き連ねられた。
更に過去作品で扱ったものとの重複を避ける、または今日的に解釈する、現実社会の問題を宇宙の寓話に変えていく、様々な脚色が行われた。
今までとは違い、リック社長とアイデキー夫人だけではなく、英雄チーム全員で取り組んだ。
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そんな中、外部から妙な声が聞えて来た。
「スプラルジェントをアニメで!」
「スプラルジェントでやる意味ないじゃん、却下」
秒で却下。
どうも、かつてリック社長に持ち掛けられた宇宙戦艦の企画が大人気で、スプラルジェントもアニメで安価に、若者向けにアピールを、と狙ったらしい。
「商売としちゃ悪くないんだろうけどコッチは特撮がやりたいから無視!」
だそうだ。
更にあのナントカ氏が
「今は教育問題こそ時代の急務だ!」
と持ちかけてきた。
「なので我がキリエリア2局で」
「却下アァ!」
やはり即答だった。
「何故だ!
何故今スプラルジェント復活なのか?
それは多くの子供が直面している教育問題こそ」
「オメーの目は節穴か?
あのコンサートにいたの成人ばっかりじゃねえか!」
「すぐれた作品は社会を写すのだ!」
「黙れ阿保!関係ねー与太話を俺んとこに持ち込むなタコ!」
だが相手はその道では泣く子も黙る名プロデューサーだ。
まだ御講釈を垂れていた。
「スプラルジェントが教師として若者を、若者と子供の境で心揺れ動く10代を導くのだ!
素晴らしい姿じゃないか!」
「それは解るが」
「ホラ見ろ!」
「それを強制されるいわれはない!
アンタは他人にテメエの意見を押し付けすぎる!
どんな優れた発想でもお断りだ!」
結局、リック社長とナントカ氏の進む道が再び交わる事はなかった。
「あの人はいざという時は頼れる凄い力があるのになあ」
「リックさんは自由なのが一番ですよ」
「特撮や空想はね、自由がなきゃダメだと思うよ~」
しかし教育問題に言及するエピソードは既にアイラやセワーシャ、神殿経由で学校に接する機会がある二人から提案されていたのだった。
後にそれは映像化され、悪しき教師の姿としてナントカ氏を彷彿とさせる人物が登場して関係者を爆笑させたのであった。
最後は体を張って侵略者の悪魔のささやきに屈せず生徒を守ったあたり、リック社長も彼を憎からず思っていた様だ。
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こうして新番組の企画が纏まった。
題名は「スプラテリトス(三代)」。
通常の必殺光線、周囲の熱や空気を体に集積して放つ光の刃、高熱分子を身にまとい全身から放つ範囲攻撃と三つの技を持つ、という名前だが。
造り手にとっては「スプラQ」「帰って来たスプラルジェント」に続く第三期スプラシリーズという意味合いがある。
尤も第三期スプラシリーズは「スプラフィニス」から始まっている様なものなので、ヨーホーテレビから「スプラルジェント・テリトス」にしてはどうかとの意見も出た。
「長いからスプラテリトスでいいよ」
とリック社長はそのまま通した。
実のところ、彼はスプラシリーズを巨大変身英雄というイメージに懲り固めたくなかったのだ。
そして、雪解けを待ってパイロットフィルムの撮影を始めていた。
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新世代の特撮映像との融和性のため、未来兵器は秘密基地ではなく、実在の滑走路から離陸する。
格納庫から滑走路へ出る、地上では整備員が往来し、発射管制官が離陸サインを送る。
スロットルを全開にすると燃焼噴射式、つまりジェットエンジンが青白い火を噴く!
離陸する姿は管制塔からも写り、画面手前では管制官が後続の戦闘機に指示を出す。
勿論整備員や管制塔は合成だ。
ミニチュアも無線操縦用の小型ジェットエンジンを積んだ高価なもので、広大な飛行場の模型を郊外に設置して撮影される。
トリック特技プロは郊外の荒野、クラン駅から鉄道で近い場所に空き地を確保していた。
オープン撮影用の第二スタジオだ。
一時リック社長は引っ越しを考えた。
だが英雄チームが
「俺達も一緒に行くぜ!」
と同調した。
この話を伝え聞いたクランの、今となっては高級住宅街の住民達が
「特撮の神様がいなくなる!」
「クランの精神が失われてしまう!」
「スプラルジェントやゴドランに会えないのイヤだー!」
ゴドランは関係ないのだが、長年爆発音や怪獣たちの往来に慣れ親しんで来た住民が声を上げた。
「特撮の神様は引っ越さないで!」
「うへえ。どーしよ、コレ」
「どうするもこうするも、リックさんはもうこの街の一部、いえ、この街の顔なんですよ?」
「そんなの知らないよー!」
この騒ぎは白亜の殿堂にも持ち掛けられた。
これを知ったマッツォ社長とセシリア前社長は、こっそりヨーホー運輸に相談。
30年近く前の鉄道敷設の恩義を忘れていなかった鉄道関係者がリック邸と第二スタジオの往来のため、わざわざ庭園鉄道を改軌し、クラン駅で貨物列車と連結して第二スタジオまで直行列車を走らせる様手配した。
「そこまでされちゃ、ねえ」
「みんなリックきゅんの新作ね、楽しみなんだよ~」
こうして屋内でのモーションコントロール撮影、夜間シーンは第一スタジオで、オープンでの決闘や離着陸等は第二スタジオでと分担が決まり、自然な空を背景とした特撮はヨーホー映像特技部だけでなく、本編班や他社にも貸し出される事となった。
リック邸からクラン駅に向かう線路に踏切が設けられ、怪獣のヌイグルミや宇宙船のミニチュアが運ばれる「怪獣汽車」が来る時間は踏切に付近住民や子供達が集まるちょっとした騒ぎになり、付近の菓子屋は繁盛したという。
なお、この第二スタジオは撮影見学イベントが行われたり、撮影の無い日は無線飛行機愛好家のイベントにも貸し出されたりとちょっとした名所にもなった。
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「スプラフィニス」以来の、いや「1799」以来の宇宙SFブームにも呼応して、本作には多くの宇宙船も登場する。
宇宙船は前二作の様な凹凸の装飾を纏った白黒を基調にチームカラーが入ったデザインだ。
過去主役のスプラルジェントたちと共演した未来兵器群も時々登場させる。
過去のシリーズとの関連性を匂わせる為だ。
VDTの戦艦も前作で複数作られたミニチュアを改造して撮影する。
「でもこういうのはあんまり前に出しすぎるとクドいから、後ろの方にサラっと出すだけにしよっか」
そう言いつつ、リック社長は過去何機か作られた戦闘機の中型ミニチュアを再塗装していた。
人気怪獣たちの再登場も、
「ちょっと後ろ向きだけど、やっぱり出さない訳にはいかないねえ」
撮影後リック社長の魔法で収容され保存されていたヌイグルミが取り出され、あるいは映画博物館からトリックスタジオの特美倉庫に戻され、修理され撮影に備える。
彼らは番組前半を時折飾るスター扱いだ。
それまではリック社長とヨーホー映像から助っ人に来てくれたキューちゃんとでヨーホー怪獣の様な重量感あるデザイン、時に幾何学的な面白さを含んだデザインが練られた。
そして、肝心のスプラテリトス。
何よりも時代に求められるスマートさが求められた。
「元々スマートすぎる程スマートにしたんですけど!」
「うーん。最初のデザインを超えるって難しいねー」
そういいつつ、あーでもない、こーでもないと粘土をこねくり回せて紙の上に描き殴って、
「いっそ全く別のモノに」
「別過ぎるとなあ。
みんなどっかで昔のスプラルジェントの復活を待ってるしなあ」
色々考えつつ、キョーちゃんがぼちぼちと語った。
「前、エキスペクラリで鏡面使ったじゃないですか」
「うんうん」
「今じゃ多少の衝撃に耐えられる半透明樹脂もあるし」
「ほうほう」
「体の紋様の胸の部分、半透明樹脂で広く光ったり、胸と肩だけでも反射素材にしてはどうです?」
「よっしゃよっしゃ!」
「え?」
「それでデザイン人形起こして見よっか!」
こうして一部鏡面素材を使い、発光部分が多い、そして必殺技の種類によって胸や掌の発光部の色が変わる新たなスプラルジェントが誕生したのであった。




