44話 ダンジョンと鉄球
一人になったルーリーは気ままに街をぶらぶらと散策していた。
ジャラジャラジャラジャラと鳴る四本の鎖が彼女に続く。
「どこか手ごろなダンジョンにでもいくとするか」
セントラルエリア開放と同時に行われたレベルキャップ解除。
それに伴い既存の5エリアにはレベル20以上を対象としたマップやダンジョンが追加されている。
ルーリーは沼付近に追加されたダンジョンに少し興味が惹かれた。
だが、敵モンスターの種類が少なく戦い飽きたというのもあって彼女は別エリアへいくことにした。
少ない攻略情報を見ながらどこのエリアに行くか悩むルーリー。
「うーむ。【同盟】にするか」
【同盟】、人間やエルフやドワーフなど余分なパーツがあまりない人型の種族が集まって暮らす街。
周囲に出現するモンスターは主にアンデッド系。
ただし、ゾンビ等の肉付きの死体モンスターではなく、武器を持ったガイコツがメイン。
人族同士の戦争で使われた武器や兵器がモンスター化したという設定の敵たちだ。
セントラルエリアから他の街へ行く方法は、外周にある大門を通る事。
門へ行くのは街中の簡易ワープ機能ですぐ行くことができ、そこから歩いて街を移る。
同盟の街は木造やレンガ造りの平屋が多かった。
ルーリーはそんな街から一つの場所にただ集まった集団という印象を受けた。
街の中をガイドマークに従い歩いていくルーリー。
彼女の目的地は街の外れにあった。
掘っ立て小屋が並ぶ寂れた一角にポツンと一つの階段。
ただの土の地面に下りの階段がむき出しで置いてある。
これがルーリーが探していたダンジョンへの入り口だった。
この野ざらしの階段。これはこの街の特徴なのか、全ての街で隣接するように生成されているのかはわからない。
ルーリーが『すぐに挑めるダンジョン』と検索し出てきたのがこの場所だった。
ルーリーが下り階段に足を乗せると、彼女の視界に薄暗い部屋が広がった。
階段の下へ飛ばされたようだ。そして自動でシステムウィンドウが開き選択肢が表示される。
【ソロモードでダンジョンに侵入します。よろしいですか? はい・いいえ】
現在ルーリーはPTを組んでいない、なのでこの場で誰かを仲間に加えなければソロプレイだ。
「マルチとソロでどう違うのじゃ」
彼女の疑問に反応したのか、それとも時間やアクションで表示が変わったのか、説明文が流れる。
ダンジョンにはノーマル・ハード・ベリーハードの3コースが存在し、そのコース内でも1人、4人、8人、16人の刻みで難易度が変わる。
それぞれのコースと難易度別に報酬が存在し、一番豪華な報酬を得られるのが16人で挑戦して最高ランククリアをした場合。
次いでソロで最高ランククリアをした場合。
壁には現在までのクリア者の最高タイムなども並んでいた。
ノーマルコースのソロ最高記録は25分。4人で約30分。8人と16人はまだクリアチームが居ないようで空欄となっていた。
ハード・ベリーハードも共に空欄だ。
「とりあえず目標はこの25分じゃな」
ノーマルコース・ソロモードと書かれた通路へとルーリーは入って行った。
ダンジョンの中は薄暗く細い通路で、ときどき壁にたいまつが付けられている以外に灯りはない。
視認性が悪い上にアンデッド系が出てくるという前情報のせいで、足を踏み入れた瞬間ホラーゲームと間違える者も多いだろう。
ルーリーはそんな暗い道を小走りで駆け抜けていく。
全力疾走は危ない。だが歩いていくのは遅すぎる。
なので急に戦闘になっても対処できるそれなりの速さで進んでいく。
最初の敵が出たのは通路に入って一分ほどだった。
通路は曲道こそあれど分かれ道は無く、彼女がそろそろスピードを上げようかと考え始めた頃。
曲がり角の先に剣を持ったガイコツが立っていた。
ダンジョン攻略に雑魚モンスター討伐は必要が無い。
最奥にたどり着きボスモンスターを倒して宝箱を開ければ良い。
ゆっくりと剣を振り上げるガイコツ相手にルーリーは隣を通る際に拳を軽く当てた。
ガシャンッ! ガイコツの体が崩れ落ちる。
ダメージはあまり入っておらず、倒してもいない。それでも横を通る時間にはなる。
通路を奥へ奥へ走っていくルーリー。
少しずつ敵の数も増え、パンチでダウンを取っても他のガイコツの相手をしている間に起き上がるという展開も増えてきた。
被弾は未だにゼロだが、5体以上同時に出現されると手間取ってしまう。
そんな状況を打開したのは鉄球だった。
ガイコツの一体を右ストレートで殴り倒し、次のガイコツを左の拳で倒そうと考えたルーリー。
しかし、体を捻った時に左腕に繋がっている鎖が緩み、手の前へ出てきてしまった。
考えるより前にその鎖を握り、彼女は鉄球をガイコツへ叩きつけた。
鉄球がモンスターにぶつかると、鈍い音が鳴り敵の体が吹き飛んだ。
しかも後ろにいたガイコツを巻き込んで。
武器ではないのでダメージは無いが、見た目通りのノックバックが発生しているらしい。
人の顔ほどの大きさの鉄球。ルーリーは重さを感じていないが純粋な質量は相当なものだ。
リーチも彼女の腕よりはるかに長い。
一度それに気づいてしまえば通路の雑魚敵など障害にもならなかった。
なにせ彼女にとっては負担が一切ないのだ。
ダンジョン奥にいたボスは両手に大きな剣を持った身長3メートルほどの巨大ガイコツだった。
剣だけでルーリーの身長ほどもあり、動きも素早い。
普通に戦えば苦戦を強いられるだろう。
だが、鉄球に弱かった。
ルーリーの両腕についた鎖の長さは3メートル。両足の鎖は2メートル。
どちらも相手の剣より長い。
ボスの攻撃を避け、武器を持つ拳に鉄球を当てると簡単に武器を落とす。
このエリアのアンデッドの本体は武器である。落下した剣を攻撃すると面白いようにボスのHPが減っていく。
両手の武器を別の方向へ飛ばしてやり、ガイコツが拾うのを後回しにした方を攻撃する。
それだけで簡単にボス戦が終了してしまった。
トータルタイムは12分。
いっきに記録は半分になった。




